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禁欲天使ですが、焼き鳥とビールで翼が黒くなりました  作者: 大河そうじ


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3/7

3話 初めてのカラオケ

 今、私は下界にいた。ああ、勘違いするなよ。遊びに来た訳では無いからな。

 そこは勘違いしないでくれ。では、何故下界に降りてきたかという話をしよう。

 私は白ペンキを翼に塗っていたら誤魔化せることに気づいた。

 ならもう人工的な白さでも良いかと頭によぎったが、

 それをしたら下界に負けを認める事になると思ったからだ。


 そう、私はまだ納得した訳では無い。

 私はまだ堕天もしていないし、白い翼になる事を諦めた訳でも無い。

 だが、このまま下界の生活に負けるわけにはいかないと思って、

 天界から降りてきたんだ。


 ……分かってもらえたか?なら良いのだよ。

 では、今日は何をしようかな。


「あれ?シリエルさん?」

「おっ!シリエルちゃんだ、久しぶり」


 あれは、確かアヤとタクヤだな。


「ああ、先日はお世話になったな。アヤとタクヤ」

「あ、名前覚えてくれていたんだ!嬉しい!!」

「シリエルちゃんまじ優秀!」


 この二人は善人だからな、身構えなくていい。


「お主らは何をやっているんだ?」

「えーと、カラオケに行くところ!シリエルちゃんも行く?」

「カラオケとは何だ?」

「シリエルさん、結構良いところのお嬢様なのかな?服装もなんだか凄いし。そうだ!なら教えてあげる!」


 アヤがカラオケについて教えてくれた。

 ふむ、これは中々興味あるな、歌を歌う施設か。

 まあ、今回は翼が黒くなる要素は無さそうだし、この二人について行ってみるか。


「なるほど、なら私も行ってみようか。ああ、邪魔にならないか?」

「ううん!全然良いよ!シリエルさんも一緒なら楽しそうだし」

「おっ!シリエルちゃんも行っちゃう?ならフリータイムでやろうな!」


 この二人は本当に良い奴だな。

 特にアヤはこの男を好きというのに私が来る事を本気で喜んでいる。

 タクヤ、この子は良い子だぞ、その気持ちに気づいてやれ。


「シリエルさん、ここがカラオケだよ!」


 ふむ、この建物がそうなのか、えーと店名は。


『カラオケ テンダ』


 ……テンダ。

 文字を入れ替えたらダテンでは無いか。

 まあ、いい。そんなの偶然だ。

 とりあえず入ってみよう。

 

「いらっしゃいませ!3名様ですか?」

「はい、フリータイムでお願いします!」

「かしこまりました!では6番の部屋にどうぞ!」

「6番だって、じゃ行こうか」


 ふむ、中はこんな感じなのか。

 そして、6番と書かれた部屋があった。ここか。

 …すごいなこれは。人が箱の中で動いておる。どうなっておるんだ?


「じゃ、飲み物入れてくるよ、シリエルさんも行く?」

「ああ、よく分からないけど行ってみよう」

「了解!じゃタクヤの分入れてくるから先に歌ってて」

「おう!じゃ頼んだぜ!」


 アヤの後について、受付で渡されたコップを持って付いて行った。


「ボタン押せば出てくるから、好きなのを選んでね!」

「ふむ、よく分からないがこの光っているところを押せば良いのだな」


 おお!楽しいな。押したら液体が出てくる。

 成程、そういう仕組みなのか、ならちょっとずつ違うのを入れてみるか。


「えっ?シリエルさん、それはまずいって!あっ、コーヒーも入れちゃった…」

「ん?どうしたんだアヤ。こんな感じじゃダメなのか?」

「ごめん、一種類しか入れちゃダメなんだ。混ざると美味しくないよ…」


 そうなのか…試しに飲んでみよう。

 うっ…。これは神が与えた試練かもしれぬ、だが私は負けぬぞ!!


「うう…これは私の忠誠心が試されているようだ…」

「…それ、私が飲むからこのコップ使って良いよ!」

「いや、そんな訳には…」

「ゴクゴクゴク。ほら!大丈夫だったでしょ?じゃ入れ直そうか!」


 アヤが私の代わりに神の試練をこなした。

 まさか、この試練を人間が乗り越えられるとは…。

 すまぬ、アヤ。お前の慈愛は天界にも広めよう。


「すまぬ…その飲み物は不味かったであろう?」

「良いって良いって!これから楽しむんだからさ!楽しく行こうよ」

「…そうか!私は無知だからな。どれが良いと思うか?」

「うーん。コーラとかが一番人気あると思うよ!」

「そうか、ならそのコーラという飲み物にしようか」


 私はコーラを選択して、コップに注いだ。

 おお、これは美味しいな。シュワシュワしてて。

 アヤもタクヤの分も入れ終わったようなので部屋に戻った。


「イェーイ!アヤとシリエルちゃん飲み物ありがとね!」


 部屋に戻るとタクヤが何やら変な棒を口の前に持ってきていた。


「タクヤ、その棒はなんだろうか?」

「あ、これ?マイクっていって、声が大きくするための機械なんだぜ!」

「ほう、そういうものもあるのか」

「そして、そのテーブルに置かれているタブレットをタッチして曲を探すんだ」


 タクヤが指差した先を見てみると何やら四角い板があった。

 タッチとは指で触る事か?おお!動くぞこれは。


「シリエルさん、試しに曲探してみるよ。知っている曲はある?」

「いや、すまぬが私は知っている曲は無さそうだ」

「うーん。困ったな。なら試しに私が歌ってみるから、同じ曲を歌えばいけるかも」

「ふむ、そうしてみようか」


 アヤがその板を触っていると、箱に文字が表示された。

 おお!その板と連動しているのだな。

 そして、アヤは歌い始めた。上に何やら線が流れているが、これはもしかして音階?

 ……ならいけるかもしれないな。


『90点』


 歌い終わると箱から数字が出てきた。


「おー!流石はアヤ!めっちゃ良い点数じゃん!」

「タクヤありがとー!でシリエルさんどうだった?」

「うむ、良い声だった。だが、仕組みは大体理解出来たぞ」

「じゃ、同じ歌を歌う?」

「いや、上の線に言葉と音階を合わせれば良いのだろう?なら知らない曲でも出来そうだ」

「えっ?メロディバーだけで歌うの?そんなの無理だと思うけど…まあ、試しにやってみる?」

「うむ、やってみよう」


 私はアヤからタッチパネルとやらの操作を教えてもらって、曲を入れてみた。

 よし、このメロディーバーに合わせれば良いのだな。

 …。

 うむ、ズレはなく完走したぞ。これで良いと思うが、どうだろうか。


『100点』


 これは良いのだろうかとアヤとタクヤを見ると変な顔をしている。

 どうしたんだろうか?


「100点とか初めて見たよ…」

「えっ…シリエルさんこの歌初めて歌ったの?」

「ああ、初めてだぞ」

「マジパネエ…しかも声めっちゃ綺麗だし」

「こんなの見せられたら次歌えないよ…」


 なんか二人の空気が変だ。私は何か悪い事でもしたのだろうか…。


「アヤ、タクヤ次歌ってくれないか?」

「いや、でもこんなの見せられちゃ」

「私はな、お前たちの歌が楽しみなんだ」

「えっ?」

「私は歌いたくて来た訳じゃない。お前たちと来たくてここに来たんだ」

「……」

「だからな、私が何かやってしまったのなら謝る。だからそんな変な顔をしないでくれ」

「…そっか。じゃ次俺歌っちゃおうかな!!」

「その次は私ね!!」


 良かった。二人のテンションが元に戻ったようだ。

 うむ、やはりこの二人はこうでないと。

 ……。

 もうここに来てから2時間くらいか。

 カラオケとやらは楽しいな。何よりこの二人が楽しそうにしているのがいい。

 うん?アヤが少し難しい顔をしているぞ?


「アヤ、そんな難しい顔をしてどうした?」

「ごめん、シリエルさん。次の曲これにしようかと迷って」


 アヤが持っているタッチパネルを覗き込んだ。

 …なるほどな。天使にはよく分からないが、人間ってのはこういうところは羨ましいな。


「その曲歌うと良い。タクヤにも届くと良いな」

「別にタクヤにって訳じゃ…無いけど…」

「ふふ、隠さなくても良いさ。誰も笑わないよ」

「…うん。じゃ入れてみるよ」


 アヤは曲を入れたようだ。その思いは私が見ても微笑ましいものだ。


「ねえタクヤ!次の曲頑張って歌うから聞いてね!」

「お!良いねー!アヤ、テンション上げ上げでちゃんと聞いてるからな!」


 箱から曲名が表示された。


『貴方が好きです≪貴方の為だけのラブソング≫』


 なかなか直球なタイトルだ!これは気づくだろう。

 うむ、良い声でなかなか心に響く良い歌だ。

 さて、歌い終わったか。どうなるかな?


「どうだったタクヤ!私頑張って歌ったよ!!」

「ヒュー!良いね!いつものアヤが歌う十八番だけどいつ聞いても良い曲だ!じゃ俺も十八番歌っちゃおうかな!!」


 そしてタクヤも曲を入れ始めた。まあ、この男でも流石に気づいただろうな。

 …えっ?その選曲は何なんだ…。


『ごめんなさい≪その告白は受け付けません≫』


 これはそういう事なのか?この男の思考を少しだけ読んでみよう。

 …まさか。気づいてないのか?あれで?

 いや、確かに思考を見たら告白だとも思っておらぬ。というかその選曲は不味いだろう。

 ほら、アヤが泣いておるぞ…。


「イェーイ!ご清聴ありがとう!お!アヤ、俺の声を聞いて感動して泣いたのか?」

「…うるさい、バカ」

「えっ?どうしたんだアヤ。もっとテンション上げてこーぜ!」

「いや、お主は鬼なのか?」

「え…シリエルちゃんまでどうしたの?」


 何だか、この部屋の空気が冷えておる…。

 仕方ない、私も歌うか、今の空気にピッタリな曲を…。


「お!シリエルちゃんも曲歌う…って何それ?」


 私が入れた曲、それは。


『この鈍感男≪告白に気付けよ馬鹿野郎≫』


 お前に向けたものだよ、この鈍感男!

 私の歌でも聞いて、反省しろ!


「い、イェーイ!アヤ、そろそろ泣き止めよ…」

「…グスン」


 その後はこんな空気でカラオケは終わった…。

 まあ、翼は黒くなって無かったから良しとしておこう。

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