第一話 バトル!初戦!
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逃げ続けて十分ほど経った頃、織斗は同じ場所をグルグルと回っている事に気がついて足を止めた。
咄嗟に、すぐそこにあった公園に逃げ込む。
「……ここ、家の目の前じゃねーか」
そこは織斗の自宅から数十メートル程しか離れていない、小さな公園だった。
汗をぬぐいながら公園の入り口を見つめる。一度通り過ぎた女の化け物が、織斗に気付いて引き返し公園に入ってきた。
いつの間に手に入れたのだろう、不気味に細く伸びる右手には斧が握られていた。
「なんだよ、自分だけ武器持って……武器? まさか」
ズボンのポケットに手を入れると、固い感触が指に触れた。
震える手でケースを開け、トランプを一枚取り出す。
「封印の反対……解印!」
言葉にすると同時、しゅんと白い光が織斗の前に飛び出す。眼前を駆け抜ける緋色の衣。
手のひらサイズの和装少女が、織斗の肩に乗った。
「信じられない! なんなのあんた、何様なの? あぁ、そっか! この世界の神様でしたね!」
「なに怒ってんだよ? つーか今それどころじゃない! ヤバい状況だから!」
織斗の視線につられ、和装少女が正面を向く。
ちょうど、女性の斧が織斗達に振り下ろされるところだった。
「わっ、馬鹿馬鹿ばかっ! 避けて!」
「うるっせーよ、耳元で叫ぶな! つーかお前が邪魔なの!」
「あんたがモタモタしてるからでしょ! ていうか術は?」
「なんだっけ……ハートの水、数字は」
「水はスペードよ! スペードの8!」
「スペード8、スペード8……かいいん!」
ケースから取り出したトランプを、女性に向かって投げつける。その瞬間、滝のような勢いでトランプから水が噴き出た。
「水……水!」
「見ればわかるわよ! ていうかあんた当主でしょ、これくらい……」
「だからトウシュってなに!?」
答えを聞く間もなく、織斗は視線を女性へと戻した。
ガポガポガポと、水の中で息を吐く音。トランプから吹き出した水が女性の頭部を包み、彼女の呼吸を奪っていたのだ。
首を掻きむしる喪服の女性が、織斗を睨む。しかし目線はすぐに外れ、女性は苦しそうにもがいて地面に膝をつく。
「なにこれ、なにこれ! やばくないか?」
「大丈夫、この程度の攻撃ならすぐに消えるから」
「消えるって、でも!」
「ごちゃごちゃ言わないで、黙って見てなさい。神木の当主でしょ?」
「だから、そのトウシュってのが意味わかんねーの!」
「私も、あんたの言ってることの意味がわからない」
「こっちのセリフだよ! つーか堂々巡りだな、俺ら!」
「わかるそれ、現代だとループって言うのよね?」
「知らねーよ! それより」
「それより見て、ほら」
和装少女が指さした先には、頭部を水に包まれている女性の姿。
しかし先ほどより水量が少なくなっている。
「水の攻撃が消えてる。さっきの炎と一緒か」
「カードの術ね、数字が小さければ小さいほど攻撃力が低くなる」
「じゃあ、数字が大きければ攻撃力が高くなるのか?」
「正解。でも大きい数字を扱うのは今のあんたにはまだ無理よ」
「えっと、じゃあ次は、十三のカードを……」
「話聞いてた!? 大きい数字はまだ扱えないから、まずは小さいのから」
小さいのから」
「小さいの……」
「じゃあ次は土を使ってみよー! ダイヤ出して、ダイヤの5!」
「……ノリノリになってんじゃねーか」
織斗がケースに手をかけると同時、水の拘束から逃れた女性が立ち上がった。
斧を放り投げ、捨て身の攻撃で織斗に襲いかかる。
「じゃあ、頑張って!」
瞬時に織斗の肩から逃げ出す和装少女。
逃げるのかよ! とは思ったが、それどころではない。織斗はカードを掲げ、先ほどと同じ言葉を口にした。
「解印!」
飛び出してきたのは岩石の粒。弾けるように小石が顔にぶつかり、女は後ろにのけぞる。
だがすぐに、女性は立ち上がり織斗目掛けて飛ぶように走ってくる。織斗は慌ててトランプケースからカードを数枚取り出し、手当たり次第投げつけた。
炎、水、土、木の蔓。全てが入り混じって女性に飛び掛かるが、ごちゃごちゃすぎて届きとしなかった。
「一気に出しちゃダメ! カードを使えば使うほど術力消耗しちゃうから!」
「早く言えよ! う……なんだか動悸が」
「そっちじゃない、術力! ゲームでいうMPよ! ケースの中の残り枚数が術力の残量!」
和装少女に言われ、織斗はトランプケースの中身を見た。
先ほどより中身が減っている。
攻撃に使ったカードはその場で消え、体力が持続していれば自動でケースの中に補充されるという。
「次、クラブ……解印」
織斗の言葉に連動して、クラブのカードから木の蔓が出てきた。三のナンバーを使って、一メートルほどの長さの蔓。
カードの性能を確かめるように攻撃を続ける織斗だが、何度ぶつけても女が倒れることはなかった。
地面に膝をつくが、すぐにまた立ち上がって襲いかかってくる。




