表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/60

夢の先にあるもの

ーー「もう上がっていいぞ」

店内にはダラダラと飲み続ける客が数組であり

あとはこっちの人員で回るからとコルベットから

カレーもどきの売上を押し付けられた俺は

着替えを済ませて三人の待つ部屋の扉を開けて


「お待たせ」

三人は、店の改装の時に使えなくなった備品を

仕舞ってある部屋で椅子に座り

ボロボロの机にもたれ掛かりながら俺を見て

「…お帰り、お兄ちゃん」

「お疲れ様です、アヤトさん」

「遅いわよ、アヤト」 


三人とも声に疲れを滲ませてはいるものの

ステージの直後よりは回復したように見えて

シロナの顔色も、少しばかり良くなっており


「…いきなりで悪いんだが」

「結果発表と行こうか?」

俺は彼女達に見えるように手に持つ小袋を掲げるが

その反応は芳しく無く

「まだ、心の準備出来てない」

ニナは二人を見て

どうやらそれはリーフィアも同じらしく

それでもシロナは意を決したように

「勿体ぶってないで、開けなさいよ」

「待っていたって結果は変わらないんだし」


その言葉に俺も頷いて

「俺もまだ中身は見てないけど」

「これが君たちの出した結果」


その中身を机の上にひっくり返し

出てきたのは銀貨が6枚

日本円にして…6万円ほどの収入といえて

その金額は費やした労力と時間を考えれば

そうでなくても必要経費にすら足らず

彼女達の給料と呼ぶにはあまりにも少ない

ーーそれが結果であり


三人は机の上の銀貨をじっと見て

その金額が多いのか少ないのかを考えているようで

「…結果としては?」

そう戸惑いがちにシロナに聞かれて

「額面で見たその結果だけを見るのであれば」

「…赤字であるのは間違いないけど」


俺は彼女達に笑顔を向け、三人まとめて抱きしめて

それに三人とも恥ずかしそうな顔を浮かべる

「…最高のステージだった」

「だから、誇ってくれ」

「これは君達が稼いだんだ」

たとえ僅かだとしても

何に足る金額ですらなかったとしても


「何も無くて、何になれなくても」

「君達はもう…ゴミ屑なんかじゃないから」


その言葉を聞いて

ニナとリーフィアは笑いながら


「もっとバーンと稼いであげようと思ったんだけどなー」

「これじゃ億万長者は夢のまた夢だね」


「…それでも、お布団くらいは買えるんじゃないですか?」


いやに現実的な使い道を提示されて俺は苦笑いしながら

「これは君達の稼いだお金だから」

「自分たちの好きに使ってくれていいよ」


リーフィアは不思議そうな顔で

「…お給料って事ですか?」


「ちょっと少ないから」

「小遣いって事でいいかな?」


「急にそう言われても」

「使い道なんて思いつかないよ…」


そう言って、誰も手を付けようとしない銀貨を

2枚ずつ分けて彼女達に握らせて


「服でもお菓子でも好きに使って良いけど」


「それでも、使い道が思いつかないというのなら」

「これは俺からの提案で」

「君たちが夢を見続ける理由」

「見返りを用意したい」


そう切り出して、俺は三枚の紙を机に置く

「それは…私達の契約書ですか?」

リーフィアの言うとおり

それは俺とニールが交わした売買契約の書類


「うん、君達を一方的に」

「ただ物として他人から買い付けたっていう証」


「…俺には分からないんだけど」

「奴隷がその契約を終えたらどうなるんだ?」


それにニナもリーフィアもそしてシロナも考えて

「…余りにも前例が無いから分からないって言うのが正直だけど」

「それがどうしたの?」


「ずっと考えてた」

「君達はどうしたら、本当に自由になれるのか」


シロナは生きていけないから

逃げないとそう言って

なら、どうすれば良いのかと


「例えば主人が死んだとしたら?」

ニナはそれに答える

「仕事を貰えないから結局、誰かの奴隷になるんじゃない」


「なら、仕事があったら?」

その問に答えるのはリーフィア

「…それでも、住む場所も、お洋服も、生活に必要な全ても」

「手に入れるのは難しいと思います」


「それはどうして?」

シロナは小馬鹿にするように

「どうしたって、私達が亜人だから」

「違う生き物だと差別されるからに……」

そこでシロナは気が付いたのか言葉を途中で飲み込んで

俺に目を向けて、薄く笑う

「…そういう事」

「それが、アヤトの言うアイドルの先?」


「あまりにも出来過ぎた偶然だけど」

「今日のライブを見て確信できた」


改めて、ごほんと咳払いをして三人を見て

「ニナもリーフィアもそしてシロナも」

「君達は俺に金貨10枚ずつで買われた奴隷」


「…そして、君達はアイドルで」

「アイドルであれば避けられないことが一つあって」

「……それは卒業だ」


ーーいつまでも夢は見続けられず

彼女達アイドルはいつか卒業なんて、そんな終わりをもって

()()()()()()()()()



「君達が金貨10枚を俺に返せた時」

「その時が君たちの卒業」

「もしそうなったら、君達は本当に自由で」

「奴隷でもゴミでも無く、ただの女の子になる」


「だから、卒業のその瞬間まで」

「君達に走り続けて欲しい」


それを聞いたシロナは呆れたように

「私達を見て、受け入れられるなら」

「そこにはもう差別も無くて」

「仕事もお金も手に出来るのなら」

「自分の力で生きていけると……」

 

「ほんと良く出来たホラ話ね?」

彼女の言うとおり、それはまだずっと遠くにあって

でもそれは確かに進んだ先に見えた光で


シロナは迷い無く手にした銀貨を俺に差しだす

「…でも、それを信じてあげる」

「私は私自身を買い戻す」


それにニナもリーフィアも続いて

「何に使おうとお兄ちゃんの勝手だけど」

「せっかく私達が稼いだんですから大事に使ってくださいね?」


結局、銀貨は俺の手の中に戻ってきて

ただそれはしっかりとした意味を持って

「じゃあ、リーフィアの言うとおり布団を買って…」

これ以上、あんな生殺しに耐えられる気もせず

それは必要経費だと割りきるとして


彼女達に笑顔を向け

「まだ、店は何時間かやってるから」

「残りは成功祝いの打ち上げとして」

「この店で飲めや歌えやの大騒ぎといこう」


それにニナは両手を上げて

「やった、美味しいご飯!」

リーフィアも可笑しそうに笑いながら

「無駄遣いはダメって言ったのに」

「でもちょっと、お酒って飲んでみたいかもです…」


シロナはため息を付いて笑顔を見せて

「結局、自分の為になんて使わないくせに…」

「馬鹿馬鹿しい茶番だこと」


「何と言われようが、俺がそうしたいように使うだけで」

「今日は奢りだから、何でも好きなの頼もう」  


果たしてコレを奢りだと言うのかは微妙なところだが

自信ありげに俺はそう言って、三人と共に部屋を出た




旅行で日にちが空いてしまいましたが

また今日から毎日更新していきたいと思います

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ