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37、殴り込み①

翌日の学校でのこと。昼休み、教室で購買部で手に入れたパンを食べてご満悦(まんえつ)の私に、外から騒がしい声が響いてくる。クラスメートたちも、次々と窓を全開にして外を覗き込む。私と鈴ちゃんも窓から外に顔を出す。

 うちの中学校の校舎は四階建てで、一階に保健室、校長室などがあり、二階に一年生各クラス、三階に二年生各クラス、四階に三年生の各クラスが配置されている。左右の三年生の教室からも、眼下の二年、一年の教室からも窓から次々と顔を出しているのが見えて、全校生徒が、外から大声を出している者に注目した。

「牧野リカコ出てこい! 勝負しろ!」

 中学校の敷地内を取り囲んでいるブロック塀の向こうから、そう声を上げている。

「リカコちゃん、呼ばれてるよ」と鈴ちゃん。

「そだね」と私。

 舗道に立って拡声器に口を近づけて、大声を張り上げているのだ。昨日コンビニ前でバトルした、五人組の高校生と同じ服を着ていた。人目につく水色の海軍型学生服の男子高生を数えてみると三十人いる。ホックを外しているので、赤や紫などの派手なシャツがよく見える集団だ。ほとんどの者が金属バットを手にしている。まさに殴り込みだ。ここにくるまでによく警察に見つかって止められなかったものだ。その集団の中に昨日の五人組もいたが、頭髪が丸刈りに変わっている。

「おい、一年! お前らをやった女はどれだよ、指差せよ」

 坊主頭の五人は青ざめた顔で下を向いたまま、先輩らに肩を組まれ揺さぶられても無言のままだ。私にはすぐに察しがついた。昨日女子中学生一人に五人が負けたことが、高校の先輩らに知られたのだろう。県内最強の不良高校で売っているのが自慢の奴等だ。自分たちの看板に泥を塗った不甲斐ない一年達は呼び出され、バリカンで髪を刈られたのだ。そして報復のため、二年、三年の精鋭たちがこの中学校まで足を運んできた。

「ヒマだねえ」

 私は呆(あき)れて思わず呟く。

「おーい牧野、出てこい!」

 相変わらず私を呼んでいる。坊主頭の五人組は、一晩業苦の炎で苦しめられたのだろう。私を指差すことはなかった。なんだか気の毒な気持ちになったので、左腕を上げて、大きく左右に振りながら、

「あたしあたし、あたしが牧野リカコよーー!」

 と呼びかける。坊主頭たちを除いた二十五人の男たちが、一斉(いっせい)に私を睨みつけると、

「てめえかあ、この野郎下りてこい!」と怒鳴り始めた。

「分かった分かった。すぐにそっちにいくから待っときな」

 と大声で言い返すと、教室を出て正門へ向かう。階段を一気に駆け下りると、スライド式の門扉(もんぴ)は閉まっていた。正門前には数人の教師がいる。拡声器を使ってあれだけ騒げば、そりゃ教師たちも集まるわな。


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