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自己紹介

「こんなん寝れるわけねぇよ…」

左を見れば、リーフィアのたわわな胸が

右を見ればニナの大きく空いた胸元があって


そんな二人に挟まれて、寝れる奴はホモに違いなく

ホモサピエンスだけどホモじゃない俺は生理現象と戦い

悶々としていれば、そっと布団から出るシロナが見えて

目が合ってしまった

「あら、起きてたの?」


「この状況で寝れる奴は男じゃねぇだろ…」

身体を起こしながら、ため息混じりにそれに返す


「……貴方ってホントよく分からないわ」

不思議そうな顔で俺を見るシロナ

「貴方は私達の裸を見て興奮するの?」


「いや、普通するに決まってない?」

そうじゃなかったら、もうとっくに寝てる訳で

寝てないって事はそういう事だ


返された言葉に困り果てたように

「その感覚からして、ズレてるって自覚はないのね…」


「例えばだけど」

「貴方は、そこに有る冷える箱に興奮する?」

シロナが指し示したのは冷蔵庫で


「いや、普通しないでしょ」

いるかも知れないけど、それは多分病気だと思う


「じゃあ家畜なら?」


「…しないんじゃないかな」

服着せられてる犬とか居るけど

別に、着てなかろうとなんとも思わない


最後にシロナは躊躇いがちに

「……じゃあ私なら?」


並べられて、やっとその問を理解して

奴隷は家畜で、物なのだから

そんな感情を抱く事自体がおかしいのだと

彼女はそう言いたいらしい


「…なるほどね」

「シロナが言いたいことは、まぁ分かったけどさ」

逆に聞いてみようと思う

「シロナは俺の裸に興奮する?」


現実(リアル)だったらセクハラ以外の何物でもない

事案だったが、もしそうだったら既に人身売買で

懲役刑を免れないので、心配はいらないといえて


そんな返しを想像していなかったであろうシロナは

ビックリするくらい赤面している


「はぁ!?」

「何を言い出すかと思えばわけわかんない事を……」


取り敢えずもっかい聞いてみよう

「で、どうなの?」


「…知らない」

「というか考えた事ない!」

シロナは俺から目を逸らしてしまって

どうやら少し怒っているらしい


「…何も変わんないよ」

「奴隷って言わないで俺とシロナは何が違う?」


シロナはそれを答える

「貴方とは耳も違うし、尻尾が無いわ」


「それならリーフィアとニナも違うよね」

リーフィアにだって尻尾は無いし、ニナだって違う


「…お金で買われた」


「俺だってそうだよ」

限りある時間を、自分という人間を切り売りして

やりたくもない事に笑顔を作って、何ら変わりなくて


それでもシロナは必死に考え続けているようで


「…俺のいた世界は、同じ人間が奴隷だった」

「何一つ変わらないのにそう呼んで」

「換えの効く代替品だと嘲って」

もうとっくに無くなっているけれど

たしかに昔はそうだった筈で


シロナは驚いたように

「どうしてそうなっちゃうの?」

「そんなのおかしいじゃない」



「…何もおかしくない」

「どうして亜人が奴隷と呼ばれるか教えてあげる」

シロナの目を真っ直ぐ見て

彼女もそれを逸らそうとはせずに

簡単な答えをシロナに告げる


「…自分より秀でているから、そう呼ぶしかないんだ」

確信なんて何一つ無いけど

それがこの世界で亜人がそう呼ばれる理由だと思った


「…意味分かんない」

「優れているから奴隷?」


「そう呼ばなきゃ、生きてけないんだよ」

「人間は無力だから」


この世界には機械が無い

どんな全ても、手作業で行っていて

その効率は、多分亜人のほうが速いのだろう

少なくとも、俺の知る

力仕事は獣人や小鬼族たちに劣っていて

俺はその時、ショベルカーが有ればと思った


機械に感情は無い

ただ作られただけの無機質な物でしかない

それは俺の知る当たり前で、疑う事のない常識で


ーーだけれど、もし機械に感情があったのなら

考えうる力があるのだというのなら、どうだろう?


人間は、それよりも秀でているだろうか?


どんな絵描きよりもコピー機の方が

どんな歌手よりも音楽プレイヤーの方が

どんな学者よりパソコンの方が


当たり前に優れているとは思わないだろうか?


だから、そんな生活を豊かにするはずの

優れた()()()()()

そんなふうに呼ばなければ、自分達になんの価値すら無くなってしまって、それを使うから自分達が優れているだなんて


そんな愚かな勘違いをして

下らないプライドの為に奴隷と呼ぶのだと

物だなんて呼んでいるのだろうと思ってしまって


「だから、君達は俺と何も変わらない」

「無力で愚かで救いようの無い、ただの人間(ゴミ屑)


そこまで言って俺は笑う

「奴隷と人間を」

「物と人間を分けるのなんて簡単なんだよ」


シロナはそれにポツリと呟き

「……どうしたら、そうなれる?」


ーー願う様に告げたその言葉こそ、答えだ


「変わりたいと願う」

「より良くしたいと思う」

「何もない所から生み出し」

「ここに無いどこかを、理想を夢見て」

「与えられた価値すら塗り替えればいい」


物は朽ちていくばかりで

良くなっていくなんて無い


夢を見て、より良く変わっていく、変えていける

それだけが人間たる証明で価値なのだから


それを諦めたら、ただのゴミで奴隷で物でしかなくて

「俺はシロナに人間でいて欲しい」

「考えるのを、生きるのを諦めないで欲しい」


シロナは目を見開いて、何かを堪えるように


「だから、奴隷だなんて言わないでくれよ」

「俺とは違うだなんて、仲間外れにしないでくれよ…」


愚かで救いようの無い、弱い人間()

ただ一人、そんな世界で生きてはいけないから


「……やっとわかった」

その目から涙が溢れて

嗚咽が堪えきれずにシロナはそれでも笑う


「人間は弱くて、寂しがり屋で」

「……寄り添わなきゃ生きていけなくて」

「それを伝えられない不器用で」


ボロボロと涙がこぼれ落ちる


「…私と」

「こんな私と何も変わらない」

「……ありがとう、ご主人様」


ーー告げられた感謝はどこか懐かしむような声音で


涙で濡れた目でシロナは俺を見て

「…私はシロナ」

「貴方のお名前は?」

改めて言ったそれはいつか聞いた物ではないのだろう

なら、誇らかに笑って返そう


「俺はアヤト」

「スキル無し、特技無し」

「語れるようなもんは何一つ持ち合わせてない」

「……ただの人間だよ」


それにシロナはニコッと笑って

頬に伝う涙は光を受けて輝く


「…なら私と一緒ね」

「特技は歌が上手いわ」

「スキルは…可愛い事?」


何一つ間違って無い

誇れるものなんて、そんな程度で良くて

「これからよろしくねアヤト」


ーー誰にも彼女たちのことを、奴隷とは呼ばせない

下らない、役に立たない物だなんて言わせない


だって彼女たちは夢を見る

くだらない幻想を見て、必死に戦う


それなら、諦めきった奴こそが

そんなふうに呼ばなければプライドすら保てない奴こそが

ゴミ屑で奴隷なのだと証明してやろう




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