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親ガチャ転生~毎回親に殺されるので転生を拒否したら、異世界の女神様から産まれました~  作者: 里見みさと
第3章 孤児院にて

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27 「話は聞かせてもらった!」

 リンカが連れ去られてから4時間が経過した。

 教会の大時計の針は午後12時を指し、鐘は鳴らずも刻々と時を刻んでいた。


 リンカの捜索は難航していた。なぜなら目撃情報が皆無だからだ。

 唯一、犯人らしき人影を見たのはA級冒険者のトビアスのみ、しかもリンカを直接見たわけではないため、連れ去られたのか、自ら身を隠したのかさえ定かではなかったのだ。



 そんな折、自宅に帰ったはずの隣町の町長、ネカラアク子爵が、息を切らせ早馬で情報を掴んで戻って来た。


「はぁはぁ…領主様、ウチの町民が、ここから自宅に戻る際、()()追放された、【ズラートル()男爵】がっ、はぁはぁ…リンカちゃんをっ、馬車の荷台に押し込んでいるのを、見たらしいっ……はぁはぁ…」


「ネカラアク殿、情報感謝する!あの男ならリンカに危害を加えかねない。確か、爵位はく奪の上、二年間の懲役だったはずだが…」


「はい、出所してわが町のはずれに住み始めたとっ、はぁはぁ…最近知り困惑していたところでしたっ…。まさかっ、リンカちゃんに手を出すなんて……はぁはぁ…。管理不行き届きでしたっ。申し訳ないっっ!」


 ネカラアク子爵は民衆の眼前で土下座した。貴族にあるまじき姿である。

 実はこの男、子爵であるにもかかわらず、領地を持たず事業で儲けた金は惜しみなく寄付し、腰が低く悪い噂は聞かない人物と民衆に思われている。まさか、この話が嘘で事件の黒幕だとは猫以外誰も気づいていないのだった。


「いや、貴殿の責任ではない。謝罪より、まずはあの男の住処に案内してくれ。一刻の猶予もないからな」


「はい…、ではこちらに……うっ!」どさり

「ど、どうした子爵!しっかりしろっっ!」


 土下座の状態から立ち上がろうとしたネカラアク子爵が突然倒れた!

 顔は土気色でガタガタ震えている。高熱が出ているようだ。


「マーサ殿、治療を頼む!」

「ええ、『ハイヒール!』……駄目です。ヒール系は病気には効かないのです!」


「わ…ワタシのことは、かまわず…行ってくださいっ……。奴の住処は…はぁはぁ……ここから、約10kmの…崖の上……古い別荘……だ……」


 ネカラアク子爵は苦しそうだ。彼の症状はこの世界では知る者はいない、猫の咬み跡から発症する『パスツレラ菌感染症』だ。その上、リンカが恨みの魔力をたっぷり込めた噛み跡もあるのだ。さぞ辛かろう。自業自得というやつである。

 しかし、民衆には体調不良の中、攫われた幼女のために馬をとばしてきた勇者のように映ったことだろう。



「では、騎士団に現場に行ってもらおう。貴殿はここで休んでいると良い」

「は…はい…申し訳……ありません……」


「「「「「了解しました!場所はわかりますのですぐに出発します!」」」」」





 騎士団が現場に着いたのは、教会を出て30分後だった。

 騎馬であれば馬車の半分ほどの時間で着けるのだ。


 別荘に乗り込むも、誰もおらずひっそりとしている。

 ただ、テーブルの上にサイン入りの書類が一枚あるだけだった。

 騎士団長は内容を読み、静かに首を振った……。


 別荘の外には血の付いたナイフが落ちており、血痕は崖下まで続いていた。

 崖下は女神の結界の外だ。強い魔物が蠢いていることが予想される。たとえ訓練を積んだ騎士団員であろうとも無傷での帰還は叶わないだろう。


 騎士団長はナイフを丁寧に布に包み、遺書らしきものとともに懐に入れた。

 そして、全団員に向け帰還の命令を下したのだった。



 騎士団が教会に戻って来たのは午前2時頃のことだった。


「ご報告いたします。現場の別荘を捜索したところ、犯人および被害者の姿は確認出来ませんでした。ただ、血痕とともにこのようなものが…」


 騎士団長は、沈痛な面持ちで領主様にナイフと遺書を渡した。


「うむ、御苦労であった。これは、血の付いたナイフと、遺書か……」


 皆がリンカの無事を祈っている中、領主により遺書が読み上げられた。


『   遺書


 三年前、私から爵位をはく奪し屈辱を味わわせたリンカが憎かった。

 リンカを攫いナイフで刺し、魔物の巣窟である崖下に落としたのはこの私だ。

 爵位をなくし犯罪者となった私には、もう何も思い残すことはない。

 また捕まるくらいなら、リンカを道連れに下男とともに命を絶つ。

 さらばだ!


         ズラートル   』


 更に、渡されたナイフに付着した血液が、登録したばかりの【個人識別カード】の登録情報と一致した。

 リンカが刺されて崖下に落ちたことが確実になった瞬間だった。


「なんてことだ…」

「ああ、リンカちゃん…」

「そんな、嘘よぉっ……」

「ううっ、ぐすん……」

「リンカ…リンカ……うわぁぁぁぁぁーーーっ!」


 その場にいた皆が、あの小さくて可愛くて、それでいて賢いリンカの死を嘆き悲しんだ。

 特にニックは普段の姿から想像できないほど泣き叫んだ…。


「ワタシが……もっとしっかりしていれば…あの男らを止められた…リンカちゃん、すまぬ!(しかし、何故だ?あの男らは毒殺のはずだが…?)」


 ネカラアク子爵の心の声は誰にも聞こえてはいないはずだ。

 しかし……



「話は聞かせてもらった!」



 バーン!とドアを開けて入って来たのは、ボロボロの服を着ているが()()のリンカと、同じく元気な姿の自殺したハズのズラートルと小男の姿だった!




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