45、父兄に感謝される②
「鈴ちゃん家に寄って、これを食べながらココア飲みたい」
と言うと、
「私は冷たいサイダーかな」
と鈴ちゃんが答えて二人で笑う。鈴ちゃん家へ向かうためにしばらく歩くと、エンジンをかけたまま停止しているビッグスクーターが目に止まった。それに股がっている男が明らかに私を見ている。背後の鬼も睨んでいた。笑顔の親子連れが迎えてくれた後、無愛想なイカつい男が待ち構えていた。エンジンを切ってビッグスクーターから降りると、こちらに近づくなり話しかけてくる。
「俺は帝徳工業を卒業したもんだけど、うちの後輩を痛めつけた牧野リカコって、アンタの事か?」
「そうだけど。ケンカ売りに来たんなら買うけど」
「いや今じゃねえ」
と紙切れを渡す。それを見ると、今度の日曜日の日付に、正午、帝徳工業高校グラウンド、三つのチーム名が連名で書かれている。
「そこに来てくれ、何人仲間を連れてきてもいい。こっちは三チーム合同でやるから半分来たとしてもかなりの人数だ。ケンカ売りに来てなんだけど、アンタ、来ない方がいい。来たら挽き肉にされるぞ」
「いや行くよ、一人で必ずいく」
「そうか、自分の事を『無敵』だと思ってんだな。じゃあ教えといてやる。ケンカの勝敗を決めるのは、結局のところ『人数』なんだよ」
そう言った後、しばらく黙って私の顔を眺めていたが、振り返り歩き出すと、ビッグスクーターに股がり、エンジンを吹かして去っていった。
「黒花連合、ブルート、総爆」
紙切れに書かれていたチーム名を読み上げる。
「三大暴走族だね」
「何それ?」
「県内の不良界で、最も強いチームって言うと、代表格がこの三チームなんだよ」
「何で知ってんの?」
「いじめられてからは、不良の内部事情も勉強したの」
「ふーん、そうなんだ」
「以前はね、この三チームで死傷者が出るぐらい抗争してた時もあったらしいよ。でもここ数年は別の勢力が台頭してきたから、対抗するために手を組んでるらしい」
「どこの世界も色々大変なのねえ。でも鈴ちゃんが前に言ってた通り、不良って倒しても倒しても後ろ盾が出てくるね」
「暴力団と同じで組織暴力だからね。一般生徒が一人で立ち向かっても必ず潰される。でもリカコちゃん、今度の日曜日、一人で戦うんでしょ」
「うん、私は特別だからね。組織暴力のくせに自分個人を強いと勘違いしてる、バカ野郎共をとっちめてやるよ」




