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土屋の家で鶏のから揚げを食べる予定で割り勘で鶏肉とから揚げのもとを買ってしまったので、涼一は退社したあとふたたび土屋のアパートについていった。
きのう一泊したモダンな和室のちゃぶ台に肘をついてすわり、土屋がから揚げを揚げるパチパチパチという音を聞いている。
アパートとはいえ敷地が広く郊外なので、夜八時近くにもなると周囲はけっこう静かだ。
「ひと晩で解除方法が見つかるとは思わねえじゃん……。さすがに二、三泊くらいは予定してたよな」
涼一はだれに向けているのか分からないグチを口にした。
香ばしいにおいがしてきた。
においの時点でけっこう期待できるかなという気がする。
「鏡谷くん、レア? ミディアム? ウェルダン? どれ派?」
から揚げを揚げながら土屋が問う。
「何の」
「から揚げ」
「から揚げにレアとかあんのか」
涼一は顔をしかめた。
「つか目ぇ見えてるし目隠し妖怪がきても解除のしかた分かったし、べつに俺が揚げてもいいんじゃないの?」
「見えなくなった一瞬に油がはねたら危なくない?」
土屋が答える。
んなもん見えててもいきなりパチッとくるだろがと思う。
「外はサクサク、中はジューシーってのがいい?」
「とくにこだわりとかない」
通勤用カバンからスマホをとりだす。
ちゃぶ台に肘をついて、スマホでユーチューブを見はじめた。
「から揚げにかけんの、マヨネーズ派? 塩派? ソース派? しょうゆ派? しょうゆマヨソース派? その他派?」
「とくにこだわりない。どれでもいい」
もういちど答える。
よく一気にいろんな味が挙げられんなと思う。
ユーチューブのおすすめに出てきた動画をあちこち見る。
海の一軒家にいたときに怪談のチャンネルばかり見ていたせいか、いまだおすすめに怪談ばかり出てくる。
AI、いいかげん仕事しろと思う。
そう思っていたら、「から揚げにまつわる怖い雑学」とか出てきやがった。腹立つ。
「とくにこだわりはねえから。から揚げのもとが好みのやつだったら、それでいいって感じ」
「から揚げにレモンはかけるほう?」
「ぜったいにやだ」
涼一は眉間にしわをよせた。
「レモンはリスボン派? ユーレカ派? 璃りの香派?」
「かけんなって言ってんだろが」
「輪切り派? 半分ぶつ切り派?」
「かけんな」
「ピーマン食べれるほう?」
「かけたら絶交すっぞ、こら」
涼一は吐き捨てた。
「絶交って、聞いたの小学校以来かも」
自分でも恥ずい。涼一は眉をよせた。
土屋がから揚げを盛りつけた皿を二つ、ちゃぶ台に置く。
「大きい皿にレタスの葉のおっきいやつバサッと乗せてさ、そこにこんもり盛るとかしたら豪勢な感じなんだろうけど、大きい皿ないから」
土屋が言う。
言いたいことのイメージはつかめたが、一人暮らしで豪勢な大きい皿を置いてるやつはあまりいないだろう。
「んなパーティでもねえし」
涼一は、渡された箸を手にした。
「みそ汁飲む? きょうはみそ汁のもとだから、みそ入れる順番にこだわる必要なし」
土屋がみそ汁のもと六袋バラエティセットのパッケージを差しだす。
「選んで」
「ん」
涼一は、ワカメととうふのみそ汁の小袋を引きぬいた。
土屋がネギと油揚げの小袋をとりだす。
「お湯持ってくる」
土屋が台所にもどった。
「お湯沸かすくらいやるけど? あと、きょうは泊まんないで帰るし」
涼一は台所に向けてそう告げた。
「危なくない?」
土屋がケトルを持って戻る。
お湯はもう沸かしてたのか。そりゃ、から揚げ揚げながら沸かせるもんなと思う。
「平気。目隠しの解除のしかた分かったんだし。そっちも二晩つづけて泊まられたらめんどくさいだろうし」
「いや退屈しなくていいけど」
土屋がなめこ汁のもとをみそ汁茶碗に入れる。
「そんなにおもしろい存在のつもりねえし」
「けっこうおもしろいよ?」
土屋がお湯をそそぐ。
どこらへんがだ。涼一は顔をしかめた。




