30、不良軍団③
この中学の頂点に君臨する藤堂力也は、手にした金属バットを放り捨てると、プロレスの力比べ、手四つを挑もうと、指を広げた両手を差し出してきた。頭の良いやつだな、と私は思う。圧倒的なスピードに歯が立たず、手下達が倒されていくのを目の当たりにした藤堂は、力比べなら勝てる可能性があると踏んだのだろう。上等だ。乗っかってやろうじゃないか。私も両手を差し出し互いの指と指がからみ合い、がっちりと握り合った。握り合った瞬間に、どちらが強いか本人同士は分かるため、藤堂は勝利を確信したのだろう、ニヤリと笑った。
「つーかーまーえーたー、信じられない速さでチョコマカ動きやがって、仲間が次々やられたが、捕まえちまえばこっちのもんだ」
「あっそ」
私は言うやいなや白龍からのパワーを使いはじめ、あっという間に握り合っている両手を上から押さえつけると、下から支えるだけで精一杯の藤堂から、余裕だった表情は消え失せた。手首を折られまいと耐えながら両膝は芝生につき必死に抗っている。マウンテンゴリラと力比べした愚かな人間の気分を心底味わっているんだろう。私がその気になれば藤堂の手の骨を粉砕し、手首ごと両腕から引きちぎることが出来る。
「藤堂、お前さ、こないだ大相撲の土俵は穢れてる女は上がれないとか抜かしてくれてたけど、生理のある女のお陰で男は産まれてこれてんだから感謝こそすれ、穢れてるなんてふざけた言い草しやがったら承知しねえぞ! 大相撲協会もいつまでも調子に乗ってたらついでに潰すぞバカ野郎! (私にそんな権限はありません。聞き流してください)」
そして上から押さえつけていた両手の向きを逆さにして、今度は下から引き上げるように力を加えると、藤堂は両腕の内側を見せながら、両手首が折られるような痛みに、奥歯を噛みしめ耐え忍んでいる。額から脂汗がにじんでいる。
「おい、どうした。こないだの調子は? 男なんだろう? 強ェんだろ? 私は武道の達人で(ウソだけど)、普段は眠っていると言われている身体能力を百パーセント出すことが出来るんだよ(もちろんこれもウソ)。あんまり女を舐めんなよ。私が選挙権を手に入れる頃には、政治家に女が拳銃所持できる法律を可決させて(そんな気はさらさらない)、てめえみてえな女をバカにしてる男を撃ち殺しても、無罪になる法案通すから(もう一度言うがそんな気はありません)、その時は覚悟しろよ。こめかみに銃口を突きつけて、ためらいなく引き金引いて、てめえの低能な脳みそが撒き散るところを、返り血浴びながら思いっきり笑ってやるからよ。だ、か、ら、女を見下していい気になってんじゃねえぞ! それともてめえの股間にぶら下がってる粗末なものを(まー、なんて下品な)、出刃包丁で切り取って、てめえの臭ェ口の中にぶち込んで(神様、どうかうちの両親が聞いていませんように)、窒息死で殺してやろうか、この野郎!!」
そう啖呵を切った瞬間、両手首が悲鳴を上げている藤堂から両手を離し、旋風脚をやつの側頭部にぶち込んだ。フルスイングした金属バットに近い衝撃を受けた藤堂は、意識の半分は飛び、両腕はだらりと下げ、頭をユラユラ揺らしている。その頭上を私は前宙半ひねりで飛び越え背後をとると、藤堂の両腕をダブルチキンウイングで極め、両膝の力だけで百キロ近い大男を捉えたまま二メートルほど宙に浮かんだ。そしてそのまま後方に反りかえり、タイガースープレックスで藤堂の後頭部を地面に叩きつける。立ち上がった私が、仰向けに倒れたままの藤堂を見ると、口から泡を吹いて失神していた。このバトルに参戦した不良は、一人残らず芝生の上に倒れている。




