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63、刃物五人組①

数回に渡って学力診断テストを全校生徒に受けてもらったことにより、個々の学力がかなり正確に把握(はあく)できた。そろそろ個別指導のプリント学習を始めようとした時、予想外のことが起きた。教師たちが一斉指導の授業をしている間、大半の生徒が、やはりいつものように授業を受けるつもりだったのである。

 白龍が校内を巡回すると、そこで見聞きした情報が私の脳内に送られてくるが、普段の生徒間の会話からそのことが明らかになった。彼らがプリント学習をするのは帰宅後であり、自宅でおこなったプリントが、クラスの不良に回収されて私の元に届けられることになる。たしかに、それでも学力は上がる。しかし、それでは学校にいる間、理解できない授業を受け続けて時間をドブに捨てているようなものである。授業中もプリント学習をして、その続きを自宅でやれば効率はすこぶる良い。なぜそんな効率の悪いことを大半の生徒は選択したのか? 答えは簡単である。教師を敵に回したくなかったからである。一斉指導をしている教師の前で、机の上に個別指導のプリントを広げて勉強することは、とても恐ろしいことのように彼らは感じ、教師に睨まれて、内申書を悪く書かれることをひどく恐れた。

 では逆に、授業中にプリント学習を実行する気の少数派はどのような生徒かと言えば、二グループに分かれた。一つ目のグループは『不良グループ』で、こちらは以前から教師とは敵対関係であったこと、私が主張した「勉強させろ!」という戦い方が気に入ったこと。中でも中卒希望五人組は、車の免許を取得せんがため、授業中はもちろん、休み時間、帰宅後もプリント学習をやる気で満ちあふれている。二つ目のグループは『元・いじめられっ子』の生徒達で、彼らはいじめによる被害者なのに助けてくれない教師たちに対する不信感が以前から根強く、私が警察のような役割を買って出ていじめを撲滅させた事で、私への信奉者(しんぽうしゃ)になっていた事もあり、プリント学習を授業中にする気でいた。しかし二グループ合わせても、四十人クラスの中の十人にも満たなかった。むむむむ、これは由々(ゆゆ)しき事態。『正義は我にあり』のはずなのに予想外の大苦戦である。どうすれば打開(だかい)できるのか。色々考えながら学校から帰宅していた。


三大暴走族トップ五十人の喧嘩屋も、業苦の炎で苦しみ抜いているので、私に対する復讐心は毛頭無(もうとうな)く、あの時現場にいた千人ほどの不良たちも、私の桁外れの強さを目の当たりにし、相談役からも強く報復行為を止められているため、結果私はバトルの無い平和な日常を一週間ほど過ごした。このまま争いごとのない穏やかな暮らしが続くと思っていたが、世の中はそんなに甘くなく、戦いを求められた。

 学校帰り、鈴ちゃんと別れて、一人自宅に向かう。その最中(さいちゅう)に、私は異変に気づく。車二台は往来(おうらい)できる住宅街の舗道を歩いていると、前方から二人の男たちが歩いてくる。チラリと後方に目をやると、三人の男たちがついてくる。友人同士でもないらしく、たがいに数メートルの距離をとっていて無言で歩いている。普段は人通りの少ない道だが、たまたま五人の男たちに挟まれて、歩いているだけなのだと思うことも出来たが、オーラの見える私には、緊急事態が差し迫っていることが分かった。

 五人の男たちは誰一人私のことを見ていなかったが、その背後に立っている、タチの悪い鬼オーラは、はっきりと私を睨みつけている。間違いない。この五人は仲間同士であり、私を襲撃しようと挟(はさ)みうちにしていた。最初に確認した三十メートルほどの距離から十五メートルほどまでに近づいた時、動きがあった。


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