満ちる力
作者の力不足により、この章のみ三人称になっております。
すみません!!
だめっ! 私はどうなってもいいから。……初めてなの、私だけも視てくれるって言ってくれたのは彼だけ、彼が初めてなの。私は死んでもいい、廃人になってもいい。だから彼だけは、生井健治だけは生かして!
だめだっ! 僕は自分に誓ったんだ。何があっても霊谷さんを守るって! そして、彼女のことを見続けるんだ。僕自身はどうなってもいい。ただ、彼女だけは……霊谷愛美だけは傷つけるな!
「サヨナラ」
(なーんだ、以外とあっけなかったわね。あなたに恨みはないけど、あたしの力を高めるためなの。ごめんなさいね)
脚を生井健治の体からどける。いつまでも人を踏んでおく趣味はない。
右手の先に力が集中していくのを感じる。幾度となく繰り返した作業。慣れ親しんだ感覚。
(サヨナラ)
もう一度心の中で別れの言葉を繰返し、唱える。この一件を終わらせる一言を。
「霊げ……!?」
しかし、その一言は言い切られることはなかった。
(な、何これ!? 力が溢れてる!?)
目の前に横たわる先ほどまで虫の息だった生井健治の霊体から信じられない量の力が迸っていた。
しかも先ほどまでそれこそ致命傷だったはずの右腕が見る見るうちに修復されていく。
背中の傷も同様だ。おそらくお腹の傷もなくなっているだろう。
驚きで動けなかった数秒の間に衣服の破れまでも完璧に修復される。
(こ、これは……)
あわてて霊谷愛美を見ると先ほどと同じようにスクに動きを封じられていた。
だが、妙に息が荒い。そして何より、霊力がほとんど残っていない!
無言のまま生井健治が立ち上がる。その体から先ほどとは比べ物にならないほどの霊力があふれ出ている。
(まさか……、まさかこの状況でパスを繋いだっていうの!?)
それは普通に考えてあり得ない、とんでもない事象だった。




