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見えてしまえば

今日の仕事はいつもの高級レストランのウエイターではなく

ピラミットでも作ってるんじゃないかと思える建設現場

向こうの仕事は月給なので

日銭を稼ぐために日雇いの仕事を入れたのだが


俺の手にあるのはツルハシとスコップで

渡されて、後はよろしくみたいな感じだった


よく漫画とかで必死に振るってるシーンあるけど

一体何をしてるのか問いたい

掘ればいいのか?それとも何か砕けばいいのか?


土木作業に多少なり従事していたとはいえ

それを使っている現場に遭遇した事はなく


皆目見当がつかないまま、周りを見わたせば

そこにいる獣人たちはみな

自慢の爪で土を掘り返していて

ニナと同じゴブリン族であろう少女達が

せっせと土を土嚢に詰めて運んでいる


多分爪の代わりにこれを支給されたのだろうと納得し

それを試しに地面に振り下ろしてみる


ゴッと鈍い音が響き、その先端を見れば

「どんだけ固いんだよ、この地面」

金属製の先端は数センチしか潜り込んでおらず、

握る手は痺れ、それでも懸命に何度も打ち下ろすがーー


作業のスピードは歴然の差だった

固められた表層を砕きスコップを入れる頃には

周りの獣人たちは次の場所を掘り進めていて

このままでは周回遅れだ

「ショベルカーがあればいい勝負できそうだけど…」

無いものを嘆いても仕方がないと

必死こいてそれを続けて


この現場の親方である、おっちゃんに声を掛けられる

「おう、若けぇの」

「作業は捗ってるかい?」


「…見ての通り、周回遅れです」

苦笑いでそれに応えるしかない俺


「まぁ敵わねぇよ」

「アイツ等は生まれ持ったもんがちげぇからな」

親方はそれにガハハと笑って

「飯の時間だ、一回上がれ」


それでも俺はツルハシを地面に叩きつけて

「取り敢えず、周回遅れの分片付けたら飯にしますよ」

このままじゃ終わりそうも無いと作業を続ける俺に

親方は少し真剣な顔をして


「…奴隷とおんなじ賃金で良いってのと」

「その根性だけは認めてやっけど」

「ちゃんと食わねぇとぶっ倒れんぞ?」


それに俺は不敵な笑みを返して

「おんなじ給料貰ってんのに」

「給料泥棒みたいな真似はしたくないんで」


足りないのは理解してる

そうなれないのは、もうずっと前から分かってる


だけど、結果が全てというのなら

そこに至る過程を問わないと言うのであれば

人より多く時間を割いて、足りない物を埋めることは出来て


「同じ時間を掛けて、勝てないなら」

「こんなズルをするしか無いんですよ」


それに親方は笑みを向ける

「そういうのはズルって言わねぇだろう」

「努力って言うんじゃねえのかい?」


そう言われて悪い気はしないが

ちょっとだけ違うのだ


「じゃあ、努力してる真っ最中なんで」

「見ないでもらって良いですかね?」


見られてしまえば、ただの点数稼ぎで

頑張ってますよなんてアピールに過ぎないから

だからそれは努力ではない


多分、取るに足らなくて、どうしょうもなく下らない物で


「何でもいいけど」

「さっさとこねぇと飯無くなるからな?」

そう言って親方は手を上げて、その場を立ち去って


やっとこさ、慣れてきたツルハシを振るい

人より劣ってようが、遅かろうが今更どうでも良いと

開き直って、ただ打ち込み続けて


周回遅れを取り戻した時には、休憩は終わったらしく

続々と、獣人たちの工員が戻ってきて

ショベルカーも真っ青なスピードで作業が進み


「…なんかコツとか無いんですか?」

息も絶え絶えに、隣を掘るライオンガテン系男子である

鋭い爪を持つ彼に声を掛けてみる


「軟いとこから砕くんだよ」

「んで、硬いところは横からすくい取るようにすりゃいい」


なるほど、闇雲にやればいいってものでもないらしく

確かに土の硬さにはムラがある

「あざっーす!」

「これなら周回遅れは免れそうです」

笑顔でそれを告げて、黙々と作業を続け数時間

今日の分の作業は終わって、皆が親方の前に集まり


初めてそれを見た時は驚いたがこの世界の奴隷には

僅かばかり給料と呼べるものが存在している


飲食や賭け事なんかに使ってしまえば無くなってしまう

些細な金額とはいえ、日々のモチベーションに繋がっていて


親方はそれを必要経費と呼び

現代で言えば、車にガソリンを入れるような感覚だろうか?


一人ずつ、手渡しで渡される小袋を受け取り

一緒に作業していた彼等は今日何処に飲みに行こうかと

浮かれた話をしていて


先ほどコツを教えてくれたライオンの彼が俺に話し掛けてくる

「お前も飲みに行かねぇのか?」

「酒は生きる為の活力だぜ」


ありがたいお誘いではあるのだが

生憎、そうとは行かない事情があり

「また今度ご一緒しますよ」

社会人あるあるのテクニックでそれを回避しようとするが


彼とは違う牛のような角を持つ獣人がボソリと呟く

「そいつに聞くだけ無駄だろ」

「いつ誘っても断るんだからな」


現代で言えば、飲み会ハラスメントなんて言われそうな

そんな呟きだが仕方がないと、諦めて苦笑いし


足早にその場を立ち去ろうとする俺の後ろから

嘲笑じみた言葉が聞こえる


「何が楽しくて、奴隷と一緒の仕事して」

「そんな仕事すらまともに出来ないくせに」

「酒も飲まず、煙草も吸わず」

「馬鹿なんじゃねえのか?」


ーーあぁ、やっぱそう思われてるんだよな

此処でも俺は人以下だと蔑まれて、笑われていると

そんな事実を噛みしめて息を吐く


だから、これは努力なんかじゃないのだ

そんな綺麗で、嘘くさい物じゃなくて


ただ、それを諦めきれない意地でしかないのだから































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