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親ガチャ転生~毎回親に殺されるので転生を拒否したら、異世界の女神様から産まれました~  作者: 里見みさと
第3章 孤児院にて

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26 リンカちゃん誘拐事件

 ●トビアス視点


 俺が教会に戻ったのは、夜8時の鐘が鳴ったすぐあとの事だった。

 妻マーサの仕事の邪魔になってはいけないと、式典の間は1歳の娘エリーゼを連れて友人の所にお邪魔していたのだ。

 教会の裏手に向かうと、見るからに怪しい人影が三人。

 何やら騒がしく、いつも妻が可愛がっている野良猫が奴らに跳びかかっているのが見えた。


「おい、そこに誰かいるのか?」


 思わず大声を出すと、奴らは何か叫びながら逃げていった。

 追いかけたいが、娘を抱いていては無理だと判断した。

 それより、裏口の戸が開いているではないか!これは只事ではない、立派な犯罪である。

 人相はわからないが、一人は顔面に、もう一人はスネに傷を負ったようだ。


「犯人に傷を負わせてくれたんだな。ありがとうな」

「にゃ~ん!」


 うずくまっている猫にお礼を言い、頭をなでてやると元気に鳴いた。

 足を怪我しているようだ。後で妻に診せた方がいいかもしれん。



 …嫌な予感がする。

 俺は、ぐずり始めたエリーゼを抱えて事務所に向かった。

 事務所では、妻マーサと副院長のユリアが机に突っ伏していた。

 まさか、死んでいるのでは!?俺はすぐに脈と呼吸を確認した。

 ……良かった息はある!


「おい、マーサ!大丈夫か!しっかりしろっ!」


 眠っているだけに見えるが、呼びかけてもゆすっても起きてこない。

 これはマズい状態なのでは…?

 こちらの動揺が伝わったのか、とうとうエリーゼが泣き出してしまった。


「ままー、ままー、うわーーーん」

「う、う~ん…えりー……?」

「ままー!」


 すると何という事だろう、妻が目を覚ましたではないか!

 赤子が泣くと条件反射で目覚めるという、これが母の愛というものか!


「マーサ、大丈夫か?眠らされていたようだが……」

「え、ええ。すこし頭が痛いけど…。『ステータスオープン』ああ、やはり睡眠の状態異常がかかってるわ」


 マーサのステータスには『状態異常(睡眠)』の表示がある。


 状態異常は、光★の【浄化】の魔法で解除できる。大聖女のマーサには朝飯前だ。


「ちょっと待ってね。『浄化!』ふう、頭がスッキリしたわ。もう大丈夫よ、心配かけてごめんなさいね」

「ままー♪」

「マーサ、良かった。本当に良かった……」

「あなた……」


 親子三人、固く抱きしめあった。



 その後、眠らされていた副院長やシスターも、全員【浄化】で目覚めさせたが、まだ二階の子供部屋のクリス、アルフ、リンカの三人が残っている。


 まずは、男子部屋のアルフだ。

 深く眠っているようで【浄化】をかけても目覚めなかった。

 子供だからなのか、はたまた薬の量が多かったのかはわからない。

 再度【浄化】を重ねがけすると、閉じていた瞼がピクリと動き、ゆっくりと瞼が開いた。


「ふぁ?院長先生おはようございます!って、まだ夜じゃないですかあ~」

「アルフ、目が覚めて良かったわ!あなた昏睡状態だったのよ」

「へ?」


 本人は寝ていただけのつもりのようだ。【浄化】で薬の影響が消えたためスッキリした目覚めだったのも相まって、なんとも間抜けな受け答えだった。


 次は隣の女子部屋だ。

 寝ているレディの部屋に()が入るわけにもいかないが、今は緊急時だ。

 まだ賊が部屋にいる可能性もある。

 俺はA級冒険者として、妻マーサとともに部屋に入った。


 中に入ると、部屋は物が散乱して荒れていた。

 そんな状況の中、二台並んだベッドの一つでクリスが眠っていた。

 アルフと同様【浄化】をかけても目覚めない。

 クリスは更に【浄化】を三度がけして漸く目覚めるに至った。


 そしてもう一つのベッドに、リンカの姿はない。

 床には眠り玉が発動した痕跡があった。どうやら抵抗するリンカを眠らせて連れ去ったようだ。


「申し訳ありません!私が寝ていたから、リンカが……」

「違うの、教会のみんなが眠らされていたの。クリスのせいじゃないわ!院長である私の責任よ」

「ああ…リンカ……」


 嘆いているだけでは解決しない。今はリンカの捜索が第一だ。

 領主に協力を求めるべく外に出ると、無情にも夜9時の鐘が鳴り響いた。

 夜9時の鐘はその日の活動を終える合図だ。各家庭が灯りを消して就寝し、翌朝5時の鐘とともに活動を開始するのだ。


 就寝時間中に家を訪問するのは失礼にあたるのだが、領主のヘルマン様は嫌な顔もせず要請に応じてくれた。


「あいわかった!こちらで捜索隊を出そう。ただし、民家への聞き込みは朝5時までは禁止とする。就寝時間中は民家以外の場所を捜索するぞ!」

「「「「「応っ!」」」」」


 領の騎士団が捜索に加わった。

 領主は、リンカの部屋で拾った眠り玉を鑑定眼鏡で見たようだが、犯人につながるような結果は得られず渋い表情だ。

 息子のニックは「リンカ、リンカ…」と、壊れた機械のように呟いている。

 誰もが気づいていることだが、ニックはリンカが好きなのだ。リンカは気づいていないのだがな…。


 …リンカ、どこにいるんだ?みんな心配しているぞ……




 ○リンカ視点


 ガタゴトと揺れる振動で目が覚めた。

 ここはどこ?馬車?今、何時なんだろう?

 私は麻袋から這い出て、周りをうかがった。

 どうやら荷台に転がされているようだ。

 ………そっか、眠らされて攫われたのか。

 頭が痛く体が重いのは眠り薬の影響だろうか?


『ステータス!』


 ステータスを見ると、備考欄に『状態異常(睡眠)』と表示されていた。

 たしか、状態異常には【浄化】の魔法だよね。

 今日光★のギフトを貰って初めて使う魔法がコレだなんて、運が良いのか悪いのか、笑っちゃうね。

 私は文句垂れながら自分に浄化の魔法をかけた。

 うん、スッキリ♪


『ピコン!スキルを獲得しました』

『ピコン!ステータスに地図表示機能が実装されました』

『ピコン!ステータスに時刻表示機能が実装されました』

「…へ?」


 ステータス画面を見て驚いた。

 スキルに【眠り耐性】がついたからだ。

 できれはもっと耐性を上げて【状態異常無効】までいきたいな。

 そして地図だ!おおー、ここは街から10kmってとこかな?

 時間っ!まるで前世のスマホのように左上に時刻が表示されている。

 現在21:15らしい。超便利♪


 などとキャッキャしていると、突然馬車が止まり、黒ずくめの二人組が荷台に乗り込んできた。


「このガキ!もう目覚めてやがる。早く拘束しろ!」

「へ、へい、坊っちゃん!」

「坊っちゃんと呼ぶなっっ!」


 あー、この声、覚えてるわ。

 院長先生を殴ったハゲ男爵だ!名前は知らんが…。

 っつーか、顔、出ちゃってるし。何そのひっかき傷。

 あの猫ちゃん、相当恨んでたもんね。


 そうか、()()()か!なら、容赦しないっ!


 でも、なぜ攫ったのか気になるね。殺す気ならとっくにやってるだろーし?

 っつーか、私は不死だからね。

 ちょっと様子をみていようかな。


 非力な幼女のふりをして、おとなしく縛られる私。

 いざとなったら「むんっ!」とやれば、縄なんてちぎれちゃうぜ?


 連れて行かれたのは、森の中のボロい別荘のような建物だった。

 裏は崖になっていて、落ちたら命は無いだろう。

 中にはもう一人男がいて、偉そうにソファーにふんぞり返ってワイングラスを傾けていた。

 カイゼル髭の、甘いジュースをくれた…【ネカラアク子爵】だ!

 そうか、あの時のジュースが睡眠薬入りだったのか!

 しかし、まだ証拠がない。もう少し泳がせるか?


「へっへ…子爵様、約束通り無傷で連れてきましたっ」

「うむ、では追加の白金貨10枚だ、受け取るが良い。これで契約完了だ。ここにサインを」

「ははあー!ありがたき幸せっ!サインですね。喜んでっ!(かきかき)」


「気分が良い。どうだ君たちもワインを飲まないか?20年ものの高価な品だぞ」

「ありがとうございます、いただきますっ」

「へいっ、あっしも!」


「「グビグビ…」」


「ぐふっ!」

「げふっ!」


 苦しそうに倒れる二人。体がぴくぴくと痙攣している。


「し、子爵さま…、まさ…か………」


 子爵はハゲの懐から白金貨を抜き取り、頭を土足で踏みつけた。


「あと30分もすれば全身に毒が回る。苦しんで死ぬがいい。残念だったな!」


「くっ…はじめから…殺すつもりで……がはっ…」

「げぼっ…た、たすけ……」

「ふんっ!欲をかくから悪いのだよ。虫けらの分際でっ!!」


 酷い!たとえこのハゲが人攫いの悪人でも、これはアカン!

 私は、ハゲの元に駆け寄り【浄化】の魔法をかけようと身をかがめた。


『どげしっ』

「がぶっ!」


 子爵に横っ腹を蹴り飛ばされた。でも私は不死身だもんね♪

 蹴り出したその足に思い切り噛みついてやった!

 驚いたことに、足にはすでに猫の咬み跡があった。猫ちゃん、やるじゃん!

 行動が猫なみなリンカちゃんでーす。にゃははは…


 噛まれて激怒している子爵を振り切って別荘を出た。

 ∞の俊足で街道を走れば、あっという間に街に戻れる。そしたらこの事を領主さまに伝えよう!

 私は、街道に駆けだした。


「「「そうはさせん!」」」


 別荘の周りに待機していたであろう【影の者】が、一斉に無数のナイフを投げつけてきた。

 全身にナイフを浴び、血塗れになった幼女は、深い崖下に落ちて行った………



「「「処分、完了しました」」」

「うむ!しかし、惜しいな。あれほどの上玉エルフは中々おらんからな」

「死体の回収はどうしましょう?」

「なに、崖下は魔物の巣窟だ。そのままでいいだろう」

「はっ!」

「あとは、奴らに罪をかぶせて終わりだ。すぐに街に戻るぞ!」

「「「はっ!」」」


 ネカラアク子爵は、先程のサインを使い遺書を偽造し、自殺に見せかけ別荘をあとにした。




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