表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女にフラレて山を彷徨ってたら妖刀拾った  作者: 綺常 虎依(きつね こより)
二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/65

第62話 天雷

 身体が重い。異能で出来た無数の鎖が俺の身体を掴んでいる。


 それにきっとそれだけじゃない。身体の中の活力が吸い取られるような感覚や、意識が落ちそうになる感覚がある。これもきっと叛鬼衆の神術だ。


「どうした、来ないのか」


 挑発する。自分から動くよりも、相手に近づいて貰ったほうが早い。

 恐怖に顔を歪めた男が、俺に向かって刀を振るう。


「……」


 刀を弾き、男に一歩踏み込む。

 そして俺は刀を持つ男の右腕を掴んだ。


 骨が砕ける音と共に、男の悲鳴が響く。

 プレス機に粉砕されたように、男の腕は潰れた。


 これで刀は持てないはずだ。


 また、一人。


 俺が男から視線を外した瞬間、槍先が顔の横にあった。だが、分かっていた。顔を反らし、槍を避ける。突き刺そうとした女と目が合う。


 女は驚愕に包まれた顔をしていた。


 右手で槍を掴み、影静を女の太腿に突き刺す。

 女の絶叫。女から槍を奪い、壁へと投げる。衝撃と共に槍が壁へと突き刺さる。


 「あぁぁぁぁぁぁ」


 女は絶望に歪んだ表情で、俺を見る。

 

「代われ!」


 女を守るよう別の男が刀を振るう。

 刀は炎を纏い、俺に迫る。


 炎を纏う刀を、右の素手で掴む。熱さは感じなかった。


「やめ」


 ”力”を込める。バギィと鈍い音と共に刃が折れる。

 俺は影静の峰を男の腹部に叩きつけた。男の身体がくの字に曲がる。

 そして、男の腕を掴み、そのまま壁に叩きつけた。


 息をする間もなく槍が、刀が、鎌が、俺に襲い掛かる。ほぼ、同時の攻撃。


 全部、避けるのは無理だ。

 腰を下げ、頭を傾ける。そして影静を振るった。


 悪いが腕は貰う。


 男たちの武器を持っていた腕が宙に舞った。それと同時に俺も顔の横が千切れた感覚があった。

 悲鳴と血が溢れる。右手で、顔の左側を触ると耳が欠けていることに気づいた。


 痛みは感じない。


「っ」


 突如、俺の足もとが暗くなる。視線を上に向けると巨大な”何か”があった。

 俺はすでに半歩下げていた。衝撃と共に目の前にデカい盾のような岩が落ちる。


 思考する間もなく、右左、後ろにも、連続して”盾のような”岩が落とされる。

 神術だ。盾や、岩などを出現させる類のモノだろう。


 それで閉じ込められた。


「影静、”力”を」

「はい」


 影静から”力”を引き出し意識して身体に回す。

 そしてそのまま俺は右腕を振るった。


 衝撃音と共に岩が破壊される。


 そして、岩の前にいた男と目があった。

 その手には槍。俺はすでに男の間合いにいた。


「や——」男が何かを言い終わる前に男の腕を掴む。そして外側に捻った。

 絶叫が響く。男が痛みで床でのたうち回る。


 俺は転がった男を蹴り飛ばす。

 重い音と共に、男の体が壁に飛ぶ。 


「……」


 神術によって縛られているから、いつもの”力”が出せない。

 だが、それで十分だった。


 むしろ丁度いい。


 もっと、もっとだ。

 痛みをこいつらの記憶に刻もう。


 殺しはしない。腐っても朱里の仲間であり、血の繋がった家族がいる。

 だが、殺す以外のことはすべてやる。


 こいつらが二度と影静を奪おうと、壊そうとしないように。

 

 また一人、また一人と。骨を砕き、肉を潰し、壁へ叩きつける。

 

 血で、俺の服が染まっていく。

 自分の血か奴等の血なのかも分からない。


「結構、減ったな」


 どのくらいの時間がたっただろうか。

 長い時間にも感じるし、ほんの少しだったような気もする。


 これほど、人を傷つけたのは初めでだ。


「……」


 まだ立っている叛鬼師は、だいぶ少なくなっていた。

 三分の二以上は行動不能になっているだろう。床でのたうち回る者や、壁に叩きつけられ動かない者。


 もう積極的に攻撃してくる奴はいない。目を見れば、既に戦意は失いかけている。恐怖に飲まれているのだ。


「ちょっとは楽になったか」

 

 叛鬼師の数が減るにつれ、神術で縛られていた俺の身体はだいぶ、軽くなっていた。もうそろそろだ。終わりのときは近い。


「これで——」


 そのときだった。


 急に瞳の奥が痛くなった。


”れん——


 影静の声。

 だが、その声よりも速く、”何か”の衝撃が俺を襲った。

 

 




 身体の半分が熱い。

 感覚が鈍い。


 多量の血が床に零れ落ちる。

 血。誰の。


 ゆっくり立ち上がろうとして、バランスを崩す。

 そこで気づいた。


 俺の右肩から下全てが無いことに。

 流れ出る血は全て俺の物だった。


「……っ」


 意識が朦朧とする。


 視界の隅に男が立っていた。


 朱里の祖父、御堂十二郎。

 先程外まで殴り飛ばしたはずの男が、立っていた。


 男が意識を取り戻していたことを薄っすらと理解した。

  








 影静と朱里の声が遠くから聞こえる。

 だが、反応できない。言葉が喋れない。


 ああ、熱い。

 まるで片腕をマグマにでも突っ込んでいる気分だ。


「ぁ」


 あれ。

 朦朧とする意識の中で奇妙な感覚があった。


 何か変だ。


 何かが出てくる。



 抑えつけていた別の”何か”が力を(ほど)くのを感じる。


 



 

 俺の意識は奥底から出てきた、それに飲み込まれた。














 



 御堂十二郎は先程、自分を殴り飛ばした男を見た。

 男の右肩から下、右腕全てが消し飛び、膨大な血が床に流れていた。

 

 頭部を狙ったつもりだったが、外したようだ。


 十二郎は周りを見渡す。何十人もの叛鬼師が、床に転がっていた。


「好き放題やってくれる」


 たった一人の男に、ここまでされたとは。

 鍛え直さねばならん。部下も、自分も。


 ”数年”任務についていなかっただけでこれだ。

 身体が鈍っている。

 

 油断であろう。

 だから初めの攻撃に反応できず意識を失ってしまった。

 

 情けない。降臨者ともあろう者が。

 何十年”鬼”と戦っていたのだ、お前は。

 

「……」


 武御雷(タケミカヅチ)


 それが御堂十二郎の神術の名だった。

 雷を司る最も強きの神。


 神と通じてから、どんな強大な”鬼”ですら十二郎の前に立ち続けることはなかった。


 身体に青白い雷が帯びる。

 甲高い放電音が修練場に響く。

 

 男は座ったまま俯いて、その表情は見えない。

 

 まだ、生きている。


 孫の悲痛な叫びが聞こえる。この男は孫と通じていたらしい。

 好いた男が死ぬ場面を見るのは辛かろう。


 だが、あの妖刀とこの男の存在を許してはならない。

 あれは世界を壊すモノだ。


 もうトドメを刺そう。孫のためにも速く終わらせたほうが良い。


 十二郎は手の先に神の”力”を集める。

 膨大な雷が指先で迸り、”何か”を形作る。

 

 それは剣の形をした天雷そのものだった。


 触れたもの全てを消失させる神の怒り。

 これで終わらせる。


「ハハハ」


 突然、笑い声が聞こえた。

 見ると死にかけのはずの男が笑っていた。


 何を笑っている。

 死への恐怖で狂ったか。


「なんか……おかしくなってきた」


 男は左手に刀を持ったまま、ゆっくりと立ち上が——






 衝撃が十二郎を襲った。

 壁に衝突する。


「カハっ」血を吐く。


 反射すら神の”力”によって強化しているはずなのに、ほとんど反応できなかった。

 薄っすらと殴り飛ばされたことを理解する。


 危なかった。

 神の”力”を、全身に流し続けてなければ死んでいた。


 何だ、今のは。

 先程のものとは比べ物にならない。


「何を……」


 瓦礫をどかし、立ち上がる。


「まだ生きてる」それは嬉しそうな声色だった。

 視線の先を見ると、男が狂ったような笑みを浮かべながら十二郎を見ていた。


 男の姿に十二郎は目を見開く。

 

「化物が」


 先程、消し飛ばしたはずの男の右腕が再生していた。そしてそれは人の腕ではなかった。

 金属のような光沢を放つ紅い甲殻、肘からは赤黒い牙のような突起。その手は膨れ上がっており鉤爪が生えている。


 男の肩から下は、明らかに異形のモノであった。




お読みいただきありがとうございます。面白い、続きが気になると思ってくれたら★評価、ブックマーク、感想良ければお願いします! 作者の執筆意欲の源なので!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
正義ぶっても単なる集団強盗なんだよなあ 国と繋がってるなら一般人が圧倒的な武力握ってるのを危険視するのはわかるが…… それにしたってまずは警察が銃刀法違の現行犯辺りで引っ張るのが限界では?
この下らない争いは誰かが死なないと止まれないのか……
更新お疲れ様です。 再生した謎アームの正体が、本来なら一般人だったはず(本人の血の滲む努力は一旦おいといて)の恋詩くんが影静を振るえてた理由…ってことですかね? 最初から内に眠ってたのか、はたまた契…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ