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67、学年トップ5②

右手をヒョイと挙(あ)げて、竹内が口をはさむ。

「オレは牧野さんに会ったら、前から言いたかったんだけど、中庭で不良グループ相手にたった一人でやっつけた後、どうせ今度は新しい暴君(ぼうくん)として、いじめる側にまわるんだろうと思ってたけど、そんなこと全然しなくて、逆にいじめを撲滅したのはマジ感動、マジ尊敬してる」

 顔が小太りの竹内の目は、いたって真剣だ。本当にそう思っているのだろう。

「あら、そう。ケンカが強くなってから、みんなから恐れられてると思っていたけど、そう思ってくれるなら、嬉しいわねえ」

「それはボクもなんだ」

 オタクっぽい斉藤の眼も、竹内におとらず真剣だ。

「この中学は不良がやりたい放題で荒れてて、いじめられている子を見てきたけど、ボクはケンカが弱いから、助けたくても見て見ぬフリする傍観者になって、自己嫌悪に陥(おちい)っていた。警察が校内に常駐してれば、ケンカの弱いボクでも『通報者』として警察に介入してもらい、間接的にいじめ被害者を救うことが出来るけど、学校側が警察の介入を嫌うからそれもできない。牧野さんがいじめを撲滅してくれたおかげで、自己嫌悪から解放されたんだ、ありがとう」

「もう何よ、お礼なんて、照れちゃうじゃない」

「でもほんと、あの中庭で不良グループを次々とやっつけたの、カッコ良かったわよねー」

 谷本が両眼を瞑りながら、うっとりと話している。中庭でのバトルシーンを思い返しているのだろう。

「牧野さんがあの時言ってた、女性に拳銃持たせる法律、私はぜひ作ってほしいと思ってるの。それで女をバカにする男の人がいたら、撃っちゃうんだ」

 人差し指を引きながら撃つ真似をする。その場にいた全員が引いている。

「谷本さんって、おだやかな女の子の代表みたいだけど、意外と過激なのねー」

 もう、そんな事ないわよー、と谷本美葉は笑ってる。

「牧野さんが昼休みの中庭で、一斉指導について意見を述べていたのを聞いて、自分でもそのことについて考えてみたんだけど」

 超マジメな学年ナンバー1の松本が、メガネのブリッジを人差し指で押さえている。

「教育関係者は『学力を上げる』という大義名分(たいぎめいぶん)があるから、日本中の子供たちを学校に通わせ、朝から夕方までの時間を拘束(こうそく)できるんだ。一斉指導のため、分かりきった授業、または分からない授業を受けさせられ、学力が上がっていないのだから、大義名分を失っている現在の教育関係者は、子供たちを監禁した罪で訴えられても仕方がないと言える」

「……さすが、不動の学年ナンバー1は言うことが一味違(ひとあじちが)うわねえ。とにかく、手伝ってくれるなら、こんな頼もしい人達いないわ。ありがとう」

 と、五人に頭を下げる私。

「じゃあ今からでも、各クラスを回って説得してくるよ」

 松本がそう言うと、私が参考に使ってと渡した、個人の学力が分かる資料を持って、五人は教室から出て行った。

「とんでもないのが味方になってくれたねえ」

 鈴ちゃんが感動している。

「本当にねえ」

 私も深く頷いた。


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