第二話 ナンバーズ
織斗が姫未と出会い、戦いが始まって一週間が過ぎた。
あの日以来、敵一族は毎朝のように織斗を襲ってくる。
化け物なるまで堕ちた者や、話し合いができない者はとにかく封印する。
時に理性を保ったまま攻撃してくるものもいるが、拘束する間もなく逃げられる。
敵一族とやらとの実力の差は未だ明らかで、未だ彼らに関する情報は掴めていなかった。
*
「大きく分類するとね、当主、ナンバーズ、その他の術者、術が使えない血縁者、その四つに分かれるの」
住宅街の朝、民家の塀に腰掛けながら姫未が言った。
「当主がトップでその次に強いのがナンバーズ。当主と同年代くらいの子たちが選ばれるかな」
「選ばれるって、誰に?」
織斗はトランプを数枚、空に向かって放り投げた。
「解」の声とともに、トランプから炎や水、草木が飛び出す。
「うーん、神さまと……」
「……と?」
「ナンバーズはその世代世代で、ランダムに選ばれるの」
「おいまて、なんで今誤魔化した?」
「だいたい四人から八人かなー?」
「……姫未ってさ、人の話聞かない子だよな? 千二百歳のババァだけど」
「ちょっと、失礼じゃない? 私がババァなら、あんたは超ウルトラ爺さんだからね?」
「なんでだよ」
「とにかく、一般の術者と違うのはナンバーズは当主の血がなくても術を使うことができる」
「当主の血?」
織斗の投げたトランプから炎が飛び出し、空を飛ぶ鳥にぶつかった。
クマより大きな体をした空飛ぶ生き物が、ぐしゃりと地面に落ちる。
「ちょこちょこうざってーな、拘束して攻撃するか。解」
クラブの6を掲げると、そこから六本の蔓が飛び出し鳥のような生き物の身体を縛った。
『グッ』と、苦しそうな声が漏れる。
「一般の術者が術を使うには、当主の血を術印に染み込ませる必要があるの」
「うぇー、もし神木の一族だってやつが現れて、そいつが術使いたいってなったら俺の血をやらなきゃなんねーの?」
「そうなるね。その子もたぶん、相手一族の当主の血をもらってるはずよ」
姫未は地面に横たわっている羽の生えた生き物を見る。
カバに羽がついたような、鳥とは言い難い生き物。
「適量に留めればただの術使いで終わるんだけど……血を与えられ過ぎたか、それとも自力で力を解放しちゃったか」
「そうまでしてまで神木を恨んでんのかよ」
「それもあるけど、当主への忠誠心もあるかもね」
「忠誠心?」
織斗はケースの中からジョーカーを取り出し、鳥人間に向けて「封印」と言葉を発する。
白い光が溢れ、やがて地面に横たわる鳥人間を連れてカードの中に消えた。
「敵一族は絆が強いし、神木と違って子孫の管理も厳しい。現代でも結束して血を守ってるみたいだしねー」
「……あのさ」
ジョーカーをケースに収め、姫未の座っている方に向き直る。
「姫未ってやっぱ、敵の正体知ってるよな?」
「え?」
「一週間、俺でも簡単に倒せるようなやつばっかり相手してきた。最初は敵一族ってやつどんだけ弱いんだって思ってたけど、違うよな?」
「まあ、向こうの当主はあんたの千倍くらい強いと思う」
「ほら、知ってる! 最初に俺と話した時、ボケて忘れたから相手一族のことはわからないって言ってたじゃねーか!」
「そこまでは言ってない!」
「じゃあ教えろよ、敵の当主がどんなやつか」
「……言えない」
即答し、姫未が口の前に指をクロスさせてバッテンを作った。
織斗はため息をついて肩を落とす。
「やっぱそれかよ。じゃあ爺ちゃんも知ってて黙ってるって事だな」
「約束したからね」
「約束?」
「それより、織斗もそろそろ仲間集めたら?」
「おい、話変えんな」
「隣に住んでる結奈ちゃんは? 父方の叔母ってことは、織斗の次に血が濃いってことでしょ? 高校一年生なら歳も変わらないし、ナンバーズの可能性が高いんじゃない?」
「結奈は……いや、この一週間とくに変わった様子ないし」
「自分がナンバーズだって気づかない子もいるわよ。特にあんたたちは何も知らずに育ってきたでしょ?」
「いやでも……それより向こうの当主が」
「そういえば織斗、学校は?」
「学校……やべっ、電車!」
「走れば間に合う! 行ってらっしゃい!」
「帰ったら話聞くからな!」
バタバタと走り去る織斗の背中を見送り、姫未はため息をつく。
「学校にいる間は襲われないって、なんで気づかないんだろ。あれだけ近くにいるのに……気づかないかなぁ?」




