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倶利伽羅怪談 ㇰリヵㇻ ヵィダン 〜社畜バディと奔放JKの怪異対応処理〜  作者: 路明(ロア)
【第碌話】鬼ਟੋᖾこƽʖˋ ォニサン ⊐チㇻ

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ᑐかまɀた  三

 朝イチで訪問予定だった塚間(つかま)エターナルのルート営業を終え、涼一(りょういち)はネクタイを軽く直しながら結婚式場の建物を出た。

 空は少し曇っている。

 装飾過多な玄関口からすぐまえの駐車場にさしかかると、シルバーの乗用車のサイドウィンドウから手をふっている人物がいる。


 土屋(つちや)だ。


 涼一は、かけ足で乗用車に走りよった。

「おつかれ」

 土屋が運転席のサイドウィンドウを開ける。

 「乗りな」というふうに助手席のほうを指さした。

(わり)いな」

 そう返してスタスタと助手席のほうにまわる。

 ドアを開けて助手席のシートに座る様子を、土屋が確認するように見た。

「終わったら会社に電話かけてパートさんに来てもらう予定だったんだけど」

 涼一はシートベルトをしめた。カチッとバックルをはめる音がする。

「そう聞いてたけど、時間()いたからさ」

 土屋が答える。  


「いまんとこ見えてるみたいだね」

「何とか」

 涼一はそう返した。


「理屈は分かんねえけど、営業中とりあえず “塚間エターナル” を過剰に連呼してたわ。――“塚間エターナルさまといたしましては”、“塚間エターナルさまご確認ください”、“塚間エターナルさまのほうで”、“あっ、塚間エターナルさま”」

「効きそ?」

 土屋が問う。

「知んね」

 涼一は答えた。

「目隠し自体が、こんどはぜんぜん来ないからな。飽きたんでねえの」

「それならいいけどな」

 土屋が車のエンジンをかける。

 

「んじゃ、たこ焼き、豚肉、鶏肉とは唱えてないんだ」


「……だからそのダサい呪文みたいな言いかた」

 涼一は顔をしかめた。

「何者なんだろ。鏡谷(かがみや)くん、手がかりになる姿とか見てない?」

「見てない」

 涼一はそう返した。

「このさい後出しでもお兄ちゃん怒んないけど」

「学年いっしょな」

 土屋がウインカーを出し、車をゆっくりと発進させる。

「つぎどこ」

「とりあえず帰社。そっちは?」

 涼一はフロントガラスの外を見て軽くため息をついた。

 いつもなら社用車に乗りこめばすぐなのに、手間がかかるのがもどかしい。

「二時間後に一件だから鏡谷くん降ろしてからいく」

 車を一時停止させてから、塚間エターナルまえの県道に出る。

 

「何でたこ焼きか豚肉か鶏肉か塚間エターナルなんだろ」


 土屋がハンドルをまわす。

「塚間エターナルだけ何か異質じゃね? ちがう?」

 涼一は眉をひそめた。

「手がかりってか、見えなくなると子供みたいな声聞こえんな。“鬼さんこちら” って。――あとパタパタ走ってく音?」


「鏡谷くん、鬼なのか」

 土屋がつぶやく。

「かくれんぼのときと同じようなパターンかな」

「走ってく足音、けっこう足速い印象」

 涼一はそうつづけた。

「俊足?」

「子供にしちゃ速いかも」

「じゃ、まえみたいな子供の幽霊じゃなくて妖怪とか八百萬(やおよろず)の神の何かとか」

「ぅえ」

 涼一は顔をしかめた。


「そんなの、ヒトカス(もく)ヒトカス科の社畜にどうしろって」


 助手席のシートに背をあずける。

 車は、もよりの国道にさしかかった。

「行員さんが言ってたのは、“鬼さんこちら、手の鳴るほうへ” だっけ」

「 “鬼さんこちら” のあとに “つーかまえた” とかつづけてなかったっけか。くそかわいい言いかたで」

 土屋の問いに涼一はそう返した。


「鬼さんこちら手の鳴るほうへ、つーかまえた――んで、たこ焼きと豚肉と鶏肉と塚間エターナル……」


 土屋がハンドルを握りながらつぶやく。

「そこに手がかりなんかあんのか? だいたいホトケも八百萬の神も肉食うとかいう発想からなさそうじゃね?」

 車が信号機で止まる。

 土屋が「うーん」とうなった。

 

「とりあえずもいっかい見えなくなってくれたら実験しやすいんだけど」

「実験台にすんな」


 涼一は眉をよせた。

「たこ焼きのとき鏡谷くん、何て言ったっけ。“たこ焼きまえに買ってなかったっけ”、いや違うな。“まえ、たこ焼き買ってなかったっけ”」

 土屋が似たような言いまわしをくりかえす。

 信号機が青になり、車を発進させた。

「鏡谷くんのいつもの言いかたからすると、“つか、まえにたこ焼き買ってなかったっけ” ……」

「俺、そんなに “つか” ってつける?」

「わりと」

 土屋が答える。

 口ぐせになってんのか。涼一は顔をしかめた。

 

「つかまえにたこ焼き……塚間エターナル」


 土屋が口元でくりかえす。

「ちょっと待って――鏡谷くん」

 ふいに声を上げた。

 上げたと同時にウインカーを出し、ややしてから左折する。

 たこ焼きと道路状況と、どちらが問題だったんだと涼一は運転席とフロントガラスの外を交互に見た。

 


「 “つかまえた” じゃないの?」



 土屋がはっきりとした口調で言う。

「塚間エターナル、“つか、まえたこ焼き”。“つかまえた” って言ったから目隠し鬼とりあえず終了したってことなんじゃないの?」

「……はあ?」

 涼一は、車がさしかかった繁華街の店のならぶ風景を見た。眉をよせる。

 

「こんど目隠しされたら “つかまえた” って言ってみない?」





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