29 事件の顛末
誘拐犯の二人を助けてから1時間以上経過していた。
【浄化】で毒こそ抜けたものの、まだ目覚めていない。
【ヒール】は万能ではないからね…。
その間、私はマップでネカラアク子爵の動向を探りつつ、ピコンピコンうるさかったステータス画面を確認していた。
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23:03
【多層式ステータス画面】
属性検索で予備の個人識別カードを探せます
例)光★ 火★★
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予備カード001 火★ 水★ 剣★
予備カード002 火★ 風★ 土★
予備カード003 水★ 盾★ 剣★
予備カード004 火★★ 剣★
予備カード005 風★ 土★ 盾★
▽次の5枚
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●現在のステータス(隠蔽)●
【 名 前 】 リンカ
【 年 齢 】 5
【 種 族 】 エルフ族
【 レベル 】 59
【 H P 】 ∞/∞
【 M P 】 ∞/∞
【 ちから 】 ∞
【 体 力 】 ∞
【 魔 力 】 ∞
【 攻撃力 】 ∞
【 防御力 】 ∞
【 素早さ 】 ∞
【 知 力 】 ∞
【 幸 運 】 ∞
【固有スキル】 瞬間記憶(常時発動)
【 呪 縛 】 親に殺される運命(回避不能)
【 スキル 】 か●はめ波 言語理解
鑑定(封印中) アイテムボックス(封印中)
毒無効 麻痺無効 石化無効 眠り無効
毒付与 麻痺付与 石化付与 眠り付与
痛覚軽減 恐怖耐性 精神攻撃耐性
気配察知 気配遮断 透明化
【 ギフト 】 光★
光★★★★★★(封印中)
火★★★★★★(封印中)
水★★★★★★(封印中)
風★★★★★★(封印中)
土★★★★★★(封印中)
盾★★★★★★(封印中)
剣★★★★★★(封印中)
【 備 考 】
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うおっ、レベルが上がってる!初戦でLV59?マジかっ!
しかも、状態異常無効に状態異常付与!
あの、かじりついてきたヤツらは強敵だったようだ。
確かに状態異常攻撃のオンパレードだったけどさ。
私、初めて街から外に出たんだよ?まだ5歳の幼女だよ?
普通、初戦はスライムとか角ウサギとかで徐々に慣らすもんじゃないの?
でもまー、そのおかげで多くの耐性が身に付いたのも確かなんだけどね。
痛覚、恐怖、精神攻撃。この三つが無効にまで至らなかったのは、それらがなくなると人間は無理しすぎて死んでしまうかららしい。
僕は死にましぇーん!(武●鉄矢風)
そんなことよりっ、気配遮断、透明化ってなんやねん!
の●太くんがし●かちゃんの入浴シーンを観に行くのに最適なセットじゃないか。
……と、冗談はさておき、どうしてそんなに良いスキルが手に入ったのかな?
そうか、魔法はイメージが形になり、スキルは努力が形になるんだ!
あのとき、蠢くヤツらから逃げたいと必死に抵抗したからか!
それならば、確かめねばなるまい!
私は自分に気配遮断&透明化のスキルを使った。
そして、別荘にある鏡を見た…。うん、何も映っていない。成功だ!
これで隠密行動ができる!もちろん犯罪には使わないよ!
ステータス画面からマップを表示し、ネカラアク子爵の赤い点を探すと、ずっと隣町の町長宅に留まっているようだった。
なぜ動かないのか?赤い点を凝視していると、ゆるゆると動き出した。今からドアイの街に向かうのだろうか。
ここはひとつ、先回りと行こうじゃないか!
私は気配遮断&透明化したまま街道を疾走した。マッハばばあならぬ、マッハ幼女だ。見えんけど!
そして、隣町の町長宅に着いたのは2分後。ネカラアクは寝室から出てきた所だった。
「うう、くそっ…!ふくらはぎが腫れてきやがったわい…」
「大丈夫ですか、熱も出ております。もう少しお休みになられた方が…」
「うるさい!ワタシに指図するなっっ!はあはあ…」
おや?こいつ、熱出してんの?ざまぁ!
猫ちゃんの感染症かな?私もそこにたっぷり魔力を注ぎ込んだからね。足が腐り落ちても知らないよーだ。
「それにしても惜しいな。あのエルフの娘。ワタシの地下コレクションに加えて可愛がった後、高く売れるはずだったのだがなぁ。ぐへへへ…」
今、ぞわっとしたぞ!
え?ってことは、私以外にも攫われた女の子がいるかもしれないの?
私は今、透明だ。見張りの横をすり抜け、地下の鍵のかかった鉄格子の前に進み出た。
中を確認すると、猫耳の幼女、うさ耳の少女、人間の幼女など、可愛らしい子が10人ほど、首輪をつけられ鎖につながれて閉じ込められていた。
なんて、酷いことを……!
今すぐに助けてあげたいけど、今はまだ動く時ではない。
(…ごめんね、ぜったい助けるから、待っててね)
私はドアイの街に向かうネカラアクの後を追った。馬だとここから20分くらいかかるようだ。遅っ!私なら1分だぜ。
時刻は午後12時。
街の中は暗くひっそりしていた。
そんな中、騎士団や領主様たちが、灯りを片手に私を探しているようだ。
透明でごめんなさい。今はまだ姿を現すのは早いと思うの。
教会に入ると、院長先生や副院長、クリスにアルフもみんな眠り薬から覚めて元気そうだ。
安堵したけど、本来なら眠っている時間だ。心配かけてごめんね…。
遅れてネカラアクも入って来た。
「はぁはぁ…領主様、ウチの町民が、ここから自宅に戻る際、あの追放された、【ズラートル元男爵】がっ、はぁはぁ…リンカちゃんをっ、馬車の荷台に押し込んでいるのを、見たらしいっ……はぁはぁ…」
「出所してわが町のはずれに住み始めたとっ、はぁはぁ…最近知り困惑していたところでしたっ…。まさかっ、リンカちゃんに手を出すなんて……はぁはぁ…。管理不行き届きでしたっ。申し訳ないっっ!」
「わ…ワタシのことは、かまわず…行ってくださいっ……。奴の住処は…はぁはぁ……ここから、約10kmの…崖の上……古い別荘……だ……」
なん…だと…?
これは、演技なのか?悲劇の人になりきってやがる!
ネカラアク、恐ろしい子!
紅天女も演じられるぞっ!
やはり、あの二人を生贄にして逃げおおせるつもりだったのだ。
そうはさせない!
私は騎士団が出発するのと同時に別荘へ向かった。馬で30分の距離らしい。
なに、私なら3分あれば十分だ。
3分後、別荘に到着した私は、気配遮断&透明化を解き、扉を開いた。
物音に気付いたからか、ズラートルと従者が目を覚ましたようだ。
「わ、わたしは生きているのか?……ネカラアクに毒を盛られたはず……なぜだ…?」
「坊っちゃん…苦しくねえです。助かったんでやんすよ!」
「ええ、お二人とも死ぬところでしたよ。私が【浄化】と【ヒール】で治しました。気分はどうですか?」
リンカちゃん、ズバット参上だ!
「っ!!まさか、おまえが助けてくれたというのか?あんなに酷いことをした、このわたしを……」
「その件はあとで!今は諸悪の根源、ネカラアク子爵をぶっ潰したいの!協力してくれるよね?」
「あ、ああ、もちろんだとも!あのタヌキおやじ、騙しやがって!ただじゃおかないぞ!」
「お前が言うなー(笑)でも、面白くなってきたじゃな~い!丸裸にしちゃいましょう!」
「「「うえーい」」」
私たち三人は一時休戦し、組むことになった。少年漫画によくあるやつだね。
騎士団がここに来るまであと15分くらいか?
遺書と崖まで続く血痕、血の付いたナイフ。これを見た騎士団は私たちを死んだと報告することだろう。
「でね、その報告の時、私らがズバット参上!したらかっこよくね?」
「うむ、あのタヌキも驚いて化けの皮がはがれるかもしれんな…」
「やりましょうぜ」
「よしっ!では行こっか!(…眠れっ!)」
「あれ?急に眠く……」
「ぐおー……」
こっそりと二人に【眠り付与】した。動くのに邪魔だからね!
とりあえず、透明化をかけて外に出しておこう。
私も気配遮断&透明化して、騎士団の動向を見守ることにした。
案の定、騎士団は一時間ほどの捜索後、死亡判定を下し街に戻ることにしたようだ。
私はそれを見届けたあと、街への街道をひた走った。
大の男二人を両肩に担いだ幼女がマッハで走る。透明でなかったら絵面がホラーだよね!
時刻は午前2時。
教会に集まった領主たちへ、帰還した騎士団の報告が始まっていた。
私は裏口で周りに誰もいないことを確認し、誘拐犯の二人に【浄化】をかけ、眠りと透明化を解除した。
「…あれ?わたしは寝ていたのか?いつのまに教会に……」
「あー、ツカレテタノデショウネ。それよりっ!計画通り、ズバット参上!ですよっ」
「了解だ。行こう!」
「へい、坊っちゃん!」
私ら三人は、意気揚々とネカラアク劇場の扉を蹴り開けた。
「話は聞かせてもらった!」
「お、おまえっ!なぜ生きているっ?崖下に落としたはずだ!ぜーはー…、それにっ、後ろの二人っ!確かに毒を盛ったはずだっ!生きているわけが………
はっ!しまったっ…」
「語るに落ちたね、ネカラアク子爵!なぜ生きてるかって?それはね……
私が、女神様のギフトで光の加護を受けたからだよ!
ナイフで刺されて崖下に落とされたけどっ、怖かったけどっ、ぐすん…ヒールで無傷なんだからねっ!」
「その遺書はニセモノだ。わたしたちは、そこのネカラアク子爵に頼まれてリンカちゃんを攫ったのだ。用済みになったあと、毒を飲まされた。リンカちゃんが解毒してくれなければ、今頃私たちは死んでいただろう。彼女は命の恩人だ」
「くっ…、それでもっ、証言だけで証拠がないだろうがっ!証拠を出せっ!はあはあ…」
「証拠ね…。子爵さん、私と猫ちゃんが噛んだふくらはぎの傷、そのままだと足が腐り落ちて死んじゃうよ?見せて?」
「な、ばかな!そんなことがあるわけ……はあはあ…」
「ほら、苦しいでしょう?私と猫ちゃんの恨みを込めた噛み跡がじわじわと死に追い込むの。治せるのは私だけだよ~?」
「くっ…しかしっ!」
「ネカラアク殿、失礼するぞ!」
この場で一番身分が高い領主様が、ネカラアク子爵のズボンをまくり上げた。
「これは酷い……」
赤黒く腫れあがったスネには二つの噛み跡があった。
すぐに領主様が鑑定眼鏡をかざすと、
『猫の咬み跡。パスツレラ菌に感染。重傷』
『リンカの噛み跡。魔力感染症。重症』
と出た。
「あっ!もうひとりの黒ずくめの男か!猫にスネを咬まれていた!俺は見てたぞ!」
いつの間にか足元に来ていた猫ちゃんも、満足そうに尻尾を立てている!
唯一の目撃者トビアスの証言と、猫とリンカの残渣も確認された。
物的証拠が出たことになる。
「はあはあ…ちくしょう!ワタシは無実だああぁーーーっ!」
「いいえ、ネカラアク子爵!この件だけではありません。あなたの屋敷の地下に、攫った女の子が複数囚われているのは確認済みです!騎士団長さん、すぐに屋敷の地下を捜索してくださいっ!」
「なんということだ、了解した、行くぞ!」
「「「「「「応っ!」」」」」」
「おい、やめろ!やめてくれえーー!ぐはっ………」
ネカラアク子爵は高熱で倒れ、そのまま捕縛された。
憎らしいけど、浄化&ヒールして傷を治してやったよ!
これから、みっちり取り調べを受けるといいさ。
そして、ズラートルとその従者も、騙されたとは言え誘拐犯だ。
前科もあり、その罪は重い。
「リンカ…すまなかった。わたしはきっと死罪になるだろう。最後に君のおかげで改心できたと思う。ありがとう…」
「へい、あっしも感謝してるっすよ!」
「うん…」
連行されるズラートルと従者…。
もう二度と会うことはないと思うと、悲しくなってしまった。
あんなに酷いことされたのにね……。
捕縛劇の終了とともに、みんなが集まって来た。
「みんな…、心配かけてごめんなさい!」
「リンカちゃん、お帰りなさい。無事でいてくれて良かったわ」
「リンカー、良かったーっ」
「リンカ~!うおおーーーん」
悲しい気持ちが吹っ飛ぶほど、熱烈な歓迎を受けたよ。
それにしても、ニック…、涙と鼻水でぐちゃぐちゃじゃないか。
「鬼の目にも涙ってか?ニックがそんなに友達思いだとは知らなかったよ。ばっちいから『きれいきれい』するね!」
「お、おう………」
「「「「「「(リンカ、おまえなぁ……)」」」」」」
「ほえ?」
みんなが残念な子を見るような目で見てくるのは何故なんだぜ?
……こうして、リンカ5歳、初めての冒険は幕を閉じた。
めでたしめでたし?




