66、学年トップ5①
私を刃物で襲ってきた五人組は、蛇崩の二軍の下っ端だったが、業苦の炎の制裁を、一晩中受けている時、今まで隠してきた犯罪行為も、懺悔のように告白した。白龍が懺悔するまで許さなかったからだ。結果、警察に捕まったのである。そしてそのことを逆恨みした一軍が、私を標的にしたらしいことを、後日、相談役の江端らに教えてもらったが、何とも思わなかった。刃物の五人組に襲撃されても、余裕で倒すことの出来る私からすれば、一軍が大群でやってきても、三大暴走族の時の闘いのように、一方的に蹴散らせばいいだけのことだからだ。それよりも個別指導のプリント学習を、授業中に実践する気のない生徒の多さの方が悩みのタネだった。昼休み、食事を終えると、自分の席で腕を組んで目を瞑り、打開策を練っていた。
「リカコちゃん、リカコちゃん」
隣の席の鈴ちゃんが呼ぶので目を開けると、五人の生徒が前に立っている。同じクラスになったことはないが、学年トップ5と呼ばれる有名な優等生たちである。二百人ほどいる学年の、中間テスト、期末テストの上位五名は、中学入学から三年の今まで、常にこの五人で占められていた。ちなみに私の最高順位は六位である。私は六位から二十位ぐらいの成績をとっていた。これは学年の中で、優等生の第二グループに属していることを意味している。どんなにがんばっても、先頭集団を走り続ける学年トップ5には、成績で勝てなかった。
「あら、学年トップ5じゃない。私になんの用?」
「牧野さんが全校生徒に実践しようしている、プリント学習のことでお話があるんだけど」
学年トップ5の紅一点、可愛い顔立ちの谷本美葉が口を開く。
「ん? 反対なの?」
思わず眉間にシワがよる私。
「ちがう、ちがう。私たち五人からすると、学校にいる間、一斉指導の分かりきった授業を聞かされて、前に進めない無駄な時間だったの。プリント学習で、高校レベルの勉強が出来る機会が与えられて、時間を有効に使えてとてもありがたいわ」
「ああ、それは良かった」
小五、小六の学力にも達せず、車の学科試験に落ちそうなのもいれば、もう高校生の勉強をしているのもいる。同じ学年でこれだけ学力が違うけど、両者とも喜んでいるのは個別指導なのだ。
「ボクらにとってありがたいプリント学習だけど、生徒たちの大半は授業中におこなう気はないみたいだ。牧野さんがそのことで悩んでいるなら、そのお手伝いをさせて欲しいんだ」
常に学年ナンバー1の成績を取り続けている松本結心がそう申し出た。長身で美形の松本は、女の子の隠れファンが多数いるそうだが、勉強一筋の堅物のため、松本自身そのことにまったく気づいてないらしい。メガネの奥のマジメそうな瞳が私を見つめている。
「本当に? 助かるわー。正直困ってたんだよねー」
ヒョロリと背の高い江口が口を開く。
「オレ、不良グループに幼なじみがいて、小学校の時から授業についていけなくて、中学校に入ってグレちゃったけど、これからプリント学習をやることが、すごく嬉しそうで。教師はプリント学習に反対すると思うけど、コレ生徒にとっては絶対いいことだと思うから、オレも牧野さんの手伝いをしたいと思ったんだ」
「ありがとー、感謝するわ」




