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俺は女騎士の専属ヒーラーのはずなのに…なぜか“世界の破壊システム”の理不尽も治療する  作者: 積と和〝
第二章 旅立ち

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第10話 最終段階と、“仲間の選択”

ラグナ商都の夜は、もう“夜”ではなかった。

空は割れている。

街は沈みかけている。

現実は、ゆっくりと崩れていく途中だった。


「……もう時間がないな」

セローナの声は静かだった。恐怖ではない。覚悟の音だった。


都市の中央広場。

そこに“それ”は立っていた。

聖・女神教、上位司祭。

だが今までの個体とは違う。

白と黒ではない。

“金色”。

存在そのものが規格外だった。


「領域最終初期化開始」

声は柔らかい。

だが、その内容は冷酷だった。

「この都市は役割を終えた」


ジャスミーが歯を食いしばる。

「役割って何よ……人の住んでる街だよ!」

火球が走る、だが――それは消える。


「無駄だ」

上位司祭は一歩も動かない。

「この空間は既に“保存解除状態”」

「干渉は許可されていない」


サンガーデンが矢を放つ。

しかし矢は“途中で止まる”。

空中で静止し、そのまま消える。

「時間の外か……」


セローナが前に出た。

「なら、時間ごと斬るだけだ」

一閃。だが――それは届かない。

剣が“存在しない距離”で止められる。


上位司祭が視線を向ける。

「興味深い」

「未登録戦闘個体」


その瞬間だった。

俺の中で、何かが“完全に開く”。

(見える)

この世界の“層”が。

都市の上にある層。

さらにその上。

そして――“保存そのもの”。


「……そうか」

俺は小さく呟く。

「ここは、層の一部じゃない。“保存データ”だ」


セローナが振り向く。

「ジネン?」


俺は一歩前に出る。

「ヒール」

しかし今までと違う。

“治す”のではない。

“保存構造そのものを書き換える”。


光が広がる。

都市の“崩壊”が一瞬止まる。

いや――止まるのではない。

“巻き戻る方向を変える”。


「……干渉確認」

上位司祭の声が初めて揺れる。

「これは……想定外の層干渉」


セローナが動く。

「今だ!!」

剣が空間の“固定点”を断つ。


ジャスミーの魔法が爆ぜる。

サンガーデンの矢が“世界の座標”を固定する。

「今なら通る!」


上位司祭が後退する。

「再定義領域に干渉確認」

「……危険度更新」

だがその声は、どこか“焦り”を含んでいた。


俺は理解する。

(これは勝っているんじゃない)

(“上書きしている”だけだ)


セローナが叫ぶ。

「ジネン! どこまでいける!」


俺は空を見上げる。

崩れる都市、止まる時間、そして歪む世界。


「……たぶん」

俺は静かに言う。

「ここまでです」


その瞬間、光が最大化する。

都市の“崩壊保存状態”が解除される。

同時に――崩壊も、固定も、すべてが“再定義”される。

上位司祭の姿が揺れる。

「……領域消失」

「初期化失敗」

その言葉を残して、消える。


都市は完全には壊れていない。

だが、“別の形”になっている。


セローナが息を吐く。

「終わったのか……?」


ジャスミーは座り込む。

「終わったっていうか……何が起きたのか分かんないんだけど……」


サンガーデンは俺をみて言った。

「お前は今、“都市の層”を再定義した」

「もはや治癒ではない。世界操作だ」


その夜。崩れかけた都市の上で俺たちは立っていた。


聖・女神教本部。

「第十段階失敗」

「対象ジネン、層干渉能力確定」

「……最終計画へ移行」


神心教中枢。

「観測不能領域発生」

「世界保存構造の再構築確認」

「最終観測者、直接介入要請」


世界は、もう“個人の物語”ではなくなった。

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