4話 行列の出来るラーメン屋さん
今日は有名なラーメン店があると聞いて、並びに来ておる。
え?建前?もうそんなのどうでも良いではないか。
そんなのはラーメン食った後にでも聞くから待っておれ。
私はこのラーメンが美味しいと聞いてるからここで並んででも食べる事が優先だ。
今はそれしか頭にないのだ。すまぬな、ちゃんと後で話は聞くから。
しかしな、このラーメン店は凄い行列だな。オープン前から来ているのにもう並んでおる。
…どのくらい時間がかかるのであろうか。全く平日だというのに。
この人たちは堕落しておる。もっと、禁欲を覚えるべきだ。
「オープンしました!ただいま3時間待ちでーす!」
3時間だと…そんなに待たねばならぬのか…。
ここにいる人たちは皆その試練に耐えるというのか?
…良かろう。私は天使だぞ!
人間どもに負けておられぬ。
……。
もう2時間くらいは経ったか?
時計を見てみよう。
何だと…まだ10分しか経ってないではないか。
ここまで時間が経ってないとは…まさか私は誰かに呪いでもかけられたのか?
もし呪いをかけるとするならばラシエルしか思い浮かばないが…。
そうだ!そうに違いない!おのれ、ラシエル!
同じ上位天使で私の方が白い翼だからと目の敵にしよって!
お前が目の敵にしている翼はペンキで塗られた白い翼だぞ!あの節穴めが!
……。
やっと1時間か、後2時間もあるのか。
ラシエル、負けを認めるからその呪いを解いてくれよ。お前の翼にも白ペンキ塗ってやるから。
天界では1000年以上も過ごしたというのに。
この3時間は長く感じる…まだなのか。
もう心が折れそうだ。なぜ周りの人間どもはこんな平気な顔で待てるのか?
後1時間…もう無理だ。
もう諦めた方がいいのか?私は今まで諦めた事がない。
だが、この試練だけは耐えきれそうにもない。
もう良いのではないか?焼き鳥でも十分に美味いし。
…いや、見よ、あの子供を。
あの年齢でもこの試練を耐えているのだぞ。
ここで逃げたら私は子供にも耐えられない試練をこなせなかった天使として生きることになる。
それだけは私の存在意義としても認められぬ。こうなれば意地だ!!
美味しくなければ承知しないからな!
……。
後10分…ついに、ついにここまで来たぞ!!
私はこの試練に打ち勝ったのだ!どうだラシエル!!
お前の呪いに負けるような私では無い。
お前の翼は白ペンキに負けたんだ。つまり、お前も人間に負けたという事だ。
ふふふ、楽しみだ、どんな味なのか。
その時だった。
「誰か助けて!!お願い!!」
その声の方角を見ると、屋上に女の子がいた。
そして、そのマンションからは火の手が上がっていた。
「後5分で案内でーす!」
……。
ラーメンの匂いが漂って来た。すごく良い匂いだ。
うむ、私はここまで今まで味わった事の無い試練をこなしたんだぞ。
ここで、あの女の子を助けに行ったら、ここまでの苦しみはどうなる…。
私には関係ない事だ…。うん、そうだな…。
あれ?何で私は列から離れたんだ?
そして、何故上空に飛んでいるんだ。
……。
ええい!!待っていろ。
◇ ◇ ◇
「ちくしょう、屋上に誰か取り残されている、女の子っぽいぞ!」
「駄目だ、火の手が凄すぎて助けに行けない!!」
「ここで見捨てるしか無いのか……」
「えっ?雨?」
「土砂降りだ!おお!火の勢いが弱まっている!!」
「でも、どうして?今日は晴れの予報だった筈じゃ…」
「何でも良い!!これなら助けに行ける!行くぞ!!」
……ふうっ。
上空に飛んで雲を集めて、雨を降らせたが何とかなりそうだ。
私が助けたとバレる訳にもいかんからな。
このくらいなら、まあ良いだろう。
また並び直せばいい、あの3時間をまた味わうのかと思うと気が重いがな……。
それでも、女の子を見捨てたという罪悪感よりはマシであろう。
うむ、女の子は無事救助されたようだな。
これでよし、さて、並び直すぞ!!
……。
えっ?そんな事があるのか?
『今日の分は売り切れました』
……そんな。
私はここまで何の為に……。
3時間も並んだんだぞ!!
「ちくしょーー!!!」
私の叫び声が周囲にこだましていた……。
……焼き鳥でも食いに行こう。
食べに行った焼き鳥は美味しかったが、ちょっぴり涙の味もした…。




