四人目
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・地名とは一切関係ありません
四人目:ダニエル・ルーペン
私は十二歳になり、家庭教師とのマンツーマンの勉強を終え中等部から学校に入学した。
恋愛云々は一先ず置いておいて、例の三人とは仲良く暮らしている。
アデルバードは歳を重ねるごとに兄のような包容力を供えつつ、騎士になるために鍛練をしているせいか体つきも良くなっているので、最近は同級生の令嬢からの視線が熱いのが外から見ててもよく分かる。おかげでアデルが私に話しかけるために寄ってくるとお姉さま方の視線が痛いのが最近の悩みではあるのだが。
ギルベルトとジルベルトの双子は私と同い年だったので一緒に学校に入学した。
二人は成人するまで私の家が後見人として面倒を見ることになり、今は客間で生活をしている。生活の保障はされているのだが、二人はその飛び抜けた魔法の才能を活かして幼いながらに仕事をし入学費を稼いでいたようだ。私の両親が奨学金という形で支援しようとしたのだがきっぱりと断られ、学業に響かない範囲で学園側からも例外的に仕事をすることを認められている。成長してもその美貌は変わらずちょっとした名物双子になっている。因みに眼鏡をかけているのがジルだ。
平々凡々な私が学園でも目立つ三人を引き連れて歩いている(ように見える)ので、最初のころは本当に大変だった。僻み、やっかみ、嫌がらせのオンパレードだったのだが、あまりにも幼稚なので相手にしないでいたら少しずつその回数が減っていった。相手が反応しないと飽きるというのは本当らしい。前世分の人生経験があるのでちょっとやそっとのいじめには屈しないというのもあるが。
ルーペンに会ったのは丁度いじめが最高潮の時だった。
助けてもらったわけでも、助けてくれたわけでもない、ただいじめの現場をみられただけ。
彼がベンチに座っている脇を通り過ぎようとした際に上から水が降ってきたのだ。
幸い彼には少し水が弾く程度のみだったのだが、慌てて読んでいた本をかばっていたのを見て微かに怒りが湧いた。初めて自分以外に被害が出たのを見て思わず上を向いて声を張り上げる。
「ちょっと!!!私以外にも人が居たでしょ!!!気を付けなさいよ!!」
「え?」
水をかけたであろう人たちはルーペンの姿を漸く確認できたのか気まずそうに慌ててその場を離れていった。謝罪の言葉は無いとは思っていたがこんなにもこの年頃の子供は幼稚だったろうか。
「……注意するのそこなんだ」
上を向いたまま腕を組んで考えていると横から意外そうな声がかかる。
ベンチに座ったままの彼は戸惑った表情を浮かべてこちらを見ていた。
「ごめんなさい、水はかからなかった?」
「え、あぁ、大丈夫……それより君こそ大丈夫?」
「このぐらいならなんとも」
ブレスレットについたボタンを押すと一瞬で水に濡れた身体が渇いていく。護身用に持っていた魔道具はこの五年の間に進化し、ブレスレット型にすることが出来たのだ。いくつか便利な魔法を入れてあるので今は絶賛大活躍となっている。
「……今みたいなのはよくあるの?」
「ん?あぁ、そうね……原因は分かっているのだけれどどうしようもないから、収まるのを待ってるの」
「どんな原因か聞いてもいい?」
「えーっと、その、多分私みたいなのがイケメンと仲がいいのが気にくわないんだと……」
「…………はい?」
「そんなことより……貴方、多分同級生よね?私はレイラーニ・スコット」
「あ、ボクはダニエル・ルーペン……スコットさんは隣のクラスだね」
「そうね、それにしても貴方がルーペンさんだったのね?学年一位の……入学式と雰囲気が違うから気づかなかったわ」
相手の自己紹介を聞いてどこかで聞いた名前だと思い返せば、入学式で新入生代表として挨拶をした子だった。ただその時は今みたいに眼鏡もかけていないし髪も綺麗な長髪だったはずだが、さっぱりとした短髪になっている。イメチェンでもしたのだろうか。
「あ……なんかあの姿は悪目立ちするというか……女の子がうるさくて」
「あー…………なるほど」
貴族の子女たちもむやみやたらに騒いでいるわけではない。将来の自分のパートナー探しというのも学校に入学した目的の一つでもあるからだ。そうなれば顔が良く何か取り柄のある相手に人気が集まるのは当然だろう。
改めてルーペンを見るが、今の姿でも十分イケメンなのが分かるはずなのにと不思議に思う。身近にあまりにも顔面偏差値の高い男たちがいて目が肥えている私でもイケメンだと気付くのに。
(あ……この世界眼鏡ってあんまり人気ないんだった)
魔法で視力を回復させることも出来る世界だ、わざわざ眼鏡をかけるというのはそれなりに理由があると捉えられる。秘かに眼鏡フェチだった私は幼い頃にその現状を知り少しがっかりしていたのは内緒の話だ。ついでにジルが眼鏡なのは回復魔法が自分の魔力と反発して効かなかったためである。
「眼鏡と髪型を変えたくらいで寄ってこなくなるなんて不思議なものね?貴方は何も変わっていないのに」
「……」
「似合ってるしいいと思うわ、あ、じゃあ巻き込んでごめんなさい」
「あ……」
授業五分前の鐘が鳴り踵を返す。元々図書館に行く予定だったのに何も出来ないまま休み時間が終わってしまった。許さないぞあの女子たち。持ち越された予定をいつこなそうか考えながら私は授業に間に合うように走り出した。
「なぁ、さっきの休み時間誰といたんだ?」
「え?見てたの?」
「偶然ですよ、図書館の帰りにご主人様と誰かがいるのが見えただけです」
今日の授業が終わると双子が話しかけてくる。
必要以上に目立ちたくはなし、友人も欲しいので校内にいる時は用がある時以外話しかけないように言ってあった。アデルにも同じように伝えてあるし、本当に用事があるとき以外話してないというのに何故こんなにやっかまれるのか。
「隣のクラスの人、足ひっかけちゃったから謝って少し話しただけだよ」
「ふぅん?」
「気を付けてくださいね、あの人意外と油断ならないですよ」
「そんな人には見えな……なんで誰だか知ってるの?」
「一応ライバル認定してますから」
(そうだった、ジルは学年二位の成績で入学したんだった)
双子でも成績には大きな差があり、魔法関連は僅差でギルが上だが他は全てジルの方が成績が良かった。ギルは私と同じくらいだろうか。中の中から上を行ったり来たりしている。
「っていうか質問したくせに全部知ってたじゃん」
「確認だ、確認」
何の確認なのかは分からないが双子は意味深に視線を合わせると、また家でな、と声をかけて去っていった。
お読みいただきありがとうございました。




