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俺は女騎士の専属ヒーラーのはずなのに…なぜか“世界の破壊システム”の理不尽も治療する  作者: 積と和〝
番外編

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番外編2 朝の空気と、それぞれの距離

朝。いつも通りのはずだった。


鳥の声。やわらかい日差し。

村のゆっくりした時間。

……のはずなのに。


「……なんか変じゃない?」

ジャスミーの一言で、全部が崩れた。


食卓。パンとスープ。

いつもと同じ朝食。


でも違う。

明らかに違う。


俺は無言でスープを飲む。

セローナも無言でパンをかじる。


視線が、一度も合わない。

「いや、絶対なんかあったでしょ」


ジャスミーがじっと見てくる。


「何もない」

セローナが即答する。


「いや今の即答が怪しいって!」

ぐいっと身を乗り出してくる。


「ねぇジネンくん!」


「え、あ、はい」


「なんかあったでしょ!?」

答えに詰まる。

というか、答えられるわけがない。


その瞬間。テーブルの下で、軽く足を踏まれる。

(言うな、ってことか)


「……特には」


ジャスミーが目を細める。

「ふーん……」

明らかに疑っている。


そのとき。

「結論から言う」

サンガーデンが静かに口を開いた。

全員の視線がそちらに向く。

「二人は昨夜、関係性が一段階進んだ」

空気が止まる。


「……は?」

ジャスミーが固まる。


俺も固まる。


セローナは――

「なっ……!?」

珍しく、完全に動揺していた。

「な、なぜ分かる……!」


サンガーデンは淡々としている。

「視線」

「距離感」

「呼吸のタイミング」

「明確に変化している」


ジャスミーがゆっくりとこちらを見る。

「……マジで?」

言い逃れは不可能だった。


セローナが観念したように息を吐く。

「……ああ」

短い肯定。

「私からだ」

その一言で、全部伝わる。


ジャスミーが固まる。

「え、ちょ、待って」

「え、え、え?」

頭が追いついていない。

「キ、キスとか……?」


セローナが目を逸らす。

「……まあ」

確定だった。

「うっそでしょおおおおお!?」

ジャスミーが頭を抱える。

「いやいやいや!展開早くない!?ていうかなんで私寝てる間にそんなイベント進んでんの!?」

完全に混乱している。

サンガーデンは淡々とスープを飲む。

「合理的だ」


「は!?どこが!?」


「最も戦闘において信頼関係が深い二人だ」

「その延長にある関係としては自然」


ジャスミーがぐぬぬと唸る。

「ぐっ……否定できないのが腹立つ……」


セローナは腕を組む。

「問題あるか」


「いや、ないけど……ないけどさぁ……!」

ジャスミーがこちらを見る。

「ジネンくんは!?いいの!?」


「え、あ……はい」

シンプルに答えるしかなかった。


ジャスミーが天井を見る。

「はぁ〜〜〜……そっかぁ……」

少しだけ、笑う。

「……まあ、いっか」

その笑顔は、少しだけ寂しそうだった。


そのとき。

家の外から声がする。

「おはよー!」

リーナだった。

元気な声。

いつも通りの笑顔。

「みんな、朝ごは――」

言葉が、止まる。視線が動く。


俺とセローナ。

その距離。空気。

一瞬で、理解する。

「……あ」

小さな声。何も言わない。

でも、分かる。

リーナは、気づいた。

ほんの少しだけ、目が揺れる。

でもすぐに、笑う。

「そっか」

明るく。いつも通りに。

「……よかったね」

その言葉は、ちゃんと祝福だった。

でも。ほんの少しだけ寂しさが混じっていた。


俺は何も言えない。

セローナも、何も言わない。

ただ――リーナは一歩引く。

「じゃあ、またあとでね!」

笑って、手を振って、そのまま、去っていく。


静寂。

ジャスミーが小さく呟く。

「……強いなぁ、あの子」


サンガーデンが頷く。

「理解している」


セローナは、何も言わない。

ただ、少しだけ拳を握る。

俺は、その背中を見る。

(守るっていうのは、こういうことも含めて、なんだな)

朝の空気は、少しだけ変わっていた。


でも、それでも、進んでいく。

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