68、逆転
彼らは数日のうちに、休憩時間を使って全クラスを回った。五人全員で教室に入ると、私が渡した資料をもとに、どの生徒が『先生役』ができるのか指示を出した。教師の反感を買い、内申書で悪く書かれることを恐れている生徒には、そもそも志望校に受かる学力が無いと、内申書が良くても合格出来ないことを強調し、学校にいる間も個別指導のプリント学習をして学力を上げることが、どれだけ志望校合格には有意義なのか力説して回った。こういうことを普通の中学校ですると、クラスをしきっている不良生徒の不興を買い、嫌がらせを受けるものだが、この中学は不良グループらが全面協力しているので、何の支障もなかった。
学年トップ5は、優等生に対しては、教えることは、相手に対しての責任から真剣みが増し、自然に論理性が身につき、記憶の定着に効果があること。理解してもらえる喜び、優越感がこれまで以上の勉強への意欲を高め、逆にうまく教えられないことがあれば、自分が間違って憶えていたことにも気づける。つまり他人に教えることは最強の勉強法であることを説明し、教える環境に身を置くことが、成績を上げるためにどれだけ有益なのか語り、仲間に引き入れることに成功した。
彼らの協力も得て、一般生徒の説得に力を入れ、その結果、授業中にプリント学習する気になった生徒が目に見えて増えはじめ、一週間もしないうちに形勢は逆転し、四十人クラスの八割、つまり三十人以上がする気になってくれた。逆にプリント学習をやらない少数派は、推薦入学することを希望している生徒か、根っから教師の反感を恐れる生徒のいずれかだった。
個々の学力も分かり、生徒の大半が、授業中にプリント学習をする気になってくれた。条件は揃った。明日、木曜日からプリント学習を実践することを、不良グループを通して、全クラスに通知した。




