じーぷつぇーん 雷のドラゴン
Siebzehn―――Blitzdrache ”Gelbürst”
「ゲルビュールスト……。この大陸で三番目に強いモンスター……らしい。まぁ一番以外は割と曖昧らしいけど。こいつの方がブレッセルツォークより強いとか聞くこと多いし」
「一番が気になってきたなぁ」
『聞き捨てなりませんね』
……しかし、ドラゴンというには翼がないから何だか微妙だ。そこ以外はかっこいいのに。
あとレーゼ、多分特化してる部分が違うとかじゃないかな。知らんけど。
……ライとレーゼを出して、戦うこととした。
ドラゴンは胴体はあまり大きくないが、腕はとても大きい。邪魔そうに見える腕はとてもアンバランスだ。気持ちが悪いくらい。
『グラララララララララァァァァァ!!!』
とても大きな咆哮を上げ、背中の腕を地面に思い切り叩きつけた。
地面が響き、ドラゴンの腕立て伏せのような行動により、立ってはいられない。
盛大に転んでしまい、それを見たドラゴンは僕に近づく。持っていた杖は手から外れ落としてしまった。
『グララララァァ……』
「ひっ……」
シバリングかってくらいドラゴンの顎が震え、電気を纏った涎のような物を垂れ流してくる。
杖を拾い、構えようとしたが、ドラゴンが踏み潰した。一瞬だけ青白い光が見え、杖の水晶が破壊された。
塵の魔杖 ★0 核属性 new!!
塵と化した杖。扱えず、杖の力の大半は消え去った。
核属性……? そう思ったが、すぐに頭のどこかへ消えた。
「あ……っ……あぁ……」
怒りが湧いてきた。
壊れた杖を構え、魔法を放つ。
「ニューク!!!」
何故かそう叫んでいた。
あの伏字の魔法の本来の名前だろうか。
だが爆発が起こる……なんてことはなく。
小さな音と、弱い光が一瞬だけ広がった。
……それだけだった。
「え……?」
特にそれ以外の要素はなく、とんでもなく弱体化している。
「あ……あぁ……」
僕は隙だらけだった。ドラゴンは咆哮し、雷を放った。身構え、目を閉じてしまう。
バチィッ! そう鳴り響く。
「……あれ?」
しかし、僕は何ともない。
目を開けると、目の前にライが立っていた。
「ら、ライ……?」
『……』
ライは反応しない。
あとなんだか少し甘い香りがする。
……ライの瞳は真っ赤に染まり、瞳孔が開いて、耳や目、口から青い液体を垂れ流していた。
「……な、何が起きているのですか……?」
「……なんだか、ドライアドに似てるような……」
……確か、あのカタツムリがドライアドの目が赤くなって暴れてる……みたいな事を言っていた。
それのことだろうか。
「……れ、レーゼ……これについて何か知らない?」
『知らない……何それ……怖……』
「そっかぁ」
……さて、ドラゴンに視線を戻すと……
ライにより圧倒的な実力差でボコボコにされていた。
「「「??????」」」
『??????』
仮にも二番目か三番目に強いモンスターだというのに、攻撃は当たらずむしろ大きな的のようにフルボッコにされていた。
『覚えし禁忌』
ライの指先から紫色の光の塊が現れる。
和訳すればリンゴを食べる……?
……形は林檎……ではなく、イチジクに見えるのだが……。
それがドラゴンの口の中へと飛んでいく。
『Fahr zur diese welt』
ライがそう言った後、指を鳴らす。するとドラゴンは消えた。……この世界に堕ちろって何だよ。
「……え、何これ。何が起こったの……?」
「稚内」
「北海道やめてね」
ライが左手を上げ、素早く振り下ろす。
それと同時にドラゴンが落ちてきた。
「……もう全部ライだけでいいんじゃないかな」
「どう見ても正気を失っていますが……?」
ドラゴンが落下した後、ライは意識を失った。
何があったんだ……。
あ、ドラゴンは生きていた。だけど凄く悶絶していたので放置した(人の心とかないんか?)。
◇
山を下り、ライの様子を見る。
ぐっすり寝ている……でいいのだろうか。
「……後で一度ググってみるか」
「あの、白兎くん。言っておきますがこのゲームプレイ人口少なくてほとんどヒットしませんよ。機材の値段や難易度のせいで誰も買わないんですから」
「そうだった……」
……買っている人は余程のお金持ちか、これの為だけに数年間貯め続けた人か、とんでもない借金持ちの人くらいと言われている。
そんな時だった。
「お困りなのです? わーが助けにきたなのです」
「うわでた」
「白……ゆきうさぎ、その扱いは酷いと思うよ……?」
……またリシアが出てきた。
配信者だろうが。僕らをレギュラーか何かにする気なのか?
「……で、何があったなのです?」
「かくかくしかじか」
「……かくかくしかじかって言われてもわかんないなのです」
「四角いムー○、コ○テ新登場!」
「さらにわかんねぇなのです」
……ですよね。
「赤い目になって暴れだしたって感じ」
「分かったなのです。最初からそう言えなのです」
……すみませんでした。
「……と言っても、現象だけ知ってるなのです。発生条件とかは知らないのです」
「そっかぁ……」
「確か……壊凶化? って名前だったなのです。それ以外は知らないなのです」
壊凶化……?
「……じゃあわーは帰るなので……ん?」
「……?」
……リシアはブツブツ言い始めた。
少しすると、女の子が出てきた。
紫色の髪、桜色の瞳のライのような体……。
「うわぁ!?」
「……もう! 今日はなんなのです!? 勝手に出てこないでって言ってるなのです! それにいつも……!」
『ご、ごめんねリシア……。でも今日はしないからね?』
「いつもするななのです!! わーを襲うななのです!」
「……?」
襲う……? だとか、ちょっとヤバそうな言葉が聞こえたが、とりあえず聞かなかったことにしよう。
『わたしはスイ。リシアのセf……』
「意 味 も 知 ら ず に や め ろ な の で す ! ! !」
『ごめん……』
「……で、今日は何する気なのです? 内容によってはシャルレーニヒの所に縛り付けて放置するなのです」
『やめてください死んでしまいます……』
「ならそうされるような事をやめろなのです」
仲良いなぁ……。じゃなくて、結局なんなんだ。
何も分からないんだけど。
『……その娘。ちょっと気になるんだよね』
「……ついにサキュバスに手を出すなのです……?」
『違うからね!? ……いや、その娘……わたしの弟じゃないかな……? って……』
「どう見ても女の子なのです節穴なのです。それにスイは元々スライムなのです」
『……いや、そうだけども……。
この娘、スライムでしょ』
ほぇー。分かるんだ。……あれ、キャラ被り?
『……わたしの弟と同じ雰囲気というか……それを感じたんだよね。……あ、弟って言ってもスライムに性別なんてないけど。……触っていい?』
「どうぞ……?」
スイさんはライの色々な部分を触っていた。
それはもう色々……。うん。
『……おかしいな』
「え?」
『……ありえないほど死臭がする……。死体だとしてもありえないくらいサラサラしてる……なのに生きてる……』
「え……?」
……え? どういうことだ……?
「……つまり? ゾンビってことなのです?」
『うーん……なんだろね。正確には人の死臭のソレとは違うからなぁ……。全身ががん細胞って感じかな?』
「全身が……?」
『……でも何でこんなことに……。全身がガンだとか意味が分からない……』
『……遺伝子が全て破壊されたのかな……? でもどうして……どうやって……?』
……遺伝子を破壊……。
……あれ、もしかして……。
あの魔法はニューク……NUKE……核爆弾。
思えば不謹慎極まりないが、それが原因だろう。
核属性とあった……恐らく被曝したのだろう。
それが壊凶化と関係があるのかもしれない。
……ドライアドは知らん。何それ。怖。
次回:お前ら、弓と爆弾は持ったか!




