前へ目次 次へ PR 20/32 20 「お母様、どうして泣いているの?」 茜の声に、鈴は我に返った。気づかぬうちに、頬を涙が伝っていた。 「ごめんね、ちょっと昔のことを思い出して」 鈴は涙を拭うと、立ち上がった。 「さあ、仕事に戻りましょう。将軍家の御用だもの、最高の染め物を作らなきゃね」 茜は母の手を取った。 「お母様、茜も手伝います!」 鈴は頷き、娘と共に仕事に取り掛かった。彼女の心には、姉への複雑な思いがあったが、それ以上に、自分の道を歩む決意があった。