46、三大暴走族①
日曜日を迎えると、Tシャツにスキニーデニム、スニーカーを履いている私は、呼び出された帝徳工業高校にタクシーで乗りつける。近くのコンビニを指差し、十五分ほどで帰ってくるんで待ってて下さいと、運転手のおじさんに告げる。見上げると、遥か上空にいる白龍を見つけた。優雅に泳いで、私を見守っている。
県内の不良少年、不良少女を束ねている三つのグループを三大暴走族と呼んでいる。族と言ってもバイクに乗って爆音で走っている者は、ほとんどいない。グループの始まりが三グループとも暴走族だったため、その名残だ。日頃は路上で二十人ぐらいでたむろして騒いだり、ケンカをしたり、そういう小規模で好きなことをしている。そういう集団が百前後あって、横の繋がりや上下関係でまとまっている。
小さな抗争が始まると、先輩格のチームに応援を頼んだり、その見返りに手足のように動いたりして、百人前後の争いとなる。それでも県内を三分割した縄張りを互いに尊重しているため、潰し合いに発展する事はない。県内のケンカランキング第一位(高校部門)の帝徳工業出身者で構成されているブルートが、私を倒そうと動き出したところ、残りの二つ、黒花連合、総爆もまとまって戦うことを提案したため、こうなった。私の強さが県内の不良界を揺さぶり、潰しかねない危機感からだった。
正門から入った私がグランドに向かうと、校舎を背に千人を超す不良らが待ち構えていて、中央に五十人ほどの男たちが立っている。同じ数の鬼オーラが背後にいる。不良中学生の鬼オーラより、筋肉が一回りも二回りも大きい。その十メートル手前あたりで私は立ち止まった。
「本当に一人でのこのこやって来るって、よっぽど自分の強さに自信があるんだな」
タンクトップに金属バットを握っているのが、そう話しかけてきた。筋骨隆々で、首から両腕まで、幾可学的なデザインの、黒一色のタトゥーが彫られている。
「帝徳工業の後輩があっという間にやられた。こっちはもう油断しねえ。本気中の本気だ。ここにいる五十人は、人望があるとかと関係ねえ。純粋にケンカが強い、この基準だけで選んだ三チーム全体のトップ五十人の喧嘩屋だ」
私は五十人をじーっと見る。全員ゴツイ。平均年齢は二十代前半ぐらいか。タトゥーをしているのも多い。煙草をくわえて無表情でこちらを見ているのもいる。お馴染みの木刀、金属バット、鉄パイプに、日本刀もあり(本物の日本刀、刃が付いてた)、両手に小ぶりの斧を握っているのもいた(お前はカマキリか)。素手なのが二人いると思ったら、両者ともメリケンサックを両拳にはめている。
「殺しゃしねえが、病院送りぐらいにはなってもらうわ、悪いけど」
「あのさ、気を使ってもらってありがたいけど、殺す気できても、私には勝てないよ」
しばらくの沈黙、しかしこの言葉で戦いのゴングは鳴った。怒り狂ったような雄叫びを上げながら、鬼の角を生やした五十人が一斉に走り寄ってくる。暴力で名を上げた路上の王達が、反逆者である私を叩き割り、打ち捉えようと炎えている。




