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俺は女騎士の専属ヒーラーのはずなのに…なぜか“世界の破壊システム”の理不尽も治療する  作者: 積と和〝
第二章 旅立ち

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第5話 都市崩壊の兆候と、“聖・女神教上位個体”の影

北区の一件から一日。

都市は表面上、何も変わっていなかった。

商人は叫び、馬車は走り、人は笑う。


だが――そのすべてが、どこか薄い。

膜一枚隔てたような、現実感のなさがある。


「……嫌な静けさだな」

セローナが街を見渡しながら呟く。


「嵐の前じゃなくて、“嵐の中に入ってる”感じだ」


その日の昼。

異変は“音”として始まった。

鐘ではない。悲鳴でもない。

ただ、空間がきしむような低い振動。


「……来る」

サンガーデンの声が鋭くなる。


次の瞬間だった。

空間が“裂けた”。

路地の奥。光が歪み、人の形が現れる。

だがそれは、もう人ではなかった。

白と黒の法衣。

しかし顔は半分が“仮面化”している。


異常に整った魔力圧。

「上位個体……」

サンガーデンが呟く。


「観測対象確認」

その声は機械的だった。

だが以前の個体とは違う。

“意思”がある。

「治癒干渉体・ジネン」

「回収優先度:最大」


ジャスミーが息を呑む。

「なにあれ……人間じゃない……」


セローナが一歩前に出る。

「やっと本体か」


「本体ではない」

即答だった。

「我々は“処理層”」


空気が重くなる。

周囲の人間が次々と膝をつく。

呼吸が浅くなる。

“存在圧”だけで押し潰している。


「くっ……!」

ジャスミーが耐える。


サンガーデンが矢を構える。

「危険度が違う、今までのとは別物だ」

その言葉は冷たい現実だった。


俺は一歩前に出る。

その瞬間、違和感に気づく。

(圧が“線”じゃない。面でもない)

(これは――“空間そのもの”だ)


「ヒール」

試すように放つ。光が届く。

だが――途中で“消える”。


「……吸われてる?」

初めての現象だった。


上位個体が動く。


一歩。その一歩で地面が歪む。

「対象確定」

「処理開始」


セローナが叫ぶ。

「散開!」

だが遅い。一瞬で間合いが詰まる。


セローナの剣が受ける。

だが――

弾けない。

「っ……重い!」

“質量”ではない。概念的な圧だ。


ジャスミーの魔法が放たれる。

だが発動しない。

「えっ!? なんで出ないの!?」


「魔力回路が“固定”されてる!」

サンガーデンの声。


俺は気づく。

(これは戦闘じゃない)

(“上書き”だ)

この存在は、周囲のルールを変えている。


「なら……」

俺は手をかざす。今までとは違う感覚。

“治す”ではなく――

「戻す」


「ヒール!!」

光が空間に広がる。

歪んだ“ルール”に触れる。


一瞬。空気が“正常に戻る”。

「……っ」

上位個体の動きが止まる。

「干渉……確認」

初めて声に“揺れ”が出る。


セローナがその瞬間を逃さない。

「今だ!!」

一閃。剣が“概念の隙間”を切り裂く。


ジャスミーの魔法が通る。


サンガーデンの矢が刺さる。

「通った……!」

ジャスミーが驚く。


上位個体は後退する。

「対象再評価」

「危険度:規格外へ修正」

その言葉だけ残して消えた。


静寂。だが勝利ではない。

セローナが息を吐く。

「……格が違うな」


ジャスミーは膝をつく。

「今の……無理ゲーすぎる……」


サンガーデンは俺を見る。

「お前の能力はさらに変わった。治癒ではない、“世界修復”に近い」


その夜。宿の中。

誰も眠れない。

窓の外には、静かすぎる都市。


聖・女神教本部。

「上位個体接触失敗」

「対象の干渉能力、想定外進化」

「計画第七段階へ移行」


さらに上位。神心教中枢。

「都市は既に“観測外”領域へ移行」

「例外個体は“修正不能”」

「対応方針:未定」


静かに、世界の均衡は崩れ始める。

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