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Live My Life

題名は岸田教団様楽曲より引用

この物語をイメージする曲の内の一つです




照らすスポットライトも

声を遠くまで届けるマイクもそんな全てを持たず

その身一つと、プライドだけを手にして

忌むべき象徴を身に纏う彼女達は

ステージと呼ぶには余りにも粗雑な壇上に立つ


そこに立ってシロナは

歓喜の声が、歓声が挙がるなんてそんな楽観こそ

抱いてはなかったが…


恐れていた罵声や、怒声すらもなく

まるでそんな物は見えていないかの様に振るまい

気にすら留められる様子は無いようで


今更、彼が私達に星屑(スターダスト)なんて名を与えたのが

皮肉に聞こえてしまって


ーーどんな始まりなら、どんな言葉なら目に映るのだろう?

誰かの目に、記憶に、瞬間に残るのだろう?


考えれば考える程、思考は沈んでいって

手を伸ばせば触れられるほどの距離にある全ては

どこまでも遠く、冷たくなっていくようで


声を上げねば、歌わねばならないのに

口を開いて音を紡ごうとするのに


それは、漏れだす息にしかならなくて

何と変わる前に、全て零れ落ちてしまって


世界どころか、自分すら意のままにならない

そんな事実に戦慄する


まるで鎖に縛り付けられて、口を塞がれているように

身動き一つできないまま、立ち尽くして


どんなに強がったところで

着飾ってみたところで、笑顔を作ったところで

それすら無意味なのだと


だって、唇を噛みしめるようにしなければ

手を固く握らなければ

踏み止まろうとしていなければ


そこに、崩れ落ちてしまいそうで

息をすることすら難しくなって


ニナもリーフィアもその始まりを紡げないまま

俯いてしまっていて


ーー縋るように、前を向いた瞬間

世界の片隅に私を見る瞳がそこにあった


それは、決して優しげな眼差しではなく

憐れむような視線ではなく


ただ静かに、その瞬間を待つようにしていて

私は大きく息を吸って、吐き出し


楽しげな声が、誰かの笑い声が

さっきまで孤独に思えた世界は

雑多な音に溢れていることに気が付いて


私に注がれる瞳を見返せば

彼の口は何かを呟いたように見えて

それは掻き消されて、聞こえないまま


ーーこの喧騒の中、私の歌は彼に届くだろうか?


だが、歌わなければ、声を上げねば

それは決して届かないと知っているから

俯いたままの二人に声を掛ける


「…ニナ、リーフィア、前を見て」

「路傍に転がる、そんな物を探しては無いでしょう?」


私達が探すのは、いつまでも遠くにあって

目を凝らさなければ見失ってしまって

でも、たしかにそこにある光だから


どう思われたって、今更で

なら、私達がやるのは一つしかない


「…ニナ、ブチかましなさい」


ニナは大きく息を吸って、声の限りに叫びを上げる

「みんなー元気かなー!!」

「今日は私達スターダストを観に来てくれてありがとー!!」


一斉に突き刺さる視線は忌々しげに私達を見て

「誰もお前たちなんて観に来てないなんて」

そう言わんばかりで


ーーだから、どうした?

どんな感情だっていい、私達に注がれる視線は

確かにそこに居る証明だからと


リーフィアはタブレットの再生ボタンを押してそれを置く

そして音楽は、それ以外にアヤトの手で設置された

ワイヤレススピーカーを通して


それでも、こんな小さな箱の中ですら届かぬような

喧騒の中に頼りない音量で打ち鳴らされて


耳を澄まし、その始まりを逃さないように

僅かに聞こえる福音を聞き漏らすまいと目を瞑り

胸に手を当てて


私を見ろ、この声を聞け

誰に届かなくても、彼はこの世界に居なくとも

それでも、私の此処でいつまでも消えなくて


いつまでも、いつまでも

この鼓動を止めようとしなくて


残響のように聴こえ続ける

優しげな声は


ーー「そして、あともうひとつだけ」

「これがシロナにあげられる最後の鎖だ」


掠れるようにして耳元で囁かれた

彼の今際の願いは

「もし君と歩むと」

「愛でなくとも、恋でなくとも」

「君を見て、共に生きるとそんな人が居たなら」

「与えるだけでなく何かを欲するというのなら」


「その隣で笑って、泣いて」

「そんなふうに生きて欲しい」


感情は、想いは抑えきれずに

そんな全てを吐き出し、言葉と歌に変えて

私は生きると決めたから!!



「…なんで!?」

流れだしたメロディは俺の思い描くものではなく

練習では一度も見た事が無い物で

確かにそれは自分のプレイリストに入っていて

だが、アイドルの曲ですらなく驚愕してしまう


「この土壇場で、違う曲を演るなんて……」

「どんなメンタルしてんだよ、あいつ等は」


ぶっつけ本番とまでは言わないが

スターライトほどそれを練習してはいないのだろう

歌うのはシロナだけで


スターライ卜が、アイドルらしい楽曲といえるなら

かき鳴らすようなギターのイントロから始まり

その歌詞は等身大を描いて


繕うことも忘れた様に

なりふり構わず叫ぶようにシロナは歌い上げて

その声、その姿は私を見ろと訴えかけて


理想を超えて、想像を超えて

未だそこにない先を見続けるように


歌が終わったその瞬間

一つの囁きすら許さない静寂が訪れて

挑戦的な言葉をシロナは群衆に投げかけて笑う


「…やっと私達を見る気になったかしら?」

「そんな夢を見る気になったかしら?」


ーー未だ続く夢の音が

スターライトのイントロが聞こえ始め


その瞬間、世界は色を持って、熱を持って

リーフィアがシロナの前に立ち、ニナもそれに続く

「…シロちゃんばっか、いいカッコはさせられないですよ?」

「仏頂面の盆踊りなんて晒したら幻滅されるしね」


それにシロナは息を整えながら、薄く笑い

「…なら、任せるわね?」


得意も不得意もあって、それでも

いま自分に出来る事を精一杯に


歪に切り取られ、欠けた部分を継ぎ合わせて

それを透過して光は屈折しプリズムに変わり


だから、輝くに足るのだと

それを証明するように

いまだ届かない物に向ける如く、シロナは手を伸ばして



ーー繋がりはしない、届きはしない

それでも息を吐ききって、すべてを音に変えて


せめて夢でもいいから


「笑って、君を見て」

「また、夢を描くから」

「生きてる理由を、僕に見せて」

もう一度だけでも、逢いたいと願う



でも、それは叶わないと知るから

せめて最後の一瞬まで、ちゃんと最後まで


私を見る二人がくれた名前のように

シロナだなんて、星屑だなんて

そんな名前に恥じない為に


縺れそうになる足を引きずって

言う事を聞かない身体を振り回して


鼓動の音が、熱くなる血が

必死にする呼吸が、私である事を辞めさせようとせず


綺麗じゃなくていい、音が外れたって構わない

どんな想いだって、声だって届かなければ意味が無いから


だからせめて、私を見る人くらいには

そんな夢を与えてみせろ


「息をして、涙して」

「ただ、君と歩むから…」

「夢見る理由を、ここに観ていたい…」


歌いきった瞬間、ふらつく身体を二人に支えられ

崩れ落ちるように脱力して


ーー私を見る、彼が

泣き出しそうな顔でこちらを見ているのに気が付いて

自然に笑みは溢れてしまって


伝わったのだろうか?

それは聞こえたのだろうか?


そんな事を聞いてみようと考えるが

言葉に出来ず、すべての感覚を放り出した















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