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禁欲天使ですが、焼き鳥とビールで翼が黒くなりました  作者: 大河そうじ


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2/7

2話 テンシホワイト

「ようやく、翼が白くなったか…」


 下界に降りてから2週間ほど経過して、

 ようやくペンキを塗らなくても白い翼のままでいられるようになった。

 やはり、私の白い翼は美しいな。誰もが私を讃える純白さだ。

 

 それにしても下界の欲望で黒くなったという事実を私は許せなかった。

 また下界に行こう、私が禁欲であることを証明する為に。

 それにしてもあの焼き鳥は美味しかったな…。

 いや!食べたいわけでは無いぞ!私は下界に染まらない事を証明したいだけだ。

 だが、ビールの一杯くらいはセーフだと思う。


「すまんが出かけてくる」

「分かりました。シリエル様、どちらにでしょうか」

「すまぬが聞かないでくれ。とても言えぬ大事な用なのだ」

「…すみません、失礼を。ですがご武運をお祈りいたします」

「…ああ」


 部下は見送ってくれた。今度こそは白の翼のままで帰ってやるぞ。

 さて、下界に着いたな、また翼に透明化の魔術をかけてっと。

 よし、これで良いな。さて、今日は何を食べようか…。

 間違えた。何をするべきだろうか。

 ちょうどいい。そこにいる男は何をしようとしているのか?

 思考を読んで参考にしようか。

 

 ……はて、競馬とは何だ?

 ほう、競馬とは賭け事の事か、私はやったことが無いな。

 ふむ、興味深い。これこそ私が禁欲であると証明できるのでは無いか?

 よし、人間の欲深さとやらをこの私が見極めてやろう。



 ◇ ◇ ◇



 ここが、競馬場とやらか。

 泣き喚いて馬券を放り投げている人がいるが流石に見苦しいな。

 大の大人が大声で泣くものでは無いとは思うがな。

 ……。

 ふむ、入場券を払うのか。

 そして、馬券とやらを買えばいいのだな。

 色んな馬が走るのだな。なるほど。

 さて、どれを選ぼうかな、まあこういう事は直感で選んだ方がいいだろう。

 よし、100円分買ったぞ。次のレースだな。

 まあ、こんな物が楽しいわけがない。

 ……。


「一着!カキコミコミック!!」


 よし、また当たったぞ!!

 ふふふ、私はやはり凄いな、これで3連勝だ!!

 だが、勿体無いな、100円しか賭けてなかったことに。

 もし全財産を賭けていたら私は大儲けしていたのにな。

 えーと、次のレースは、と。


『6番 テンシホワイト』


 天使とは、まさに私に相応しい名前だな。

 これは運命かも知れない。きっと神が私に勧めたのだ、買えと。

 これは神託だ。ここで全財産を賭けぬものに天使を名乗る資格など無い。


「テンシホワイトの単勝でお願いする。この金で買えるだけ頼む」

「分かりました!」


 ふふふ、1番人気だ!当たらぬはずが無い。

 なんせこの私が選んだ馬だからな!!


『各馬ゲートイン完了!1番人気テンシホワイト落ち着いてますね』


 そうだろう!これだけ威厳のある姿だ。

 もう見なくても結果は出てるな。ふふふ、楽しみだ。


『各馬出馬しました!テンシホワイト速い!もう先頭に立ってます!!』

『ぐんぐん伸びるテンシホワイト!!もう2番手と5馬身は着いたでしょうか、独走状態です』

『いやあ、素晴らしいですね、これ程の走りは予想しませんでした』


 実況と解説もベタ褒めだ。流石は天使の名を持つ馬だな。

 ああ、夢が広がるな!焼き鳥何十本でも買えるぞ!!


『最後の直線に入りました。もう10馬身は着いたでしょうか。テンシホワイト、これは敵はもういないか!?』

『ここまでのレースは見たことがあまり無いですね、凄い馬だ』


 10馬身も差をつけるとは流石は神託が降った馬だ。もうこれは決まったな!

 さて、もう良いだろう。換金でもしてくるか。

 そう思っていると悲劇は訪れた。


『ああっと!テンシホワイト!ゴール前で何故か逆走!!一体どうしたんだ!!』

『一着!! 勝ったのは────ダテンブラック。ダテンブラックが一着です!!』


 その声を聞いて、足元がぐらついた。

 目の前が歪んでいき、視界がおかしくなっていく。


「逆走…。えっ?逆走って何だよ……」


 逆走ってさっきまで見たレースではどの馬もして無かったぞ…。

 目の前の現実が受け入れられなくて、涙が出てきた。

 

「ちくしょう…ちくしょーー!!」


 束になっていた馬券を上に放り投げた、風に乗って宙に舞う。

 テンシホワイト! お前、堕天馬じゃないか!!

 ダテンホワイトとでも名乗ってろよ、ちくしょう。


「あの金髪の姉ちゃん、泣き喚いているよ…見かけはすごく聖女様みたいなのに…ああはなりたく無いもんだ」


 煩い、そこの者。聞こえているぞ。

 泣き喚いて何が悪い、人の不幸を見下すんじゃ無いぞ。

 ちくしょう、私は全財産を賭けたんだぞ!!

 ……私は泣きながら競馬場を後にした。


 

 ◇ ◇ ◇



 ふう、落ち着いてきた。

 やはり、人間共の遊戯はつまらぬものよ。

 うむ、そうだ。下界などにハマる訳は無いのだ。

 その証拠にこの翼を見よ……。

 ……えっ、真っ黒では無いか。

 何故だ!!私は白翼の天使として有名だったんだぞ!!

 

 このままじゃ帰れない。仕方あるまい。

 そこにある石をまた黄金に……。

 よし、これを換金したらまたペンキを買いに行ける。

 ……。

 これで元通りの白だ!!危なかった……。

 ふふふ、これで今日も私は清廉潔白な天使だ。

 だが、人間の欲望とは恐ろしいものだな。

 まあ、私は引っかかってないけどな。では、帰ろうか。

 いや、その前に焼き鳥だけは食べて行こう。うむ。そうしよう。

 一回だけならセーフと下界では言うと聞く。それを私に適用させても問題はあるまい。

 では。


 ────行くぞ!!焼き鳥屋!!

 

 

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