25 猫の恩返し
吾輩は猫である。名前はまだない。ただの野良猫だからな。
しかし、こんな俺でも可愛がってくれる人間もいる。
この教会の院長には、いつも美味いメシをもらっている。ありがてえ。
3年前、そんな院長を殴ったやつがいた。俺はそいつを許さねえ。
あの頃はまだ非力な子猫だったが、今では俺もこの辺りのボスだ。
ボスにはボスの流儀がある。恩を返してえんだ。
あのハゲ……次に会ったらギッタギタにしてやるぜ!
そして、あの事件を機に知り合った幼女、リンカと俺はマブダチだ。
驚いたことにリンカは猫語が解るんだぜ。
リンカいわく、異種族間交流っていうんだそうだ。
今夜は年に一度の祭りだが、猫である俺には関係ない。いつものように教会の裏口に用意されたメシを喰らうだけだ。
教会の裏手にまわると先客がいた。
闇に紛れるような黒ずくめの服を着て顔を隠した人間が一人立っている。臭いを嗅いだが知らない人だ。
俺は咄嗟に茂みに身を隠した。
暫くすると裏口から黒ずくめの二人の男が出てきたようだ。
一人は長身で、もう一人は大きな麻袋を担いだ小男だ。
長身の男は小男を蹴り上げながら指図している。
「おい!早くしろ」
「へ、へい!坊っちゃん」
「…遅かったな?」
「は、こいつ、薬が効いてなかったようでして。煙玉を使わせていただきましたっ!」
チラリと麻袋の中を見せている。
「うむ。約束の1千万だ。拠点まで無事に届けたら追加で1千万払おう」
「は、はいいーっ!ありがとうございますううーーっっ」
俺には人間の言葉は解らないが、ロクデモナイことをやっているのは解る。
横柄な態度から急に揉み手に変わる、俺の一番嫌いなタイプの人間だ。
それに、この嫌な臭いには覚えがある!
あ い つ だ !
あのハゲがそこにいる!
しかも、あの麻袋の中身の匂い。あれはリンカじゃないかっ!
俺のリンカに何すんねん!
『キシャーーッ!バリバリ!!』『ガブリ!』
俺は茂みから飛び出し、ハゲの顔面を覆いごと引き裂いた!
そしてついでとばかりに、黒幕らしき男のふくらはぎにかみついた!
「このクソネコッ!何しやがるっっ!!」
悪人二人に傷を負わせたが、多勢に無勢、人間と猫。こちらが不利なのは当然だ。
俺はハゲに蹴り飛ばされ、足をやっちまった。
……万事休すか?
「おい、そこに誰かいるのか?」
その時、見知った人間が現れた。
院長の旦那、トビアスだ!
「ヤバい。逃げろ!!荷物落とすなよ!!」
「へい!」
「……」
男たちはあっという間に逃げ去ってしまった。
悔しいが、マーキングはしたぜ。
あとは頼んだぜ、旦那様よ。




