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俺は女騎士の専属ヒーラーのはずなのに…なぜか“世界の破壊システム”の理不尽も治療する  作者: 積と和〝
第一章 異世界の村

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第3話 ドジっ子魔法使い、爆発する

――村に戻った俺は、早速“現実”を思い知らされた。


「ジネン、次はこっちだ!」


「いや、こっちはもう治したんですけど……!」


「まだ三人残ってる!」

セローナの指示は容赦ない。

さっきまで敵意丸出しだったのが嘘みたいに、今は完全に“戦力扱い”されている。


治しては次へ、治しては次へ。

異世界スローライフとは何だったのか。

(これ、完全に医療現場だろ……)

そんなことを思った矢先だった。


――ドンッ!!

村の外れで、派手な爆発音が響いた。


「な、なんだ今の……!」

セローナの顔つきが一気に変わる。


「魔力反応……魔法か?」


「魔法?」

俺が聞き返す間もなく、セローナは駆け出していた。

仕方なく俺も後を追う。



現場に着いた瞬間、俺は言葉を失った。

地面が黒く焦げている。

木はなぎ倒され、煙が立ち上っている。


そしてその中心に――

「……や、やば……やっちゃったぁ……」

フードを被った少女が、しゃがみ込んでいた。


年は俺より5歳くらい下か。

ただし、胸元だけはやけに主張が強い。

(そこはどうでもいい)

問題はそこじゃない。


「お前、何をした」

セローナの声が冷たい。


「え、えっと、その……火の玉をちょっと……練習で……」


「練習で村を吹き飛ばすな」


「ご、ごめんなさいぃぃ……!」

即土下座だった。

潔すぎて逆に怖い。


「……被害は?」

俺が周囲を確認すると、倒れている人が数人。


ーーー


「……お父さん! お父さん!!」

少女の横で、別の少女が泣き叫んでいた。

村娘――リーナ。


その先には、倒れた中年男性。

胸元から血が流れている。

明らかに重症だった。


「魔法に巻き込まれたのか……」

セローナの声が低くなる。


周囲の空気が一気に重くなった。

このままでは、助からない。


俺は迷わなかった。

「ヒール」

手をかざす。

光が広がる。


まずリーナの父親。

内臓の損傷、出血――かなり危険な状態だ。


だが、光が触れた瞬間。

傷が、確実に塞がっていく。


「……っ!」

リーナが息を呑む。


そして次に、リーナ自身。

爆風で打撲と火傷を負っていた。


「大丈夫、すぐ終わる」

光。痛みが消えていく。

呼吸が整っていく。


「……お父さん……?」

かすれた声。


父親の指が、わずかに動いた。

「……リーナ……?」


「お父さん!!」

リーナが泣きながら抱きつく。


生きている。間に合った。


周囲がざわつく。

「治った……?」

「本当に……?」


その中で、リーナはゆっくりとこちらを見上げた。

涙で濡れた顔。

でもその目は、はっきりと俺を見ていた。


「……ありがとう、ございます」

小さな声。震えている。


それでも――まっすぐだった。

「お父さんを……助けてくれて……」


「いや、俺はただ……」

言いかけて、やめた。

説明する言葉が見つからない。


そのときだった。

リーナが一歩近づいてくる。

そして、小さく呟いた。

「……好きです」


「え?」

一瞬、空気が止まる。


「えっ!?」

セローナが目を細める。


リーナは真っ赤になりながらも続けた。

「命を助けてくれた人を、好きになっちゃいけない理由なんて、ないです……よね?」

それは恋というより、“救われた人間の純粋な感情”だった。


まだ幼い、でも確かな想い。


ーーー


「お前、名前は」

セローナが魔法少女を問い詰める。


「ジャスミーです……魔法学院を……中退したばっかりで……」


「理由は」


「爆発しすぎて……」


「だろうな」

間髪の入れずだった。

俺も納得してしまった。



「……全部、治った」

最後の患者を癒し終えると、村人たちから安堵の声が上がった。

「助かった……」

「ありがとう……!」


ジャスミーはそれを見て、ぽかんとしていた。

「……あたしの魔法より、すごい」

ぽつりと呟く。


「当たり前だ。お前は危険だ」

セローナの言葉は容赦ない。


「うぅ……」

肩を落とすジャスミー。

正直、ちょっとかわいそうだ。


「まあでも……」

俺は少し考えてから口を開いた。

「ちゃんと制御できれば、すごい力だと思いますよ」


「え……?」

ジャスミーが顔を上げる。


「さっきの爆発、威力はすごかったですし。ただ、範囲と制御が問題なだけで」


「……それって」


「訓練すれば、普通に戦力になるってことです」


その瞬間、ジャスミーの目がきらっと光った。

「ほ、ほんとに……?」


「ほんとです」


「じゃ、じゃああたし、役に立てるの……?」


「まあ、ちゃんとやれば」


「やる! やるやるやる!!」

急に元気になった彼女は、弾むようにその場でぴょんぴょん跳ねる。

そのたびに胸元がやわらかく揺れて、服の上からでも動きのリズムが伝わってくる。


切り替え早いなこの子。



その夜。

村の宿の片隅で、俺は三人と向かい合っていた。


セローナ、ジャスミー、そして俺。

なんかもう、成り行きで“固定メンバー感”が出ている。


「ジネン」

セローナが真面目な顔で言う。

「お前の治癒能力は異常だ。戦力としても価値が高い」


「……それ褒めてます?」


「褒めている」

即答過ぎてちょっと嬉しい。


「ジャスミーは魔法の制御次第で戦力になる」


「うん……がんばる」

珍しく素直だ。

さっきまでのドジっ子感は少し影を潜めている。


「そして私は前衛だ」

セローナは剣を軽く握る。


「この三人なら……」

少し間を置いて。

「悪くないパーティになる」


その言葉に、なぜか胸が少しだけ熱くなった。

前世では絶対に味わえなかった感覚だ。


誰かと一緒に何かをやる。

頼られる。

頼る。


(……これ、いいな)

静かにそう思った。


そのときだった。

宿の外がざわつく。


「……何か来る」

セローナが即座に立ち上がる。

ジャスミーの顔が青くなる。

「え、またあたし何かした……?」


「違う」

俺は窓の外を見る。


暗闇の中で――

何かが動いていた。

明らかに“人ではない何か”が。


「……魔獣、か」

セローナが剣を抜く。

ジャスミーが震えながら杖を握る。

俺は一歩前に出る。


(治せる。でも、それだけじゃ足りないかもしれない)

初めての“戦い”。

まだ何も知らない異世界で、俺たちの最初の壁が、今来ている。

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