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98、祭の日①

日曜日のニュース番組でもまだ半グレの事件を扱っていた。詐欺行為や違法薬物など、新たな罪が発覚したらしい。私、とんでもない犯罪集団と戦っていたのね。しかもたった一人で。我ながら呆れるよ。

昼過ぎ、駅での待ち合わせ場所で、上から下まで白一色の鈴ちゃんと合流する。白のワンピース、クツ下、ローファー姿の鈴ちゃんは、これぞ十代の女の子! という可愛らしさがよく似合っていた。凶悪オーラで暴走し、体育館を放火しようと真夜中にガソリンを運んでいた鈴ちゃん。あの夜の格好は、上から下まで黒一色のポロシャツにスカート、スニーカーを履いていた。憎悪に取り憑かれた暗黒少女が、よく晴れた駅前の広場で、白い妖精のような可愛らしさで私に手を振っている。なんだが嬉しくて泣けてきそうだ。

「リカコちゃん、モデルさんみたい。何着ても似合うよねえ」

Tシャツにベージュのサロペット、白の厚底サンダルの私をおだててくれる。

「まあね、よく言われます」

ノると、おもしろーいと喜んでくれる。電車に乗って目的地に降りると、昨日から始まっている祭一色に街中が染まっていた。片側三車線の主要道路が歩行者天国となり、繁華街のアーケードは、七夕祭にちなんだ飾り付けがされ、吹流(ふきなが)しの下を歩行者が通っている。見ているだけで浮き浮きしてくる。そうこなくっちゃ。上空を飛行中の白龍も、楽しそうに見える。

ダンスにも力を入れている祭りなので、県内外から参加している二百近くのダンスチームが、各所に設置された場所や、商店街の中を行進しながら、日頃練習した踊りを披露している。今日の夕方からは、歩行者天国を全てのダンスチームが行進しながら踊る、『総踊り』で締めくくられる。

高校生、大学生ぐらいの男子に、五回ほど声をかけられるが適当にあしらった。可愛い鈴ちゃんと、美しい私が歩いていれば男の子なら声をかけたいのが当然だろうが、相手にしなかった。通りを歩きながら、二十代の本格的なダンスチームには圧倒され、幼稚園児のダンスチームにはその可愛さに心を撃ちぬかれた。

歩行者天国を楽しく進みながら、私はある異変に気づきはじめた。何がおかしいと言えば、鈴ちゃんと私のコンビに対しての、年頃の男の子達の様子が変化し始めた。声をかけてくる積極派(せっきょくは)、声をかけようか相談している躊躇派(ちゅうちょは)、ただただ見とれている羨望派(せんぼうは)の三派に、大体の男の子の反応は分類されたが、全くなくなった。なぜだか分からない。でも変わりに現れた男の子たちの反応は、『恐怖』だった。これはむしろ日頃おなじみのものだった。学校内の生徒たちは、私の強さを知っているので大体恐れている。しかし隣の市を歩いている初対面の男の子たちが、何を恐れる理由があろうか。でも別に気にはならなかった。声をかけられるのがうっとうしかったので、むしろ有難(ありがた)いくらいだから。そのうちに一般人の反応も変化しだした。祭りを楽しんでいる群衆の中に完全に溶け込んでいたのに、私は異物のように浮きはじめた。私と距離を取り始めたのだ。やはりその眼には、うっすらとした恐怖心があった。理解不能だが、鈴ちゃんは気にならないのか、楽しそうに私に話しかけてくるので、私も気にしない事にした。しかし、である。祭りの警備で待機してある機動隊の前を通り過ぎる時、機動隊員があきらかに警戒した目で私をマークしていることを認識した瞬間、そうもいかなくなった。なぜだ? 私の身に何が起こっている? 歩きながら名探偵のように頭をフル回転してこの謎を解こうとした。するとある事に気づいた。男の子たちも群衆も機動隊員も、私を見た後、必ず背後に目をやっていた事を。そして鈴ちゃんがふだんより口数が多く早口になったのも気になる。まるで私が背後に気を向けないために、自分に気を引こうとしているかのようだ。


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