31 想定外
急遽雇う事になったズラートルとその従者だが、二人は大喜びで夕飯の支度を買って出た。
こちらとしても手伝ってもらえるのは有難いので任せることにした。改心しているみたいだから食事に毒を入れるなんてことはしないだろうし、なにより教会のシスター全員、ヒールと浄化の魔法を使えるから。もちろん私もね。
そんなわけで、何かあっても問題ないが、メシマズだったら揶揄ってやろうと思っていたのだが……
「!!」
「美味しいわ…」
「うまっ!」
意外や意外、めちゃうま!良い方に期待外れだったようだ。
この異世界は中世ヨーロッパ風だが、魔法のおかげでインフラなどは発達していた。しかしメシだけは残念なことに、誰が何を作ってもイマイチなのが当たり前の文化だったのだ。
味付けは塩味のみ、肉は魔物の肉だ。臭みが残っているのが普通の中、どうしてこんなにも美味になるのか?
「実は私、火・水・風の魔法が使えるので火加減が得意でね、気づいたら料理スキルが生えていまして…」
「あ、あっしはその辺の草や木の実で調味料作れるッス!食えるキノコの判別もできますぜ?食に対してだけ鑑定スキルが発動するみたいなんすよ」
「「「「「ええーーーっ!」」」」」
みんなびっくりである。私も思わず疑問を口にした。
「そんな立派なスキルを持ってたら強盗なんてしなくてもお金稼げたんじゃないの?」
「うむ…、あの頃は父が突然亡くなって急遽男爵位を継ぐことになってね、金策で頭がいっぱいだったんだ。私の代で爵位を返上なんてプライドが許さんし、ストレスでハゲは進むしな。そんな時、雑貨屋でみつけたのがあのかつらだ!後から判明したんだが、精神干渉の呪いがかかっていたらしい」
「マジで本体が犯人だった件!」
アルフが抜けて、男手が必要だからと雇った二人だったが、なかなかどうして優良物件だったようだ。これからの食事が楽しみだわ。
食後、二人の生い立ちなどを聞きながら和気あいあいとお茶をしていると、突然、教会の扉が勢いよく開かれた。
「マーサ様っ!アルフがっ…アルフを、助けてくれーー!」
「お願いしますっ!もう、意識がなくてっ!」
入って来たのは、ニックとカイだ。そして担架の上には血の気を失ったアルフの姿があった。
「アルフーーーっ!!」




