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継ぎ接ぎだらけの

とはいえ結局分かった事といえば

彼女達に対する賃金の未払いが発覚したとそんな程度で

「…お給料払わないとだよね」

彼女達が行っているレッスン…と呼べるのかすらも

怪しくはあるのだが、それは紛れもなくアイドルの業務で

それでも三人とも

「何もしてないのにそんなの貰う云われはないわ」

「そうですよ、私達ちゃんと衣食住貰ってます」

「そこらの奴隷よりよっぽど良い生活してるよ」

そんな風に言ってはくれるのだが

ルールは守らなければ、意味が無い

「…この関係は正しくないといけない」

「君達はアイドルになる為にここに居て」

「慈悲も甘えも同情も無くて」

「正当な評価と対価を得るために居るんだから」


ただ、無い袖は振れないとそれも正しく理解していて

「いらないなんて言うのは、違うけど…」

「もう少しだけ待ってくれる?」


それをくすりと笑うのはリーフィアで

「アヤトさんがそれを言うなら」

「あの時払った金貨こそ、お給料なんじゃないですか?」

「物にする為のお金じゃなくて」

「私達が生きる為に支払われたんですから」


そんな小綺麗な物じゃなくて

ただの自分勝手な理想とエゴの押し付けだったけれど


「大体奴隷にお金を渡すのだって」

「一緒に住みたくない、同じご飯を食べたくないって」

「そんな理由よ?」

シロナは呆れるように笑い


「だから、いーっぱい頑張って」

「出世払いでドーンって返すから期待してて?」

底抜けに明るい笑顔でニナはそれを言って


ホコリとカビの温床たる店内を改めて見て

俺が与えられるのは所詮こんな物でしかないが

「んじゃ、取り敢えず」

「…此処を片付けるとしますか」


寂れたデパートの屋上なんて

夢見る舞台なんて呼ぶには

どうやったって足りないそこから彼女達(ジュエリスタ)も始まって

その先に確かに描かれた夢を

ほんの少しだけ、変わった世界を見たから


「ニナは全部机と椅子出して」

「シロナは水汲んできて拭き掃除」

「リーフィアは窓全部開けて、掃き掃除」

「…俺は外の補修と塗り直しだな」


取り敢えずそれだけを割り振って

黙々と与えられた作業を始めようとしている

三人に声をかける


「朽ちかけたこの場所も」

「糞みたいな世界さえも全部夢で塗りつぶす」


いつか、小馬鹿にするように自分が言った言葉

こんな事やって楽しいかなんて

そんな疑問に今なら答えられる


なんになる訳ではなく

全て無駄になるかもしれない

それでも、この瞬間に生きていることを誇るために


ーーそんな方法しか知らないから

「ここを世界一夢に近い場所に変えてやれ!!」


突如として叫びを上げた俺を冷めた目で三人は見て

「…はぁ?」

「…お兄ちゃんって時々すごい壊れてるよね」

「まぁ、悪い人では無いんですけどね…」


呆れ返る様な顔を三人はしながら

黙々と片付け始めて

「アヤトもさっさと始めなさい」

「口だけの男になりたくないでしょう?」


「…はい」

思っていた反応とは程遠いリアクションに

しょぼくれながら外に出て

「まずは、屋根の修理か…」


所々店中には雨染みがあり

大体の当たりを付けて屋根に登り

腐って穴の開いた板に当木をして釘を打ち付ける


「…思い描いてた通りにはならないわな」


俺が語ったのは、笑い話にすらならない幻想で

叫んだのは所詮、借り物に過ぎない言葉で

臆すことなくそれを言った彼女を思い出して苦笑いする


ーー「やっほー」

「まだここに居てくれて良かったよ」

彼女の姿をコンビニの夜勤で見たのは、久々で

「あー、今日の廃棄捨てちゃいましたよ…」

口を継いでたのは、そんな言葉しか出てこなくて


気が向いた時に彼女達のブログや公式サイトを

覗いてみれば、順風満帆とは呼べないものの

それなりに活動の場を増やしているようで

アイドル雑誌やらのミニコーナーで特集されていたり

SNSなんかでも、稀に話題が上がるくらいには

認知されているらしく


もう、来ないのでは無いかと思いながらも

何となくそれを捨てきれないまま、ダラダラと続けていて

彼女を待っていたはずなのに、何を話せばいいか分からず

お互いに沈黙していれば


「いや、全然大丈夫」

「ってか、今日終わったらヒマかな?」


少しばかり戸惑うように告げられ

思わず困惑した顔をしてしまう


「…暇ですけど」

「フライデーされると困るんじゃないんですか?」


いつか冗談めかして彼女が言った言葉は

僅かばかりに現実味を帯びて、俺にのしかかり

まるで迷惑みたいな断り文句に聞こえるそれを口にして


「まぁ、そうちゃそうなんだけどさ」

「ご飯食べに行かない?」


意図も何も分からず

ただ、告白では無かろうとそれだけは認識できて

「迷惑でないなら、大丈夫ですけど…」


彼女は安堵したように息を吐き

「じゃ、終わったらここで待ってて」

それだけを言い残して、店を後にしてしまい

一人残された俺は悶々とした気持ちのまま朝を迎え

「んじゃ、上がりますねー」

出勤時間を終えて、店を出て


窓に映る自分を見れば

着古したスウェット姿の冴えない男がそこに居て


どうせ、仕事に行くだけだからと

そんな格好で来たのを心底悔やみながら

使い慣れないワックスで整えた髪を弄り回すが

どう足掻いても服がこれでは様にならず

「…一回帰るべきかな?」


シャワーも浴びてないしとそう思ったが

考えてみれば連絡先すら知らず

この場所から離れてしまえば会えない事は明白であり 


「…というか、俺は何を期待してんだろうな」

そう、自嘲気味に呟きを漏らす


告白ではないと思いながら

そんな浮ついたものでは無いと笑いながら


それでも少しでもよく見せようなんて自分に

乾いた笑いが漏れだして

どんなに取り繕ったって、ただの冴えないどころが

底辺フリーターの人間もどきだとそれを思い直せば


「おまたせー」

「ちょいと遅れたかな?」

踵の高いヒールを履いているのに

小走りでこちらに向かう彼女の姿を見えて硬直してしまう


その姿は明らかな余所行き用の服に

バッチリとした化粧で

まるで、デートに赴くような格好であり


「あーっと、待ってないんで平気ですけど」

「もしかしてオシャレな店とか行きます?」


こんな格好で申し訳ないと自覚してると

聞こえる様に遠回しに

細心の注意を払いながらそう聞いて


彼女はそれにニコッと笑い

「行きたいならそれでも良いけど」

「固っ苦しいのは勘弁かなー」

「テーブルマナーとか知らないし」

「後、ついでにお財布の中身も寂しいし」


嫌味っぽくもなく、卑下にするでもなく

ただ事実を告げるようにそう言われ

やっと肩の力が抜けて俺は笑い

「…俺もこの格好で浮かないとこが良いです」

なんて、本心で喋ってみれば


彼女もいたずらっぽく笑みを返し

「ならそう言えばいいのに」


そう言って、彼女は行き先を告げず歩き始め

慌ててそれを追いかける

「どこ行くんですか?」


「…んー夢の国かな?」

冗談とも、そうで無いとも言えない曖昧さで

当たり前に告げられた行き先の名前に

思い当たるのは一つしかなく


「舞浜まで拉致られるんですかね?」

軽さを全面に押し出してそれを聞いてみるが

彼女はそれに笑顔を浮かべるだけで


もしそうだったら、せめてATM経由にして欲しいと

そう願いながら彼女の後を追った




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