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二人目・三人目②

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・地名とは一切関係ありません



「……あの」


愛娘が無事だったことへの喜びと感謝を噛みしめていると控えめな声がかけられる。

レイラと一緒に部屋から出てきた子だ。薄い水色の髪が特徴的な恐らく男の子。

近くに寄っててしゃがむとその小さな肩を優しく叩いた。


「君がレイラを守ってくれていたんだね……ありがとう、感謝してもしきれないよ」

「……いや、危険な目にも合わせてしまったし……」

「それでも助けてくれただろう、一緒に行こう、君も休まないと」

「あ、あの!俺と同じような子どもが他にもいませんでしたか?弟が、ここに居るはずなんです!」

「うん?まだ見かけてないな……これから調査が入るからその後なら分かると思うし、この子頼めるかい?」

「はい」


後ろに控えていた騎士が男の子を持ち上げると、驚いた彼が一瞬暴れるもそんな体力も残っていないのかすぐに大人しくなった。一緒に妻とアデルバードの元へ戻ると二人とも泣きながらレイラに抱き着いていたのでそちらは任せて自分は事後処理へと回った。


地下には檻に閉じ込められていた子供たちが大勢おり、その中で扉が開いている檻を見つけきっとここから脱出したのだろうと思うと本当に胸が痛い。自分の領地でここまでの規模の奴隷商があったという怒りと気づけなかった後悔がふつふつと湧いてくる。しかし個人的な感情に振り回されてはいけないと一度呼吸をし自分を落ち着けると粛々と手続きを行った。まあ手が滑ってレイラを攫った犯人だけは私刑を与えてしまうかもしれないが、そのくらいの覚悟は相手もしているだろう。


囚われた子供たちに加え数人の大人も保護しているとその中に特徴的な髪色を見つけ声をかける。

見た目はそっくりなのに先程の男の子より大人し目で礼儀正しい子だった。目が悪いのかフラフラとして危なっかしいので抱えて皆のいるテントへと戻る。


「ジル!!」

「ギル兄さん……!!」


並ぶと本当にどちらがどちらか分からないほどそっくりな兄弟の微笑ましい再会を見守っているとレイラが目を覚ましたとの一報があった。すぐにそのテントに向かうと妻に抱えられたレイラと目が合う。先程よりも随分落ち着いているようだった。アデルバードは守れなかった悔しさなのか隅の方で控えめに事の顛末を見守っている。悔しさは分かるが今回ばかりはレイラの判断が正解だった。無事に戻れたという前提はあるが二人捕まるよりはマシだったろう。今回の件をきっかけにきっとこれからもっと強くなれるはずだ。


「レイラ、君と一緒に居た子は無事に弟に会えたよ」

「よかった……!!あの子……ギルにはたくさん助けてもらったんです、出来れば兄弟で一緒に過ごせる環境を用意して欲しいのですが……」

「勿論、他の子供たちも皆それぞれ居場所を見つけよう」


ほのぼのとした時間を過ごしていると外の見張りからあの兄弟が会いに来たと伝えられる。

レイラは二つ返事で招き入れると互いの無事を喜んでいた。


「お前のおかげで無事に弟に会うことが出来た……ありがとう」

「兄さんと一緒に助けてくれたと聞きました!ありがとうございます!」

「こちらこそ何回も助けてもらったし、ありがとうね」

「……それで、その……お前の本当の名前は何て言うんだ?」

「私?あ、そっか、レイラーニ・スコットっていうんだけ、ど……?」


レイラが名前を言うのと同時に魔法陣が兄弟の前に一瞬で展開された。

反射的に間に入ろうとするが、その魔法陣の内容に別の意味で慌て始める。


「ま、まてまてまて!!それって……!!」

「「ギルベルト、及びジルベルトはレイラーニ・スコットをただ一人の主と認めこの命が尽きるまで主に尽くすことを誓います」」

「奴隷契約だよね!!!?!?」


叫ぶのも虚しくあっという間に契約成立の証書がレイラの手に現れると兄弟は満足げに笑いあっていた。


「……え??」

「れ、レイラ!それは早く破棄しよう!それ持ってると色々と疑われるから!」

「で、ですよね!?どうすればいいんですか?!」

「破れば大丈夫!」


一体どこでこんな魔法を覚えたというのか。バレれば一発アウトの魔法だというのに。

その危なさはレイラも分かっているらしく慌てふためきながらもそれを破くが何故かすぐに復元し、また綺麗な一枚の紙になった。


「それは奴隷契約じゃないですよ」

「奴隷契約はダメだって流石に知ってる」


冷静に言葉を紡ぐ二人にその場にいる全員が注目する。

弟……ジルベルトは注目されるのが恥ずかしいのかギルベルトの後ろに隠れるように下がった。


「それはただの契約書だ、俺たちがレイラの助けになるという内容で、破棄することは出来ないようになっているだけ」

「破棄するには私たちがいなくなるしかないんです」

「お、重い……!」


契約書を持つ手が震えているレイラにどうしたものかと腕を組む。

彼らの契約書が雇用であればそこまで問題は無いのだが、無償でかつレイラのみが対象となっているとなると万が一は無いとは思いたいが使いようによって善にも悪にもなってしまう。


そしてもう一つの心配事はアデルバードとの関係。

親のフィルターがかかっているとは思うのだがアデルバードもこの双子……特に兄の方はレイラに好意を持っている。

アデルバードに関しては“将来結婚を考えているから兄妹にはしないで欲しい”と彼の処遇を決める時に言われていた。嬉しいような寂しいような感覚が交互に襲い一旦考えることを放棄することにした。帰って妻と一緒に考えよう、うん。


結局新しい家族が二人増え、色々な心情が渦巻いたまま帰路へとついた。


お読みいただきありがとうございました。

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