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俺は女騎士の専属ヒーラーのはずなのに…なぜか“世界の破壊システム”の理不尽も治療する  作者: 積と和〝
第二章 旅立ち

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第7話 最終観測者と、世界の真実への入口

神心教の男が去った夜、ラグナ商都は変わらず眠らない街のままだった。

だがその“変わらなさ”が、逆に異様だった。

何か巨大なものの手のひらの上で、すべてが予定通り動いているような感覚。


「……気味が悪いな」

セローナが窓の外を見ながら言う。

その声はいつもより低かった。


宿の部屋には、重い沈黙が落ちていた。

ジャスミーは椅子に座ったまま、ぼんやり天井を見ている。

「最終観測者ってさ……なんなの」

ぽつりと漏れる声。

「名前からして嫌な予感しかしないんだけど」


サンガーデンが静かに口を開く。

「神心教の上位概念だ。“世界そのものを観測する存在”」


ジャスミーが眉をひそめる。

「神より上ってこと?」


「神という概念があるなら、だがな」


そのときだった。

俺の頭に、あの男の言葉が残響のように浮かぶ。

――“設計図”

――“外部変数”

――“再定義”

(この世界は、誰かが作った前提なのか?)

その考えが、じわりと重くなる。


「なぁ」

セローナがこちらを見る。

「お前はどう思う」


「何をですか」


「お前の存在だ」

空気が一瞬止まる。

ジャスミーも視線を向ける。

サンガーデンは黙ったままこちらを見る。


セローナは続ける。

「神心教は“設計外”と言った」

「聖・女神教は“回収対象”と言った」

「じゃあ、お前は何だ」


俺は少しだけ考える。

そして、ゆっくり口を開く。

「……元はただの社畜でしたよ」


ジャスミーが小さく吹き出す。

「いや急に現実的すぎるでしょそれ」

だが笑いはすぐ消える。


俺は続ける。

「ただ、こっちに来てから思うんです」

「治すっていうのは、戻すことじゃない。“本来の形に近づけること”だって」


サンガーデンが静かに頷く。

「それが“再定義”か」


「たぶん」


セローナが言う。

「なら、お前は何のためにここに来た」


その問いは、妙に重かった。

俺は言葉を探す。

そして――ふと気づく。

(なんで俺なんだ?)

(なんで“社畜の俺”が異世界に?)


そのときだった。

窓の外が一瞬だけ“揺れた”。

空間が歪む。

「来るぞ!!」

セローナが即座に立つ。


空間に裂け目。

だが今度は違う。

聖・女神教でも、神心教でもない。

“もっと上”の圧。


裂け目の中から、声がした。

「観測対象・接続確認」

機械的で、しかし圧倒的に“上位”の声。


サンガーデンが息を呑む。

「……これは、神心教より上だ」


声は続く。

「最終観測者承認」

「変数ジネン、記録領域へアクセス」

空気が凍る。ジャスミーが震える。

「なにそれ……何が来てるの……」


裂け目の奥。

一瞬だけ見えた。

“世界全体の俯瞰図”のようなもの。

人間でも神でもない。

ただの“観測”。


声が言う。

「確認。変数は転移によって発生」

「外部世界由来の干渉体」


セローナが剣を抜く。

「ふざけるな。ここは現実だ」


だが声は淡々と続く。

「現実定義は上位層に依存」

「あなた方の認識は下位構造」


俺の中に“理解”が落ちる。

(この世界は、階層構造だ)

(そして俺は、その外側から落ちてきた)


「ジネン」

サンガーデンが低く言う。

「お前は“外”を見ている」


裂け目の声が最後に言う。

「最終観測対象として登録」

「再定義プロトコル開始候補」


そして消える。

部屋には、ただ呼吸だけが残る。


セローナが剣を下ろす。

「……意味が分からん」


ジャスミーが頭を抱える。

「世界観が一気にラスボスすぎるんだけど」


サンガーデンは静かに言う。

「一つだけ確実なことがある。お前は“この世界の内部存在ではない可能性が高い”」


俺は窓の外を見る。

都市はなにも変わらない。変わっていない。

しかし、もう同じものには見えない。


その夜。

聖・女神教本部。

「最終観測者接触確認」

「対象ジネン、上位層干渉に移行」

「計画最終段階前倒し」


神心教中枢。

「世界階層構造へのアクセス発生」

「例外個体の上位接続を確認」

「管理限界突破」


静かに。

世界は、ひとつ上の段階へ進み始める。

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