64、刃物五人組②
前方の二人が後ろに手をやると、隠し持っていたナタを鞘から取り出した。後方の三人のうち、唯一バッグを持っていた男がそのバッグを地面に置き広げると、それは布巻きの包丁ケースであり、三本の包丁が収納されていて、それぞれが一本ずつ手にした。刃物を握った五人とも、その両眼は今では私を捉えている。私が包丁を手にした三人組に駆け寄ると、ためらう事なく、包丁を突き刺してきた。超高速世界の住人である私にとっては、超スローモーションの攻撃にやられる訳もなく、軽々とよけていく。
「美味しい料理を作るために包丁はあるのよ。こんな綺麗な女の子を刺すためにあるんじゃないわ」
でも三人は止めようとしない。私は瞬時に向きを変え、ナタを手にした二人組へと移動すると、突如近づいてきた私に、待ってましたとばかりにナタを振り下ろしてくる。当たれば皮膚が裂け、筋肉をも切断させる破壊力だが、軽々とよけていく。
「木の枝を切り落とすためにナタはあるのよ。こんな可愛い女の子を裂くためにあるんじゃないわ」
もちろん二人は、攻撃を止めない。折角注意勧告してあげたが、五人は刺そうとしたり、裂こうとしたりするのを止めなかった。残念なことだが、私は反撃にでることにした。ナタの二人と包丁の三人が私の周囲を囲んでいたが、零コンマ何秒のスピードで脱出し、十五メートルは離れた場所までくると、幼稚園児だった頃の歌を、振りつけこみで歌った。
「♪グーチョキパーでグーチョキパーでなにしようなにしよう」
刃物五人組は身構えて私と対峙する。
「♪グーでみぞおち」
グーの手で左右に揺れながら歌った私は、その直後五人に対し一気に距離をつめ、一秒間で五人のみぞおちにボディブローを決めた。突然私の拳がみぞおちにめりこんだ事で、五人の体は、くの字に曲がり、呼吸が出来なくなる。
「♪チョキでのどつき」
チョキの手で私は再び左右に揺れながら歌い、今度は人差し指と中指で、一秒間で五人の喉を突く。五人はあまりの痛みにむせ返った。
「♪パーでみみこわし」
パーの手で左右に揺れながら私は両手を広げると、一秒間で五人の両耳を同時に叩く。悶絶して気を失い、地面に倒れた五人の男たちの両耳からは、血が流れ出している。それを見下ろしながら、両方の人差し指を頭の上に立て、私は左右に揺れながら、
「♪おにたいじー、おにたいじー」
と歌い終えた。
「命を奪いかねないほど危ないことをした相手に、この程度のお仕置きで許してあげる自分の優しさに感動するわあ。マザーテレサ並の慈愛の心の持ち主だわ、ほんと。ん、何だコレ?」
私はしゃがみこんで、男の手の甲を見つめる。そこには鏖という漢字が一文字、黒の刺青で彫られている。しゃがみ込んだまま、他の四人の男たちにも近づき確認してみると、どちらかの手の甲に同じ字が彫られていた。
「画数の多い漢字ね、なんて読むんだろう?」




