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ふゅんふうんとつばんつぃひ 赤くない壊凶化

Fünfundzwanzig―――Nicht rot, entlaufener unheiliger körper

正体不明の何かが通り過ぎた後、特に何も変わったことはなかった。警戒のしすぎだったのだろうか……そう思っていたら。



『……ギア……ァ……アア……ッ! ギアァ……』

「……!?」



ドラゴンが再び動き始めた。先程まで死んだように動かなかったのに、だ。


しかも、翼の爪が再生し、また鼻から少し血が流れる。



『再生……!? 嘘……? どんなドラゴンであっても流石にあの量の血が出れば……』


『グアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!』



ドラゴンの目が一瞬真っ赤に光り、鼓膜が破れそうになるほどの爆音で咆哮を上げた。



「う、うるさ……っ!?」



……攻撃をするが、効いたような様子は全くない。

むしろ攻撃をする度に体表が硬くなっているようだ。



「れ、レーゼ! お願い……!」

『……あ、あの……。今の状態は多分我より強……わ、分かりました』



……そんなこと言われたら勝てる気がしないんだが?

リリィもラルを出すが、同じことを言っている。



ドラゴンは斧を振り回し、翼の爪を引きちぎり地面に突き刺す。その上、翼の爪はすぐに再生する。



……突き刺された爪から地面が段々と枯れていく。爪に当たってしまったら終わりなのだろう……。



どれだけ魔法を撃とうと、攻撃しようと、効いた様子は全くない。レーゼも、ラルも、諦めが口に出る程だ。



……ニュークを撃つか? いや、効果範囲に皆がいるからリスクしかない。他の魔法は効果が薄そうだ……え? 本当にどうするんだこれ……?



……ドラゴンの喉がパンパンに膨らんだ。まさか……攻撃を行おうとする前に、ドラゴンの口から血が吹き出された。



「ぐぁっ!?」



その血に直撃し、僕は動けなくなった。

手足も、首も動かない。動くのは目と口のみ。



「しろ……ゆきうさぎが倒れた……!」

「あ、これ倒れたんだ……」



これが初乙かー。……じゃない、何で口から大量の血を出すんだよこのドラゴン!?



「グエー死んだンゴ」

「成仏してクレメンス」



適当にそう言ったら、リリィから返ってきた。

何でリリィは知ってるんだ……。



……しかし、このドラゴンは本当にどうやって勝つのだろうか。誰の攻撃も効いていない様子だった……。



……すると、どこかから聞き覚えしかない声が聞こえた。



「……まったく、シュヴァルクグラフごときに苦戦するなんて……鈍ったなのです? ルルエ姉さん」

「そ、その声は……リシア……!」

「……大丈夫。わーが来た、なのです!」



リシアだった。

……なんだろう……! 滅茶苦茶頼りになるんだけど多分このドラゴンのこと完全にナメてる……!



「大丈夫なのです。攻撃さえ喰らわなければいい、なのです」

「それが出来るなら苦労はしないのでは?」



リシアは武器を構え、一呼吸した。



「我(わー)に宿る、しなつ風神の力。その力は鬼畜すら敵に非ず。……風神奪操・春……!」



リシアの周りに花びらが舞う。リシアの足元の草花が揺れ動く。



「風よ我(わー)を守り給え。風よ全てを渦に巻き込め。己(なー)に吹く風は神の力なり。

その風、一番に吹け……! 

颶の遺(はやてののこり)……!」



リシアは一瞬で姿が消え、ドラゴンは怯んでいた。リシアは姿の消えた場所に戻り、武器を投げた。


その武器は渦を巻きながらドラゴンに傷を付け、段々と加速していく。血飛沫のせいか、赤い嵐のように見える。



ついには武器の姿も見えなくなり、ドラゴンが真っ赤に染まっていく。



「己(なー)の塵くらいは残してやる……なのです」



リシアはドヤ顔でそう言った。

ドヤ顔でさえなければかっこよかったのになぁー。



シュヴァルクグラフを倒した。



武器がリシアの方へと戻っていき、リシアはそれを左手で掴む。



……本当に倒しちゃったよこの人。……あと、もしかして配信者の中では詠唱が流行ってるんですか?



「……何でわーの必殺技だけ詠唱が必要なのです?」

「だいぶノリノリに見えたけど……?」

「うるさいなのです」



僕らは村へと帰った。

……レベル上げという目的は達成していないが。誰も気づいていなさそうだし……いいかな……。



◇



村に戻ると、リシアが気になることを口にした。



「……あのシュヴァルクグラフ……壊凶化していたなのです」

「か、壊凶化……なんだっけ……?」

「昨日話したことを忘れるななのです」



現実では八週間前だから覚えてるわけn……あれっ何言おうとしてたっけ……。

待って八週間で作中一日しか進んd……僕はまた何を言おうとして……?



「はぁ……目が赤くなって、強くなって暴れることなのです」

「目が……赤く……なってたっけ……?」

「そう、そこ! なのです!」



確かに一瞬だけ赤くなっていたが、ずっと赤くなかったような。……元に戻ったとかじゃない?



「おそらく、壊凶化のようで壊凶化じゃない何か、になったなのです……。多分、なーのライも!」

「ライも?」

『わたしですか!?』



ライは驚いたのか出てきて、ぐるぐる目になっている。



「……い、いや、どう見ても今暴れてないよね!?」

『な、何が何で何なんですか……?』

「……じゃあ一つ言っておく……なのです」



時でも加速するの……? ……何?



「壊凶化は元に戻らない……なのです。一見、そこのライは元に戻ってるけど……死者が生き返らないように、元に戻ることはない、なのです」

『死んでませんよ……?』

「例えなのです。どこかのソシャゲの誰かの台詞を引用しただけなのです」

『……じゃあ今のわたしは何なんですか!?』



だいぶ不謹慎なこと言ってない? どんなゲームなのそのソシャゲ……。


……しかし、元に戻らないのなら今のライはなんだ……?




「いや知らないなのです……」




知っててください(無茶)。……本当に何なんだ?



「……あくまでわーの考察なのです。ありえないと思うけど何らかの理由で治ったか……壊凶化から変化したか」

「変化……?」



「例えば壊凶化を克服……モ○ハンでいう狂○化や傀○化に対する極○化とか開国とかなのです」

「ごめんよくわかんない」



なんですか開国って。鎖国してたんですか。

……多分違うんだろうな。



「……なんか子供向けのアニメとか特撮とかにある、味方が一時的に魔改造されて敵になるけど、敵になった時の力を持ちながら味方に戻るみたいな感じなのです」

「……よく分からないけどなるほど……?」



つまり強化形態ってことかな……。

多分ロマンあるよね。



「ま、適当に言ってるだけなのです。どうせわーがM○RSBに引っ張られただけなのです」

「……そ、そっか」



……ところで、頭の上にクエスチョンマークを浮かべているリリィを置いてけぼりにしているような……。望乃は分かってるっぽいけど……。




……待って? 気づけば8時になってないこれ?


戦闘やら色々で全く気づかなかったが、夕方どころか日もとっくに沈んでいた。僕の腹の虫が鳴ると、リリィも望乃もリシアも、ルルエさんも一斉に時刻を確認した。



「……8時……8時なのです!? 姉ちゃんにキレられるなのです……!」

「同じく……。いや、もう叱られもしないくらいかな……」

「……早くゲームを中断しないとなのです……!」



僕らは一斉にログアウトした。



◇



「……黒菜。ごめんて」

「いいもんね。お兄ちゃんの羊羹はいただくから」

「あー……!」

「(ま、実はお兄ちゃんが来るまで全く気づかなかった……なんて言えないけど)」



……そこそこ遅いが、夕飯……いや、もう夜食になるのか……? を食べる。



……わかめご飯のおにぎり、サバの味噌煮、伊達巻、南蛮漬け、かぼちゃの煮物、肉じゃが、羊羹と、お子様ランチにしてはだいぶ渋くないか? とは思うが、そこそこ美味しかった。



……全体的に甘い味付けだ。流石にわかめご飯は違うが。……それでも、普通に子供なら嫌っていそうなおかずが多い気はする。



……ごちそうさまでした。



「お兄ちゃん、ずっと思ってるんだけどさ。何で人参だけ食べないの」

「……なんでだろうね」

「自分のことでしょ……。……いつも思ってるけど、お兄ちゃんさ……、何か隠してるんじゃないの?」

「……」



「……それに、その……手首の傷。何?」

「……わ、分かって……た?」

「いや滅茶苦茶目に入りまくって気になってた。それに、昔から長袖ばっかり着てるし」

「……」



……気のせいだと、僕はそう言える人間ではなかった。

気がつくと、息が荒くなっていた。

一話が月曜日なので今話は土曜日です。

土曜日だけクソ長くて草……いや最後に不穏な空気出しといて草はないな。


次回:涙は何処へ

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