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本当に悪い男

噂なんて当てにならないことは、私が身をもって知っている。


フランクリン男爵家にいた頃、引きこもっている私を使用人たちは、顔に大きな傷があり、それもあってヴァイオレットの美しさを妬み、引きこもったと噂していた。


誰からも愛されるヴァイオレットを僻み、前髪で顔を隠す気持ちの悪い陰気な女、それがフランクリン男爵家の使用人の私の評価だった。


確かに引きこもっていたから陰気な女というところは合っているし、ヴァイオレットを妬んだり僻んだりしなかったかと言われれば、確かに妬んだり僻んだことはあった。


しかし、顔に大きな傷があったから前髪で顔を隠すようになったわけではない。


だから……ブラックリー公爵様が恐ろしい人だと言う噂を聞いた時も、気に入らない人間をすぐに殺すような恐ろしい人なのかもしれないけれど、違うかもしれない。


できるのならば、ブラックリー公爵様自身から話を聞きたいと思っていた。


まあ正直、ブラックリー公爵様に何度か殺されると思ったけれど……。


それでもアーガイル様もマリーも公爵様を信頼して、尊敬しているようだった。


本当の悪人だったら、あんなふうに使用人と打ち解けられないと思う。だから……。


「今じゃなくてもいいです。話してもいいと思ったときにでも……」


私の言葉を遮って、冷たい目で私を睨みながら、ブラックリー公爵が口を開く。


「暗殺・詐欺・密売・人身売買……金になることであれば、なんでもやる。どうだ? 噂通りだろう。この小屋には、ここに保管されている密売品をチェックしにきた。この密売品はかなりの金になるからな」


エドワード様の後ろにはたくさんの樽が置かれていた。


おそらく、あの樽の中に密売品が入っているのだろう。


ふと、目の端に肖像画が置かれていることに気づいた。


「……エドワード様、あれは……」


肖像画について質問しようとしたけれど、エドワード様の冷たい目に遮られてしまった。


「……もういいだろう。これ以上、金にならない時間を過ごしたくない。さっさと部屋に戻れ」


そうしてエドワード様はそばにあったガウンを私に着せ、小屋から追い出した。



*---



小屋からの帰り道。


「あの肖像画……エドワード様の小さいころが描かれていた?」


エドワード様の小さい頃だけではない。


優しそうな表情の大人の女性と包容力のありそうな大人の男性。


おそらく、ブラックリー公爵家の家族の肖像画だ。


暖かな家族な印象だったけれど……今はエドワード様ひとり……。


何があったんだろう?


公爵家で何かあったのであれば、かなりのニュースになったはずだ。


引きこもっていたから、世間の情勢に疎く、私は何があったのかを知らない。


「きっと、知っておいた方がいいわよね……」


何よりも気になるのが、大切な肖像画があのような小屋に乱雑に置かれていたことだ。


暖かな家族の肖像画。


私の家ではありえなかった家族の姿。


いや私の家ではなく、私だけね……。


自分の仕事について話した時の冷たい目も気になる。


エドワード様はきっと実際に噂になっているようなことをしているのだろう。


でも、恐ろしい人だとしても、悪い人には思えない。


本当に心に優しさがない悪い人だったら、小屋から追い出すときにガウンをかけてくれたりしないでしょう?


お金に執着しているのも、何か原因がある気がする。


「……いつか教えてくれるかしら?」


こうして、私は自分の部屋に戻った。

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