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禁欲天使ですが、焼き鳥とビールで翼が黒くなりました  作者: 大河そうじ


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5話 ラシエルとの対立

「あら、そこにいたのねシリエル。気づかなかったわ」

「なんだ、ラシエル。また喧嘩売りにでも来たのか?」

「相変わらず、生意気な口を。こんなのが同じ上位天使だと思うと虫唾が走るわぁ」

「もう、そこまでにしろ。見ろよ皆を。怯えているでは無いか」


 ふぅ。疲れるなぁ、ラシエルの相手は。

 何故かラシエルは私を目の敵にしているのだよ。


「その目障りな白い翼。この天界で最も白いと言われているからって自惚れ無いことね」

「う、自惚れなど無いぞ?無いからな?」

「……何動揺してるのよ?」

「何でも無い!白い翼じゃ無いからって妬むなよ?なら手入れ方法でも教えてやろうか?」

「っ馬鹿にして!まあ良いわ。皆さん、怖がらせてすみませんね。そしてシリエル、貴方は覚えてなさい」


 ようやく去っていったか。アヤツの相手疲れるんだよな。

 ほら見ろ、皆も怯えておる。アヤツは怖いんだよ。まあ、私は慣れているけどな。

 しかし、何故アヤツはここまで私を目の敵にするのか……。


「シリエル様、大丈夫でございますか?」

「ああ、すまぬな、私とラシエルの問題なのに気を使わせて」

「いえ、とんでもない。ですがその気持ちは嬉しく思います」

 

 私だって、出来る事ならアヤツと仲良くなりたい。

 そもそも、私は誰かと揉めるという事が嫌いなのだ。

 アヤツの翼もそれなりに白いのに何故ここまで目の敵にするのだ?

 笑って暮らせるのが一番だ、なら今度アヤツにプレゼントでもした方がいいのかもしれないな。

 きっと、ペンキの白を贈れば泣いて喜ぶに違いない。


 それにしても、アヤツに絡まれた事で少々腹が立った。

 うむ、なら仕方ないな。下界に行って気分転換をする必要がある。

 これは仕方ない事だ。周りに当たる訳にもいかんからな。

 うむうむ、仕方ない。ではまた行く事にするか、次は何を食べようかな…。


「すまぬが、また用事で出かけてくる。留守は頼んだぞ」

「えっ?シリエル様またですか?最近出かける頻度上がっておりますね…」

「しょうがない、これも大事な事だからな」

「そうなんですね、ではお気をつけて」

「うむ、済まないな」


 まあ、文句はラシエルに言ってくれ、私も仕方がないのだ。

 では下界に行こう!!



 ◇ ◇ ◇



 やはり、下界というものは良いものだ。

 寧ろ、天界にこの文化を持ち込んでも良いのかも知れない。


 さて、今日はどうしようかな?

 新たな料理を食べるのも良いだろう。街を散策してみるか。

 ……ふむ、誰かの思考を読まずに歩くのも良いのかも知れない。

 新たな発見が多いな。分からないってことも悪くないな。


 おや?道の反対側に知らない屋台があるな。

 おでん…聞いた事が無いな。食べ物のようだが、まあ、試しに食べてみようか。


「へい、いらっしゃい」

「すまぬが、これは何だ?気になってここに寄ってみたのだが」

「お嬢ちゃん、おでん知らないのかい?まあ、外国の人の様だから仕方ないか」


 店主は私に色々と説明をしてくれた。

 ほう、好きなのを選んで取るのか。ならこの卵を貰おうかな。

 とても熱いが、噛むと口の中に出汁の染み込んだ味が広がって、

 それが卵本来の味とマッチしている。

 …これは、美味しい。

 すっごく美味しい!何これ!!

 …ごほん。まあ、認めなくも無い味だ。

 これは、他のも期待出来そうだ。


「店主!このこんにゃくというのをくれ!」

「はいよ、気に入ってくれたかい?」

「ああ、素晴らしいものだ」

「嬉しいねえ、なら昆布はサービスだ、美味しいから食べてみな!」


 おお、昆布をサービスでくれたぞ!

 ならまずはこのこんにゃくを食べてみよう。

 はふはふ、これも熱いが初めての食感だ。出汁が美味しいな。

 こんにゃくには味がない様だが、この食感とおでんの汁の味がとてもバランスが良い。

 ……次は昆布だ!!

 これはあまり馴染みの無い味だ。だが、これもなかなかいけるな!!


「店主、おかわり!」

「はは、なかなか良い食べっぷりだな」

「お主のおでんが美味すぎるのが悪いのだ、他の具材も食べてみたい!」

「はいよ、どんどん食べていきな!」


 店主も優しいし、おでん最高だな!

 そう思っていると声が掛かった。


「隣に座って良いですか?」


 どうやら他の客が来たらしい、まあ、こんなに美味い店なら誰か来るだろう。

 そう思っていると、まさかの事が起こった。


「え?シリエル…まさかここにいるはず…」


 その声には聞き覚えがある。顔を振り向くと。

 帽子に町中の女が着ている様な服でサングラスを掛けている。

 どう見ても、この街に馴染んでいる様な格好のラシエルが居た。


「えっ?ラシエルが何故ここに…」

「それはこちらの言葉です。そもそも、その格好で来るのは目立ちすぎると思わないの?」


 えっ?あまりの光景に理解が追いつかない。そもそもコイツも下界をエンジョイしてたのか?

 衝撃的な光景に言葉が出なかった。

 ……。

 ラシエルと視線が合った。言いたい事は目を見て分かった。

 お互い長い付き合いだものな。言葉にしなくても分かる。

 

 『お互いの事を見なかった事にするぞ、私達は何も気づかなかったのだ』

 

 よし、ラシエル。それで行こう。


「ああ、初めまして。ささ、寄りますのでこちらの席にどうぞ」

「…なら座ろうかしら。隣失礼するわよ」

「ああ、せっかくなので、何か奢ります。これで今回の事は内密にしましょうか」

「えっと、卵頂こうかしら。ああ、何の事でしょう?私には理解出来ませんわね」

「……そうでしたね、私達は初対面ですからね、ささ、美味しいですよ」

 

 私たちはこれ以上は何も言わずにおでんを楽しんだ。

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