表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は女騎士の専属ヒーラーのはずなのに…なぜか“世界の破壊システム”の理不尽も治療する  作者: 積と和〝
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
35/39

番外編 隣に立つ理由、その先に

村の夜は、静かだった。

戦いが終わってから数日。

世界は、何事もなかったかのように回り続けている。

風が吹く。虫の声がする。人が眠る。

――守ったはずの日


俺は、眠れなかった。

理由は分かっている。

終わったからだ。

戦いも、選択も、すべて。

だからこそ、今さらになって――色々と考えてしまう。

気づけば、村の外に来ていた。

あの丘。

何度か立った場所。

「……やっぱり来たか」

声がする。

振り向かなくても分かる。

セローナが、そこにいた。

「眠れなかったんですか」

「お前もだろ」

間髪入れずに返された。


静かにセローナの隣に立つ。

距離は、いつも通り。

近すぎず、遠すぎない。

しばらく、何も言わない。

ただ風が吹く。

「終わったな」

セローナが言う。


「……はい」


「全部」


「そうですね」

また沈黙。

けれど、嫌じゃない。


セローナが小さく息を吐く。

「なあ」

珍しく、少しだけ迷うような声。

「お前、これからどうする」


「どう、とは?」


「旅だ、世界だ……そう全部だ」

俺は少し考える。答えは決まっている。

「続けますよ。人を助けて、できることをして。この世界で、生きていこうと思います」

セローナは黙って聞いている。

「……そうか」

短く、それだけ。

でも、その声は少しだけ柔らかかった。

「じゃあ」

一歩、近づく。

「私はどうなる」

その言葉に、少しだけ心臓が跳ねる。

「どうって……」

言葉に詰まる。

セローナはまっすぐ見てくる。

逃げ場はない。


「お前は、私をどうする」

冗談じゃない。試しでもない。

“選ばせている”。

俺は息を吐く。

「……一緒に来てほしいです」

セローナの目が、わずかに細くなる。

「仲間として、か」

少し緊張したような問いかけ。


だが――「違います」

言葉は、思ったよりすぐ出た。

「それ以上です」


風が止まる。

セローナが、ほんの少しだけ視線を逸らす。

初めて見る仕草だった。

「……そうか」

小さく呟く。

そして一歩、近づく。

距離が、ゼロになる。

近い。息がかかる距離。

「なら」

低い声。

「逃げるなよ」

次の瞬間。

唇が触れた。

一瞬。本当に、一瞬だけ。

すぐに離れる。

セローナは背を向ける。

「……これで分かっただろ」

声が少しだけ乱れている。

「私は、お前の隣に立つ。仲間としてじゃない」

 一拍。

「それ以上でだ」

振り返らない。

でも、その背中ははっきりしている。

俺は少し遅れて、言葉を返す。

「……はい」

それしか言えなかった。

でも、それで十分だった。


セローナが歩き出す。

「戻るぞ。明日から、また動く」

振り返らないまま。

でも――ほんの少しだけ、耳が赤かった。

俺はその後ろを追う。

距離は、いつもと同じ。

でもきっと。

もう、これまでとは少しだけ違う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ