30 平和な日常♪いや、それフラグだから!
リンカちゃん誘拐事件は無事解決した。
実行犯のズラートルとその従者は、遠くの鉱山で強制労働の刑になった。いつ刑期が終わるかわからないが、真人間になるといいね。
諸悪の根源ネカラアクの罪は、誘拐の教唆と殺人未遂だ。捜査の結果、それ以外にもあらゆる悪事に手を染めていたことが発覚した。今回の誘拐事件もその一部にすぎなかったのだ。
女の子を攫い可愛がった挙句、奴隷として売り飛ばす。中には殺されてしまった子もいたらしい。
これらは到底許されるはずもなく、一族郎党斬首刑になったそうだ。
現代日本ではあり得ない刑だけど、これが異世界なんだと改めて思うリンカであった…。
●●●●●●●
そして、あの誘拐事件から7年が経過し、私は12歳になった。
幼女特有のぷにぷに手足はすらりとし、エルフらしい超絶美少女に成長したよ。
へ?胸が足りないですって?うっせーわ!
女神フィーレア様ゆずりだからね、こればかりはどうしようもないんだよっ!
そうそう、10歳のギフトで【魔法の袋】をゲットしたんだ。最初に持ち主の魔力を登録するんだけどね、袋が手元から一定距離離れると自動で戻ってくるんだよ!
ぜったいに盗まれないようになってたの。
もちろん、本人以外は空の袋に見える、約8畳の容量&時間停止の性能だ。
マジすごくね?
15歳で上位互換の【アイテムボックス】が解禁されるけど、これはこれでアリだよね。アイテムボックスの目くらましにもなるしねー☆
ちなみに、もしこの袋をオークションに出すと、最低5千万レアから上限2億くらいで売れるらしい。どんだけーーー!
っと、昔話はおいといて。
先日アルフが15歳の成人の儀を受けてね、晴れて孤児院を卒業したんだ。
孤児は私一人だけになっちゃった。
アルフに初めて会ったときはまだ3歳で、垂れた犬耳の可愛い男の子だったけど、今は身長180cmはあるんじゃねーかというほど成長してるんだよ。
顔は可愛いままだから、なんつーか大型のレトリバー系っぽい感じかな?優しいお兄ちゃんなのは変わらずだ。
ニックは17歳になり、身長2m超えの精悍な鬼人に変身している。たけ●この里のように小さかった角も、鋭く立派な角に変わってるよ。大人になっても相変わらずガサツでいじめっ子だ。ぷんぷん!
カイ兄は19歳だけど小さいままだ。ドワーフだからね、髭はすっげー伸びてるけども。
カイ・ニック・アルフの三人は冒険者になってパーティーを組んでるんだ。街はずれに家を借りて共同生活中なの。
実は私も、ヒーラー兼ポーターとしてパーティーに誘われてるんだ。
でも、私の身体は色々規格外だからバレるとヤバいからね、たぶん断る事になると思う。
まだ成人まで三年あるからね。将来のことはゆっくり考えるよ。
んで、7年前大聖女になったクリス姉は22歳。ここから500kmも離れた【聖都 ルナ】という都市に住んでいる。
最近のことだけど、修行の末、魔力が999の上限に達し、エクストラヒールを成功させたと新聞に載っていたんだ。
なんだか遠い人になっちゃったなぁ…。成人したら会いに行くんだ!
…と、今は何も事件がない平和な日々を送っているってことで。
転生少女の平和な日常の模様をお送りしまーす!(フラグが立った?)
----------
朝、五の鐘とともに孤児院の一日は始まる。
身支度を整え、台所で朝食の準備をしていると、裏口から誰かが呼ぶ声がした。
『おーい、リンカ~、足怪我した。治してくれぇー』
マブダチの登場だ。
『またかー?喧嘩はダメだよ!「ヒール」はい、治った!』
『ありがてえ!縄張り守らなきゃなんねーからな。俺ももう爺だしそろそろ引退かぁ』
『ボスは大変だねぇ。縄張り主張はいいけどさ、教会の壁にマーキングするのやめてよね!キ●タマ斬り飛ばすぞ?』
『ヒェッ!怖いこと言うなよっ!キン●マ縮んじまったじゃねーか』
『ん?前世では普通の事だったよ?飼ってたタマのタマも取っちゃったし』
『…いつも聞くけど、異世界こええなー、おい!』
『私にとってはこっちの方がこええわ(笑)』
『ま、俺で良ければいつでも話聞くからよ。じゃあまたなー』
『うん、またねー』
マブダチの猫ちゃんと朝の挨拶を終えた。
こんなこと話せるのは猫ちゃんくらいだしねー。
いい気分転換になってるんだ。
食堂に移動して席に着き、各々日々の糧を得られたことに感謝をして食べ始めた。
朝食のメニューは、前日のお供え物のパンと塩味のスープ、焼肉の温野菜添えだ。
肉はダンジョン都市ということもあり、オーク肉やボア肉などが安価で手に入るため毎食出てくる。孤児院だからといって質素というわけでもないのが救いだ。
味は不味くはないけど、塩味だけってのが元日本人としては物足りない。
ラノベの異世界モノだと、主人公が料理無双しちゃうのが定番だけど、私、料理はイマイチなんだよなぁ。せめて味噌と醤油、マヨネーズがあれば…。
その前に米だよ、米!この世界には米がないのがマジ残念!
以前、米の代わりになるかと、小麦粉をこねて小さい粒々をたくさん作ってみたんだ。所謂ちねり米ね。
食べてみたけどさ、煮ても焼いても米の代わりにはならなかったよ。ただ疲れただけでさ。
嗚呼、日本食が懐かしいっす……。
朝食が終わると食器洗いと掃除、洗濯だ。
この世界には生活魔法がある。【きれいきれい】一発で即終了だ。
異世界すごい!
一見、中世ヨーロッパ風で文明が遅れているように見えるけど、魔法があるためインフラは完璧だ。上下水道も完備だよ。蛇口をひねれば水が出るし、ボタンを押せば水洗トイレが発動する。
電気とガスはないけど、代わりに魔道具がある。水洗トイレも魔道具のひとつだ。
その魔道具に使う【魔石】は討伐した魔物から得られ、魔石の大きさは魔物の強さに比例している。見た目は紫色をしていて禍々しいが、聖水に浸すことで無色透明な結晶に変えることができる。
その仕事をしているのが、100人中約15人いる、私たち光★のギフトを授けられた人たちだ。
教会のシスターになる者も居れば、冒険者のヒーラーになる者、市井で診療所を開く者もいる。
わりと自由が利くが、光★★以上になると強制的に教会の所属になってしまうのがネックなんだよね。
光★★にならないように今から祈っとこ。フィーレア様、たのんますっ!
私はただの孤児。シスターになったわけじゃないので、お手伝いとして裏方で魔石浄化の仕事を受け持っている。院長先生は私にもお給料を出すというけど、私には【腕盾】の特許料が4千万、袋の中にあるから辞退しているんだ。てへ☆
シスターは日中、礼拝堂で仕事をしている。治療だったり、懺悔だったり、寄付だったり。中には詐欺師っぽいのも来るらしいけど。
色々な人が来るけど、まさか、こいつらが来るなんて、女神様でも思うまい。
「院長先生、リンカちゃん、酷いことをして申し訳ございませんでした。許してくれとは言いません、どうか、ここで下働きとしてこき使ってくださいっ!」
「あっしも、おねげーしますだ!」
ジャンピング土下座で頭を下げているのは、ボロボロな服を着た、あのズラートルとその従者だ。
7年の刑期を終えて出てきたそうだ。
金髪のヅラを脱ぎ捨て、泣きながら頭を下げる姿は、かつての傲慢な元男爵の面影は微塵もなくなっていた。
きっと、ヅラが本体で、それが悪さをしていたのだろうね(謎理論)
院長先生と私は、その申し出を受け入れることにした。
不安はなくはないけど、真人間になったのは目を見ればわかるものだ。
男手も必要だったしね。
「ありがとうございます。よろしくお願いいたします!」
「よろしくおねげーしますだ!」
さっそく晩飯の用意をするという二人を慌てて止めた。
長旅の末辿り着いたのだろう、ちょっと…いや、かなり臭うのだ。
お風呂に入れたいところだが、この世界には風呂文化自体がないからね。元日本人の私には色々ツライ。
「調理の前に、ばっちいから【きれいきれい】するね。『クリーン』」
「おおー、すっかり身嗜みを忘れていました。すみませんっ!」
「ありがとーごぜーますだ!」
シン・ズラートルの心根を表すように、綺麗になったハゲ頭に夕陽が当たりキラキラと輝いていた。




