第11話 村防衛戦開幕──聖・女神教“回収部隊本隊”襲来
夜明け前だった。
空がまだ完全に白みきる前。村の外周に、異変は起きた。
「……来た」
サンガーデンの声は、いつもより低かった。
森が“揺れている”。
いや、正確には――人が動いている。
統率された複数の足音。
数十どころではない。
「本隊か……」
セローナが剣を抜く。
その刃に、朝の光がまだ届いていない。
霧の中から、姿が現れる。
白と黒の法衣。
整列した十数人。
さらにその後ろ――異形。
魔獣を“鎖で繋いだ”兵器。
そして中央。
昨日とは違う“指揮者”。
「対象確認」
冷たい声。
「治癒個体ジネン。随伴個体三名」
「および、保護対象村人群」
セローナの目が細くなる。
「……村ごと回収する気か」
「効率的です」
指揮者は淡々と答えた。
「全員、村の中心へ退避」
セローナが即断する。
「戦場は外だ」
ジャスミーが震えながらも頷く。
「わ、わかった……!」
サンガーデンは弓を構えたまま動かない。
「逃げる気はない」
「だろうな」
セローナは短く返す。
そして俺を見る。
「ジネン、お前は後ろだ」
「いや、今回は違います」
沈黙。俺は前に出る。
聖・女神教の指揮者が視線を向ける。
「抵抗確認」
「想定内」
「では開始します」
その瞬間だった。
「来るぞ!!」
セローナの叫び。
戦闘が始まる。
魔獣兵が一斉に突撃。
地面が揺れる。
「ジャスミー!」
「いくよ!!」
火球。だが数が多すぎる。
爆発が追いつかない。
「くっ……!」
セローナが前線を押し返す。
一体、二体。だが重い、圧が違う。
サンガーデンの矢が走る。
魔獣の目を正確に貫く。
「数が多い」
「わかってる!」
だが一瞬の隙が生まれる。
その瞬間――
「っ!」
セローナに一体が突っ込む。
避けきれない。
そのとき。
「ヒール!」
光。セローナの動きが“加速する”。
傷が治るだけじゃない、反応速度が上がる。
「今のは……!」
「行けます!」
俺は叫ぶ。
戦場が変わった。
セローナが一気に前線を切り裂く。
ジャスミーの魔法が精度を上げる。
「え、なにこれ!? 当たるんだけど!?」
「集中しろ!」
サンガーデンの矢が“外さなくなる”。
「補正がかかっている……?」
彼女が俺を見る。
「お前の能力か」
「たぶん!」
指揮者が初めて動揺する。
「個体ジネンの能力拡張確認」
「戦闘支援能力へ変質」
「想定外」
その言葉に、空気が変わる。
俺は理解する。
(これが“仲間強化”の本領か)
治すだけじゃない。
戦闘そのものを“最適化”する。
なら――
「もっといける!」
俺はセローナに集中する。
「セローナさん! 右! 3秒後に来ます!」
「了解!」
的中した。斬撃をくらわす。
戦況は逆転し始める。
だが指揮者は笑った。
「第二段階移行」
地面が割れる。
魔法陣。巨大な結界。
「村ごと封鎖」
「回収効率最大化」
その瞬間。
「リーナを守れ!!」
俺は叫んだ。
村の中心へ視線を向ける。
そこには――
逃げ遅れた子ども。
そしてリーナ。
「……っ!」
リーナの顔が青ざめる。
「ジネンさん……!」
俺は迷わなかった。
走る。
「ジネン!!」
セローナの声。
だが止まらない。
結界が完成する前に――
「ヒール!!」
光を“壁”にぶつける。
構造を“修復”する。
壊すのではなく――
「ズレろ……!」
結界が歪む。
一瞬の穴。
「今だ!!」
リーナを抱き上げる。
よし、脱出成功。
結界が閉じる。
間一髪で村は閉じ込められなかった。
だが代わりに――
指揮者の視線がこちらを捉えた。
「対象優先順位変更」
「ジネン回収へ完全移行」
そっと、静かに
戦争が“個人戦”へ変わる。




