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俺は女騎士の専属ヒーラーのはずなのに…なぜか“世界の破壊システム”の理不尽も治療する  作者: 積と和〝
第三章 最終決戦

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第5話 崩壊の外側で残る日常と、“村に帰る理由”

女神機構から戻った夜。

世界は何事もなかったように動いていた。

鳥は鳴き、風は吹き、人は笑う。

だが俺たちには、それがもう少しだけ“薄く”見えていた。


「……普通って、なんだっけ」

ジャスミーがぽつりと呟く。


セローナは剣を磨いている。

いつも通りの動作。

だが手元だけが妙に静かだった。

「考えるな。やるだけだ」

それは彼女なりの整理だった。


サンガーデンは地図を閉じる。

「次はどこへ行く」

その問いは、もう“旅程”ではない。

戦略でもない。

生き方の選択だった。


俺は少しだけ考える。

聖・女神教本部は一旦動きが止まっている。

神心教も監視に回った。

そして――世界はまだ“崩壊しきっていない”。


「一度戻ろうと思う」

俺の言葉に、二人が反応する。


「戻る?」

ジャスミーが目を丸くする。


「最初の村だ」

セローナはすぐに理解する。

「治癒を始めた場所か」


「はい」

理由は単純だった。

この世界の“構造”を知ってしまった今だからこそ、一度、原点を見ておきたい。

何も知らなかった頃の場所を。


サンガーデンが静かに言う。

「合理的ではないな」


「でも必要だと思う」

俺はそう答える。


その夜、移動を決める。

聖・女神教も神心教も、すぐには動かない。

“観測対象”はまだ放置されている。


数日後。リエル王国の田舎。

最初に転移してきた村が見えてくる。


村は変わっていなかった。

小さく、静かで、どこか温かい。

あの頃と同じ空気。


だが――一つだけ違う。

村の入り口で、誰かが待っていた。


「……やっぱり来たんだね」

リーナだった。あの村娘。少し大人びている。

でも目だけは変わっていない。

まっすぐで、少しだけ不安げで、それでも強い。


「噂で聞いたよ、街で大きなことしてるって」

リーナは少しだけ笑う。


ジャスミーが小声で言う。

「この子……覚えてるんだ」


サンガーデンも静かに見ている。


リーナは一歩近づく。

「ねぇ、また誰か、助けてきたの?」


俺は少しだけ言葉に詰まる。

「……結果的には」


リーナは小さく笑う。

「そっか、なら、変わってないね」

その一言が、妙に重かった。


リーナは続ける。

「村、みんな元気だよ。お父さんもね」


その言葉で思い出す。

あの時救った命。

小さな治癒。

ただのスキルだった頃の自分。


「ありがとう」

リーナは静かに言う。

「あなたがいなかったら、今ここにいない人がたくさんいる」


ジャスミーが少し目を伏せる。

セローナは何も言わない。

サンガーデンもただ見ている。


リーナは続ける。

「ねぇ、ジネンさん。また、戻ってきてくれる?」


一瞬だけ、空気が止まる。

この世界の“中心”と“日常”が、重なる瞬間。


俺は答えた。

「……戻ってきます。ちゃんと」


リーナは少し安心したように笑う。

「じゃあ、待ってるね」


その夜。村の外れ。

静かな丘の上。

ジャスミーが空を見上げる。

「ねぇ、こういうのも全部、壊れるのかな」


セローナは短く言う。

「壊すかどうかじゃない。守れるかどうかだ」


サンガーデンは静かに言う。

「そして、それを選べるかどうかだ」


俺は空を見る。この世界はシステムでできている。

女神機構。初期化。観測者。


でもこの村は違う。

ただ“生きているだけ”だ。


俺は小さく言う。

「……全部は救えないかもしれない。でも」

「選んでいくしかない」

その言葉を誰も否定しない。


遠く、空のどこかで、また“観測”が動く気配がした。

だが今だけは、村の夜は静かだった。

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