エピローグ
最終話となります。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
「ねぇ、ひとつ聞いてもいい?」
すっかり日が落ちた街中を歩きながら今回の出来事の始まりに思いをはせる。
何を聞かれるのか分かっているのか霊谷さんはコクンと頷く。
「何で僕を幽霊にしたの?」
しばらくしたのちポツリと答えが返ってくる。
「……始業式の日、助けてくれたから」
ああ。やっぱり。
僕は始業式の日の夕方のことを思い出していた。
今日同じクラスになった女の子が囲まれていた。その子はあまりよくない意味で学年の有名人で、囲んでいる三人は同じ学年のちょっと幅を利かせている男子と女子。
ちょっと外れているやつをからかってやろうという程度のイジリ。
だが、望んでいないそれがどれだけ不快なものかはやられたものにしか分からない。
「や、や、やめてください……」
気付いたら割り込んでいた。
「あん? んだ、てめー」
相手もわざとすごんで見せる。おちょくられているのは分かっている。
「あ、い、いや、あの、女の子相手に数人で取り囲んでこんなことするっていうのは」
「あたし達が一体何やったっつーのよぉ!! 変ないちゃもん付けると」
「ご、ごご、ごめんなさいっ……」
萎縮して同級生に対し敬語で謝る僕をひとしきり笑ったあと、彼らは何事もなかったかのように去って行った。
ふぅ。彼らが十分に離れたのを確認してため息を漏らす。
顔を上げるとあたりには誰もいなかった。
「あれがきっかけかぁ……。何で正攻法で来なかったの?」
「……お母さんみたいによそで恋人作るかもしれないから」
ああ、てことはあのナイスミドルは浮気相手か。
霊谷さんが立ち止る。振り返ると俯いて、服の裾を握りしめている。
「……お、怒ってる? ……私のこと嫌いになった?」
当然だ。そんな身勝手な理由で、あんな人生だったけどいきなり終わらせられて、怒らないはずがない。だけど、それこそ今更出し、何より小さな体を丸めてこわごわとそんなことを聞く彼女を愛おしいと思ってしまった。
左手を差し出す。
「帰ろ?」
僕の左手の上に彼女の右手が重ねられる。その手をぎゅっと握りしめる。この温かさと柔らかさを忘れないように。
「これからよろしくね、霊谷さん」
「……愛美」
「え?」
「……愛美って呼んで?」
「ま、愛美」
「……健治」
お互い顔が赤くなっているのが分かる。
このまま二人の時間が続くのかと思われたが、
「ママー。あのお姉ちゃん空を見て赤くなってるよー」
「こら、見ちゃいけません!」
「……帰ろうか」
「……うん」
霊谷家に向かって歩きだす。
手は握られたままだった。




