ささやかな勝利
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「む、無理やり戦わされていた!? ……どーゆうこと?」
「……霊能力者が使用する基本的な術の一つに自分が召喚した幽霊を無理やり術者の意思に従わせるというものがある。……この子たちはそれで強制的に戦わされていた」
そんな……。それにしては思いっきり霊撃とか撃ってた気がするけど。
考えてたことが分かったのか
「……そうしなければこちらがやられてた」
と霊谷さん。
まあ、確かにその通りではあるよなぁ。
「えっと、じゃあなんで術が解けたのかな」
「……術者が気絶したからだと思う。強制術は常に気を張っていないと使えないから」
「なるほど。じゃあ、闘いは終わったってことでいいのかな?」
「……幽霊たちに戦う意思がなければ」
反射的にさっきまで霊谷さんにからみついていた蛇の幽霊に視線を向ける。
「……あたしにゃ闘う意思はないよ。あんたはどうだいコロ?」
「僕にもありません~。ご主人しっかり~」
柴犬の幽霊が阿久井の体を一生懸命揺らすが起きる気配はない。
「心配しなさんな。体温も以上ないし、ただ気絶しただけさね。つかれていたんだろうよ」
ふ~。これで一応闘いは終わったみたいだけど、一件落着じゃないよな。
「えっと、阿久井をどうする? このままじゃ目が覚めた後、また襲ってくる可能性もあるわけだし」
僕としては霊谷さんに言ったつもりだったんだが、如実に反応したのは二体の幽霊たちだった。
「お、お願いです~。僕はどうなっても構いません~。どうか、ど~か、ご主人だけはお助け下さい~」
「あたしからも一つ頼むよ。確かにこの子のしたことは笑って許されることじゃないのは分かっちゃいるが…」
二匹揃って頭を垂れる。
無理やり戦わされていたというのに術者のために必死(片方はそうでもないが……)に懇願する幽霊を見ているとどうしたもんかと思ってしまう。
「うーん。けどなぁ、このままだと僕らも安心して暮らせないわけだし」
「……構わない」
「そうそう、構わな……って、え? な、何言ってんの」
「……いっつも健治が私と一緒にいれば何も問題ない」
そう言いつつ霊谷さんは僕の腕を抱くように腕をからめてくる。
「えっ、あ、いや、けど、どこそこ構わず襲ってこられるとさすがにきついし、っていうか阿久井強くて今日もぎりぎりだったし」
っていうか胸が当たってます。
「……大丈夫。……愛の力は無敵」
「え、あ、いや、そもそも愛って?」
「……私だけを見てくれるって言った」
「いや、確かに言ったけれども」
「……うそつき」
「あ、いや、嘘じゃないよ、もちろん」
「……じゃあ大丈夫」
大丈夫じゃない! 何か話がおおごとになってきてるし。多少気にして見とく程度じゃダメなの!? っていうか、そもそも愛の力は物理的な盾にはならないから。いや、まあ、霊的にはどうか分かんないけどさ。
「話はまとまったかい?」
「……ええ」
「そうかい。なら悪いんだけどこの子が目を覚ます前に帰ってもらえるかい。あたしたちゃこの子が目覚めるまでここにいるからさ。この子が起きたときあんたらがいたらまた騒ぎ出しそうだからねぇ」
「……分かった。……健治、帰ろう?」
「ああ」
もう何もいう気力もない。僕の第二の人生これからどうなるんだろう。
「お疲れ様です~。末長くお幸せに~」
余計なこと言うな!
ぺこりと頭を下げながら見送る柴犬を睨みながら帰路についた。




