↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
87/132

第87話 再会

*



『あのね、お兄ちゃん……わたし……』


 学校に向かう前、神木宅、織斗の部屋で結奈が言った。

 全員による作戦会議を終えて、それぞれ準備に取り掛かろうと解散したあと。

 結奈だけが織斗の部屋を出ず、ベッドに腰掛ける織斗の袖をきゅっと掴んだ。


「私……ヤスくんと、話した事あるの……」


 しどろもどろに話す結奈。

 顔色がひどく悪く、織斗は不審に思いながら結奈を見上げる。


「それは、前に聞いたけど」

「文通……とかしててね、手紙のやりとり」

「あぁ、うん。仲良かったんだよな?」

「日記……を見てね、ヤスくんの……それで思い出したの。わたし……たぶん、最低なことした」


 カタカタと、結奈の唇が震えた。

 只事じゃないと織斗が立ちあがろうとしたとき、結奈がぽそりと呟いた。


「ゆびわ……」

「指輪?」

「ヤスくんが右手につけてた……術印描いてたあの指輪、たぶん私が、送ったものだと思う」

「…………は?」

「術の、媒体になる道具って、ナンバーズの子たちのそれは、その人にとって思い入れのあるものって、姫未ちゃん言ってて……どうしようお兄ちゃん……私、最低なことしてた」


 俯く結奈の瞳に涙がたまったが、唇を噛み、それが溢れないように堪えた。


「だから、封印する以外に方法がないなら私が……私の大事な人は私が、私がヤスくんを封印する」


 下唇からは血が滲み出ていた。

 血の味を舌に感じながら、結奈が言った。



*



 なに言ってるかわかんねー、聞こえねーよ。


 と、泰鷹の声がした。

 それは目の前にいた織斗だけでなく、離れていた結奈の耳にも届いた。

 キラキラと舞う光の残像、泰鷹を吸い込んだ封印の光は消えた。

 当然、泰鷹の姿も魂も今現在、この世界にはない。


「……私の声、聞こえなかったのかな」


 床に座り込んだ結奈が、小さく言った。

 ジョーカーを手に持ったまま、織斗は結奈を直視できず、顔を逸らした。


「ごめん、結奈」

「……どうしてお兄ちゃんが謝るの?」

「俺が、封印したから」

「状況が状況だった、仕方ないんでしょ? ……ごめんなさいは私だから……」

「違う! 結奈は……」


 振り返った織斗が言葉を止めた。

 不審に思った結奈が顔を上げると、廊下の向こうに二年生のエンブレムを付けた女子高生がいた。


「えーっと……これ、どういう状況?」


 織斗の術は、封印術が終わると同時に解けていた。織斗自身、結奈に気を取られていて気がついていなかったが。

 絵莉は織斗と結奈を交互に見て、首を傾げる。


「もう大丈夫なの? ……ていうか、さっきの人は?」

「……なにこの人」


 ポケットの中から飴袋を取り出す結奈だが、織斗が慌ててそれを制した。


「待て、結奈。こいつは敵じゃない! えーと、えーっと」


 混乱した織斗が、絵莉の腕を掴んだ。

 織斗と結奈の間に立たせ、お辞儀をするように絵莉の頭を押さえる。


「こちら一般人の小原絵莉さん。俺のクラスメイトで咲の友達」

「なに言ってんの、神木。ていうか手やめて、離して」

「で、こっちが市原結奈、神木一族のナンバーズです」

「神木一族? ナンバーズ?」

「いや、違う。違うんだ、小原。勘違いするな」

「は? なに? なに言ってんの、ホント。ていうかこの子、神木の従妹よね? 知ってるわよ」

「知ってんの? なんで?」

「だって中学一緒だし、緋末くんと仲良いって中学の時に目つけられてたじゃん。まぁ、実際に好きオーラがすごかったけど」


 淡々と語っていた絵莉だが、結奈が気まずそうに顔を下げたことで言葉を止めた。

 取り繕うように、結奈に歩み寄る。


「ご、ごめんね。嫌なこと思い出させちゃった。私は全然、緋末くんのこと何とも思ってないから」

「彼氏いるもんな、お前。あれ、でも出会ったのって高校入ってからだよな?」

「うるさい、神木。空気読んで」

「私、そんなにわかりやすかったですか?」

「ん?」

「広く……緋末先輩のことが好きって、目に見えてわかりました?」

「えー、うーん……まぁ」


 困ったような顔を背ける絵莉だが、やがて観念したようにため息を吐いた。


「バレバレではあったし……あとあなた、周りの子に言ってたわよね?」

「え?」

「好きな人は緋末広くんって、色んな人に言ってたって聞いたことあるけど……だから目をつけられた、普通に話してるだけじゃ何も言われなかったって」

「私、中学の時は……小学校……小学校の知り合った頃……でも……」


 途端、結奈の顔から血の気が引く。

 ごめんね、と結奈を慰める絵莉と、どう声をかけていいかわからず黙り込む織斗。

 と、その時、階段の方で聞こえた微かな足音に織斗はトランプケースに手をかけて意識をそちらに向けた。

 しかし途中で、その人物が誰かを察知して、安堵のため息を漏らす。


「無事でよかった、咲」

「織斗くんこそ……絵莉ちゃん?」

「咲?」


 階段を駆け降りて織斗たちの元へ来た咲が、絵莉の存在に気がついて歩み寄る。

 その時になって、織斗は階段が元通りになっていることに気がついた。

 いや、結奈が来た時点で術は解けていた……それ以前に泰鷹が現れた小原絵莉と遭遇した段階で、何かが変わっていたのかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。