99、祭の日②
……そういう事か。名探偵の私はついに謎を解いた。頭の中にはローカルニュースで流れた、去年の夏祭りの映像が浮かんでいる。逮捕された半グレたちが歩行者天国で大暴れして、機動隊に物を投げつけている。この祭りは、県内ナンバー1の不良集団のお披露目の場でもある。代々続いている不良界だけの伝統。では去年ナンバー1として我が者顔で練り歩いていた半グレが壊滅した現在、誰がナンバー1なのか? 私は立ち止まった。すると背後の集団も立ち止まったのが、背中ごしに伝わってくる。私がゆっくり振り返ると、思っていた通りの面子が揃っていた。
「いやあ、姫、奇遇ですねえ」
三大暴走族の相談役三人が立っていて、その中の江端が、笑顔で心にもないことを言ってきた。
「い、つ、か、ら、後ろにいた?」
「姫にバレないように数十人ずつ合流していったので、全員集合したのは十分ほど前です」
「……呆れた」
私の左右に相談役三人が立ち直すと、前田が背後についてきた、二千人ほどの後輩に大声を張り上げる。
「ほら、最高顧問の姫に挨拶せんかい!」
すると二千人の不良共が、
「チワッス!」
と頭を下げた。
「だ、れ、が、最高顧問だ?!」
「いやあ、もちろん姫の事で」
「断る!」
「じゃあ、非公式でもいいです」
「当たり前だ! ……で、いつまでコイツらは頭を下げてるの?」
「もちろん姫がいいと言うまでです」
「じゃあ、もういいよ」
「おーい、頭上げていいぞ」
米村の言葉で、二千人の怖面が頭を上げる。三十万人は動員するこの夏祭り、歩行者天国には、二千人のヤンキー軍団を、離れた所から眺めている無数の観客がいて、スマホをこちらに向け、写真や動画を撮っている。いくら私が三大暴走族と無関係だと言っても、拡散していく写真や動画を見て多くの人達は、関係者だと受け取るだろう。あー頭痛い。私はバツが悪そうにしている鈴ちゃんを睨みつける。
「鈴ちゃん、アンタ、グルでしょ?」
「ごめーん、スイーツ一杯おごってもらって断れなくなって。あと花火の絶景スポットにも連れて行ってくれるって」
両手を合わせて、何度も頭を下げる。将を射んと欲すれば先ず馬を射よ。スイーツで射たれたお馬さんを、私は眺めていた。




