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序章 邂逅

第二章「夢を喰う少女は」

スタートしました!


第一章までの感想や改善点等有りましたら

お寄せ頂けると作者が咽び泣いて喜びます


また、このキャラの話が見たい!なんていうのもあれば本編とは別にサイドストーリーとして書かせて頂きますので、そんな要望等もお待ちしております

「大変だよシロっち、フィアちゃん!」

息を切らしながらニナが勢い良く扉を開けて

「…なによ、騒がしいわね」

「ついに財政破綻でもしたかしら?」

あまり興味も無さそうに、そんな言葉を投げかけるのは

タブレット端末を眺めるシロナで

大きな欠伸をしながら

「…火の車なのは、いつもの事じゃない」


「前ならいざ知らず、それは無いんじゃないですか?」

「順調とは行かないものの」

「そんなに切羽詰っているはずは無いですよ」

冷静にそう返すのはリーフィアであり


ーー初めてのステージから、はや一月

あの日からステージ以外にも

日替わりで誰かが店のウエイターとして働いており

お金に関しては甲斐あってか、余裕とこそないが

突拍子もなくそんな自体に陥るとも思えずに


「…で、結局何なのかしら?」

ニナは息を整えて、躊躇するように

「お兄ちゃんが…」


「アヤトが?」

「アヤトさんが?」


彼女達三人を買ったご主人様たる名前が出て

僅かばかりに顔を強張らせた二人は

「お兄ちゃんが」

「男の人を好きになっちゃったんだよーー!」


ニナが叫んだ内容

その、あまりの突飛さに思考は全く追いつかず

二人は呆けた顔をしながら


「……はい?」

「全く意味が分からないのだけど」


「そーだよ、全く意味分かんないよ!」

「こんな可愛い三人と毎日一緒に寝てるっていうのに!」

「重大な裏切り行為だよ!」

「お兄ちゃんがホモだったなんて!」


結局、あの日の酒宴で結構な金額を支払いした為

目下のところは狭い布団に四人とそんな生活のまま

ニナは抗議の声を上げるが

怒りながらお相手の姿を思い出したのだろう

どこか、夢見がちな表情で呟く


「でも、すごいカッコ良かったから」

「お兄ちゃんが揺らいじゃうのも無理ないかも…」


それを聞いたシロナは

「…店に来たお客さんなの?」

アヤトも同じ店で働いていて

今日のウエイター担当はニナであり

「それで、結局ニナは昼休みに途中で抜けて」

「こんな所まで報告しに来たんですか?」

丁度ピークの時間を過ぎた頃を指し示している時計を見ながら

リーフィアは呆れたように、そう言い


「…だって、面白そうじゃん?」

先程までの慌てふためき振りは何処へ行ったのか

ニナは悪戯っぽい笑みを二人に向けて


「…まぁ、気になりはしますよね」

リーフィアもそれに同意し


シロナも目を向けていたタブレット端末を

床に置いて立ち上がり

「…どうせやる事も無いし」

「ちょっと見に行ってみようかしら」


結局のところ暇である事と好奇心に勝てず家を出て

リーフィアはどこか上機嫌に

「すごい良いですよねー」


「…何か?」

主語の無い発言に

それが何かとシロナは訝しげに聞いて

「だって、男の人同士ですよ?」

「尊いじゃないですかー」


どうやらリーフィアは

その状況を想像して、興奮しているようで

「シロちゃんはどっちが受けだと思います?」


既にリーフィアの中では

カップルとして成立してるらしく

「アヤトさんが受け…うーん」


シロナは呆れ顔で

「…別に人の趣味をどうこう言うつもりは無いけれど」

「ヨダレ垂らすのだけは辞めなさい?」


リーフィアは慌てて

だらし無く緩んでいた口元をきつく結び

余所行きの顔を整えたのを見て

「『…紛いなりにもアイドルなんだから』」

「『それだけは忘れないように』」

「…なんて、アヤトに言われるわよ?」


あまり似ていないシロナのモノマネを見て

リーフィアは可笑しそうに笑い


「言いそうですね、アヤトさん」

「その本人は、なんか現抜かしてるみたいですけど」


ーーこの一ヶ月間、何度もステージに立って

ウエイターとしてお店に立っている時だけでなく

街に買い物に出た時すら

誰かに声を掛けられる事があって


全てが決して好意的な反応だけではなく

時に嘲笑され、謂れのない罵倒を受ける事もあるが


それでも「頑張って」なんて

声援を貰う瞬間も確かにあって


「…もう、私達は誰も目を向けようとしない」

「そんなゴミ屑じゃない」


そこに有ると認められて

誰かに見られ、評価され続けられる

「…星屑(スターダスト)だなんてアイドルだもの」


リーフィアは大きく伸びをして、背筋を伸ばし

「そうですね…」

「次のステージも頑張っちゃいますよー」


「…それで、当の本人さんは」

「一体どんな調子なのかしら?」

前を歩くニナにシロナは声を掛けて


ニナは困ったような顔をして

「なんていうか…もうゾッコンっていうか」

「周りが見えてないっていうか…」

これがリーフィアの言う事なら

妄言にしか聞こえないと笑うところだが

ニナにそんな性癖は無く


そうでなくても、客観的に物事を見えると

シロナはニナをそう評価していて

「そんなにカッコいいのかしら?」


「それは断言するよ」

「面喰いのあたしが言うんだから、相当に」


「どんなタイプ?」

「うーん…」

「若くて、スラっとした長身で頼り甲斐が有りそうで」

「知的で優しそうだけど、でもひ弱そうじゃなくて…」

「…端的に言えば理想の男性って感じかな?」


説明を聞けば聞くほど

シロナにはよく分からなくなり


まずどうして、真っ先に出て来るはずのそれを

ニナが口にしないのかと、質問してみる

「…人間なの?それとも亜人?」


身体的特徴で、刻まれた隷紋で、付けられた首輪で

この世界で性別より前に分けられるべき種としての違い

否応無く目に入るはずのその情報が

ニナの言葉からは抜け落ちていて


それを聞かれたニナは不思議そうな顔をして

正しいかなんて分からない心象はスラスラと答えられて

どうして、この質問に迷うのだろうか?と

シロナは訝しげな顔でニナを見るが…


暫くの沈黙の後に、ニナは自分でも驚いたように

「…あれ、分かんないかも」


その回答にシロナは溜息を吐き出して

「幾らニナが最年長とはいえ…」

「まだ耄碌(もうろく)するような歳では無いわよね?」


どう見ても童女にしか見えない彼女だが

それは子鬼(ゴブリン)故の見た目だけの話で

「そんなにババアじゃないし!」

「まだピチピチの……」

そこまで口にしてニナは言い淀み

必死に指折り数え始めて

「あれ…結構ヤバい?」


「自分の歳がぱっと出ない時点で、割と」

それにリーフィアも乗っかって

「あと若くてって、一番最初に出るのもちょっと…」

そんな感想を漏らしていれば

自分たちの働くレストランが見えてきて

「休憩終わっちゃいそうだから」

「あたし先に戻って着替えてくる」

ニナか手を振り、裏口に消えたのを見て


「…さて、ニナとアヤトを骨抜きにする」

「そんなご尊顔でも拝見しようかしら?」

 

開け放った扉の先のホール

座る皆は、誰もが同じ一点を見つめていて


その視線の先に目を向けた瞬間

アヤトの隣で仲睦まじそうに話す人物を見た瞬間に

シロナは金縛りにあったように息すらできなくなって


同じものを見たであろうリーフィアはシロナに告げる

「えっと…あの方ですかね?」

「ニナが言う印象とだいぶ違って見えますけど…」

「可愛らしいですけど…あれは殿方ですよね?」


そんなリーフィアの言葉すらシロナの耳にはもう届かず

背けたくても、許されないその姿に

耳に残る声はいつかのままで

「…なん…で」

「どうして、此処に…?」

そこに立つ青年をシロナは知っている

ただそれはもう居ないはずの、会うことのないと知る人物で


「…なんで、ご主人様が…ここに居るの?」






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